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Ⅰ.出会い編
1.理想通りの転生
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転生、それは夢見ていたもの。
悪役令嬢、それは恋い焦がれていたもの。
──ああ、なんということだろう。
私は今、理想に描いた通りの悪役令嬢に転生している!
ソレに気付いたのはまだ8歳の頃だった。
何故か私は昔から教えられたことはなんでもできた。勉強に裁縫、ピアノ、ダンスなど。一度見たり聞いたりすれば大抵のことは人並み以上にこなす。そんな私を周囲は“神童”と持て囃した。
最初は褒められて嬉しかったけれど、時が経つにつれ褒め言葉は聞き飽きた退屈なセリフへと化していった。
心の中で叫び声がする。
『“私”がしたいのはこんなことじゃない──』
私の中にいるもう一人の誰かが、つまらなそうに生きる私を嘆いているようだった。
そんな、ある日のこと。
基本身の回りのことはメイド達がやってくれる。その日もいつも通り朝起きてされるがままに着替えさせられていた。
その際メイド達に『お嬢様は本当お美しい』などとお決まりの褒め台詞を言われてもピクリとも反応しない。近頃は外見についても褒められ慣れてしまって、自分の姿に見向きもしなくなっていた。
けれど、その日はなんの気まぐれか、メイドに『この髪飾り見てください。お嬢様の白銀の髪によくお似合いでしょう?』と言われ素直に姿見へと視線を移していた。
そして、思ったのだ。
え、なにこの美少女。めちゃくちゃ可愛くね? と──。
聞いたこともないような言葉遣い。しかし確かに私の脳内にはっきりとその言葉が浮かんだ。
兎に角もう一度、綺麗に磨かれた鏡へと目をやる。そこに映っているのは目が覚めるような白銀の髪にラベンダー色の瞳。顔はお人形のように小さくて、スラリと伸びた手足は陶器のよう。
それは、どこからどう見ても“可愛すぎる女の子”であった。
(え、待ってこれ私? ていうかちゃんと生きてんの? びっくりするくらい肌真っ白なんですけど。あ、瞬きしたわちゃんと生きてる)
鏡の中の自分へと目が釘付けになった。これは確かに周囲が騒ぐのも頷けるわ……だって絶世の美少女だもの……。
意味もなくその場で何度も首を振ってしまい、メイド達に不思議そうな顔で見られた。
あ、そういえば髪飾りを見るよう言われていたんだった。
思い出してすぐにもう一度鏡へ。
あ……だめだ。やっぱり自分可愛い。髪飾りなんか目に入んないわ。ちょっと今鏡の中のかわいこちゃんに見惚れるのに忙しいんで。
──そうしてその日は自分の外見に酔いしれたまま一日が終わった。
常に貪欲に教えられることを学んでいた私がお稽古に集中しないのは初めてで、周囲はものすごく驚いていた。
まあそんなこと私の美しさに比べたらどうでもいいんだけど。何故今までこの外見を持ってして無頓着に生きてこれたのか不思議なくらいだ。
もし“私”がこの外見だったらもっと有効活用しているのに。
……ん? なんだ今の。
まるで自分を客観視しているような物言い。
と、その時初めて“私”に対する違和感に気付いた。
小さい頃から何をやってもまるでスクリーン越しに見ているような感覚だった。自分とは違う誰かを見ているような……。
それもそのはずだ。今はっきりと思い出した。白銀の髪にラベンダーの瞳なんて、本来の自分の姿ではない。私は日本に生まれた黒髪黒眼のごくごく普通の女子だった。
そう! つまりは転生しているようだ。
それもこの顔どこかで見たような──その疑問はすぐに解決した。
間違いない。前世でプレイしていた乙女ゲームの1つだ!
前世では数多くの乙女ゲームをプレイしたが、コレだけはより濃く記憶に残っている。
何故なら、“悪役令嬢”のキャラが百発百中で断罪されるから。
私は乙女ゲームの中でもヒロインよりライバルキャラの方が好きだった。見た目は整っていてなんでもできる最強キャラ。なのに報われない。そんな可哀想なキャラに大いに好感を抱いたのだ。
だからバッドエンドなどで攻略対象が悪役令嬢と結ばれるなんてエンドがあれば私はめちゃくちゃ興奮した。
そしてほとんどの乙女ゲームがそういうエンドがあったのだが、この乙女ゲームの悪役令嬢であるルリアーノ・アルランデだけは絶対に報われないのだ。
それはもう何かの陰謀なのでは、ってくらいの確率で断罪される。唯一上手くいきそうだった婚約者との恋は実る直前に何者かの手によって殺された。
数ある乙女ゲームのライバルキャラの中では全然慎ましやかな方なのに、ルリアーノに待ち受けているのは断罪or死。
いくらなんでも可哀想すぎる、と記憶に刻まれていたのだ。
そして私は今、どうやらその可哀想なルリアーノに転生しているらしい。つまりは、ヒロインがどの攻略対象とくっつこうがくっつかまいが、断罪される運命。
──と、そんな重い運命を背負って何故こんなに冷静でいられるのか。
それはそんなことどうでもいいからだ!!
だってあのルリアーノ様だよ!? なんでもそつなく完璧にこなす文句なしの公爵令嬢!! 数多のキャラの中でも一番好きだったんだけど!
何より外見がめちゃくちゃ好みだ。昔から銀髪って憧れてたんだよね……。
いつかは断罪される運命? そんなのどうだっていいわ。どうせ断罪されるなら、この外見と能力思う存分活用してやろうじゃないの!
人生に悔いあるべからず!
さーて新しい人生、何を楽しみに生きようかしら?
悪役令嬢、それは恋い焦がれていたもの。
──ああ、なんということだろう。
私は今、理想に描いた通りの悪役令嬢に転生している!
ソレに気付いたのはまだ8歳の頃だった。
何故か私は昔から教えられたことはなんでもできた。勉強に裁縫、ピアノ、ダンスなど。一度見たり聞いたりすれば大抵のことは人並み以上にこなす。そんな私を周囲は“神童”と持て囃した。
最初は褒められて嬉しかったけれど、時が経つにつれ褒め言葉は聞き飽きた退屈なセリフへと化していった。
心の中で叫び声がする。
『“私”がしたいのはこんなことじゃない──』
私の中にいるもう一人の誰かが、つまらなそうに生きる私を嘆いているようだった。
そんな、ある日のこと。
基本身の回りのことはメイド達がやってくれる。その日もいつも通り朝起きてされるがままに着替えさせられていた。
その際メイド達に『お嬢様は本当お美しい』などとお決まりの褒め台詞を言われてもピクリとも反応しない。近頃は外見についても褒められ慣れてしまって、自分の姿に見向きもしなくなっていた。
けれど、その日はなんの気まぐれか、メイドに『この髪飾り見てください。お嬢様の白銀の髪によくお似合いでしょう?』と言われ素直に姿見へと視線を移していた。
そして、思ったのだ。
え、なにこの美少女。めちゃくちゃ可愛くね? と──。
聞いたこともないような言葉遣い。しかし確かに私の脳内にはっきりとその言葉が浮かんだ。
兎に角もう一度、綺麗に磨かれた鏡へと目をやる。そこに映っているのは目が覚めるような白銀の髪にラベンダー色の瞳。顔はお人形のように小さくて、スラリと伸びた手足は陶器のよう。
それは、どこからどう見ても“可愛すぎる女の子”であった。
(え、待ってこれ私? ていうかちゃんと生きてんの? びっくりするくらい肌真っ白なんですけど。あ、瞬きしたわちゃんと生きてる)
鏡の中の自分へと目が釘付けになった。これは確かに周囲が騒ぐのも頷けるわ……だって絶世の美少女だもの……。
意味もなくその場で何度も首を振ってしまい、メイド達に不思議そうな顔で見られた。
あ、そういえば髪飾りを見るよう言われていたんだった。
思い出してすぐにもう一度鏡へ。
あ……だめだ。やっぱり自分可愛い。髪飾りなんか目に入んないわ。ちょっと今鏡の中のかわいこちゃんに見惚れるのに忙しいんで。
──そうしてその日は自分の外見に酔いしれたまま一日が終わった。
常に貪欲に教えられることを学んでいた私がお稽古に集中しないのは初めてで、周囲はものすごく驚いていた。
まあそんなこと私の美しさに比べたらどうでもいいんだけど。何故今までこの外見を持ってして無頓着に生きてこれたのか不思議なくらいだ。
もし“私”がこの外見だったらもっと有効活用しているのに。
……ん? なんだ今の。
まるで自分を客観視しているような物言い。
と、その時初めて“私”に対する違和感に気付いた。
小さい頃から何をやってもまるでスクリーン越しに見ているような感覚だった。自分とは違う誰かを見ているような……。
それもそのはずだ。今はっきりと思い出した。白銀の髪にラベンダーの瞳なんて、本来の自分の姿ではない。私は日本に生まれた黒髪黒眼のごくごく普通の女子だった。
そう! つまりは転生しているようだ。
それもこの顔どこかで見たような──その疑問はすぐに解決した。
間違いない。前世でプレイしていた乙女ゲームの1つだ!
前世では数多くの乙女ゲームをプレイしたが、コレだけはより濃く記憶に残っている。
何故なら、“悪役令嬢”のキャラが百発百中で断罪されるから。
私は乙女ゲームの中でもヒロインよりライバルキャラの方が好きだった。見た目は整っていてなんでもできる最強キャラ。なのに報われない。そんな可哀想なキャラに大いに好感を抱いたのだ。
だからバッドエンドなどで攻略対象が悪役令嬢と結ばれるなんてエンドがあれば私はめちゃくちゃ興奮した。
そしてほとんどの乙女ゲームがそういうエンドがあったのだが、この乙女ゲームの悪役令嬢であるルリアーノ・アルランデだけは絶対に報われないのだ。
それはもう何かの陰謀なのでは、ってくらいの確率で断罪される。唯一上手くいきそうだった婚約者との恋は実る直前に何者かの手によって殺された。
数ある乙女ゲームのライバルキャラの中では全然慎ましやかな方なのに、ルリアーノに待ち受けているのは断罪or死。
いくらなんでも可哀想すぎる、と記憶に刻まれていたのだ。
そして私は今、どうやらその可哀想なルリアーノに転生しているらしい。つまりは、ヒロインがどの攻略対象とくっつこうがくっつかまいが、断罪される運命。
──と、そんな重い運命を背負って何故こんなに冷静でいられるのか。
それはそんなことどうでもいいからだ!!
だってあのルリアーノ様だよ!? なんでもそつなく完璧にこなす文句なしの公爵令嬢!! 数多のキャラの中でも一番好きだったんだけど!
何より外見がめちゃくちゃ好みだ。昔から銀髪って憧れてたんだよね……。
いつかは断罪される運命? そんなのどうだっていいわ。どうせ断罪されるなら、この外見と能力思う存分活用してやろうじゃないの!
人生に悔いあるべからず!
さーて新しい人生、何を楽しみに生きようかしら?
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