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25. エトメール・ムリク

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エトメールが束ねる闇組織は謂わば犯罪集団だ。
帝国のあらゆる闇を支配し、帝国で犯罪行為をするにはエトメールの許可を得る必要がある、とまで言われている。

したがって前グマーレン侯爵夫妻も闇組織から人身売買の許可を得ていたはずだ。
かなり稼いでいたようだからエトメールも一目置いていたのだろう。
そんなグマーレン侯爵の悪事が明らかとなり、しかもその娘が侯爵家を継いだと聞いて、好奇心旺盛なエトメールが様子を見にきたのね。

エトメールは元々孤児の生まれだ。
スラム街で日々を生きていくために犯罪行為を繰り返していた。
最初はスリなど可愛いものだったのに、自分を苛めてきた相手を返り討ちにして偶然殺してしまった時、異様なほどの快感を感じてしまう。
それからは犯罪衝動のまま手当たり次第街の人間を殺していった。

そんな悪鬼と化したエトメールを見つけた人物が当時の闇組織のボスだ。
世代交代を考えていたボスは、一番邪悪な人間に自分の後を任せようと思っていた。
したがってエトメールに名前を与え闇組織に引き入れたのだ。

闇組織に入ったエトメールはすぐに頭角を現し、先代ボスの期待通りあっという間に帝国内の犯罪者たちを取り仕切るようになった。
そして、文句なしにボスの座を譲ろうとした前日──先代を殺したのだ。

曰く、『ずっと殺す立場だったアンタを殺してみたかった』らしい。
エトメールに面倒を見てくれた感謝の気持ちなんて微塵もなく、頭の中にあるのはだけ。

そんなヤバイ人間が率いる組織、皇室が放っておくわけがないと思うが、既に国中の犯罪者を取り込んで膨大になった組織が手に負えるわけがなかった。
エトメールの殺人行為に目を瞑る代わりに、皇室には一切手を出さないという約束をするのが精一杯。

まあ、エトメールが怖くて犯罪を尻込む者も多く、結果的に犯罪被害の件数は先代ボスの時より少なくなってるらしいから、皇帝も何もせずにいるのだろう。

ただ、あの暴君皇太子が皇帝になった時が怖いけど。表も闇もヤバイ奴とか、帝国滅ぶんじゃない?

そうなったらどうするんだろう──ちょっと面白そう。

…いやいや、それは皇帝陛下が気の毒だな。天国で絶望している顔が容易に想像できる。
できるだけ皇帝陛下にお力添えしよう。




──さて、まずはこの快楽殺人鬼をどう片付けよう。
今戦っても勝てる気がしないしなぁ。
幸い、興味は持ってくれたみたいだから、より彼の好奇心を刺激することでも言ってみようかしら。
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