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27.再び王宮へ
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さて、屋敷のゴミ掃除も終わったし、領地の視察も行けたし、直近でやるべきことはとりあえず片付いた。
というわけで、皇帝陛下からお誘いいただいたので会いに行こうと思います。
皇帝陛下、お元気かな~。
本当は調査隊が訪れた次の日にお誘いの手紙が届いていたのだけどバタバタしていてなかなか行けなかったのよね。
気付けばお誘いいただいてから5日も経ってしまっていた。
怒ってないといいけど…って寛大な陛下のことだから、こんな些細なことで怒ったりしないわよね。
御供にはラピではなくロペルを連れていくつもりだ。
きっと役に立ってくれるだろう。
「お、俺が王宮に…!? 無理だ! マナーなんてこれっぽっちも知らないぞ!?」
朝、急遽ロペルを連れていくと命じたらぎょっとして反対してきた。
すかさずミーグルが咳払いして慌てたように取り繕うロペル。
「む、無理です…お、私はまだ侯爵様の御供ができるほど学べておりません…」
「ふふ、たった3日だけど敬語は何とか身につけたようね。大丈夫よ、まだあなたにマナーなんて求めてないから。黙って私の半歩後ろを歩いているだけでいいの」
そうフォローしたけど、納得いっていないのかロペルは不安そうにミーグルに助けを求めた。
「侯爵様がそう仰るのだから大丈夫ですよ。言われたことを忠実に守りなさい」
ミーグルは私が一度決めたら何を言われても覆さないことを知っているから、半ば諦めたように私側についてくれる。
「はあ…どうなっても知りませんよ…」
そこでようやくロペルも諦めた。
そんなに心配しなくても、あなたがやるべきことは決まっているのだから大丈夫よ。
その一言が、私の口から出ることはなかった。
王宮に着いて、真っ直ぐ陛下が待つ場所へと向かった。
この前入った謁見の間ではなく、限られた人しか入室を許可されていない陛下のプライベートルームみたいだ。
そんな場所に招待してもらえるなんて光栄の極みね。
「よく来たな、グマーレン侯爵。そなたを待ち望んでいたぞ。実に5日もな」
「申し訳ございません。一刻も早くお会いしたかったのですが、何分立て込んでいまして…」
「余を待たせた甲斐はあったのか?」
「ええ、当然ですわ」
「それならば許そう」
そう言って今日初めての笑顔を披露してくれた陛下。
やっぱり可愛い。怒ってはいないと思っていたけど、不貞腐れてはいたみたいだ。
それを茶目っ気のある返しで私が罪悪感を抱かないように配慮してくれる当たり、やはり陛下は優しいな。
陛下の座る椅子の、テーブルを挟んだ向かい側の椅子を促され、恭しく礼を取った後腰掛ける。
すぐに給仕の者が香りのよい紅茶を用意してくれた。
「さて、それでは侯爵になってからの数日間について聞かせておくれ」
「はい、陛下」
好奇心が抑えられないといった様子の陛下に微かに笑みをこぼして、説明するべく口を開いた。
というわけで、皇帝陛下からお誘いいただいたので会いに行こうと思います。
皇帝陛下、お元気かな~。
本当は調査隊が訪れた次の日にお誘いの手紙が届いていたのだけどバタバタしていてなかなか行けなかったのよね。
気付けばお誘いいただいてから5日も経ってしまっていた。
怒ってないといいけど…って寛大な陛下のことだから、こんな些細なことで怒ったりしないわよね。
御供にはラピではなくロペルを連れていくつもりだ。
きっと役に立ってくれるだろう。
「お、俺が王宮に…!? 無理だ! マナーなんてこれっぽっちも知らないぞ!?」
朝、急遽ロペルを連れていくと命じたらぎょっとして反対してきた。
すかさずミーグルが咳払いして慌てたように取り繕うロペル。
「む、無理です…お、私はまだ侯爵様の御供ができるほど学べておりません…」
「ふふ、たった3日だけど敬語は何とか身につけたようね。大丈夫よ、まだあなたにマナーなんて求めてないから。黙って私の半歩後ろを歩いているだけでいいの」
そうフォローしたけど、納得いっていないのかロペルは不安そうにミーグルに助けを求めた。
「侯爵様がそう仰るのだから大丈夫ですよ。言われたことを忠実に守りなさい」
ミーグルは私が一度決めたら何を言われても覆さないことを知っているから、半ば諦めたように私側についてくれる。
「はあ…どうなっても知りませんよ…」
そこでようやくロペルも諦めた。
そんなに心配しなくても、あなたがやるべきことは決まっているのだから大丈夫よ。
その一言が、私の口から出ることはなかった。
王宮に着いて、真っ直ぐ陛下が待つ場所へと向かった。
この前入った謁見の間ではなく、限られた人しか入室を許可されていない陛下のプライベートルームみたいだ。
そんな場所に招待してもらえるなんて光栄の極みね。
「よく来たな、グマーレン侯爵。そなたを待ち望んでいたぞ。実に5日もな」
「申し訳ございません。一刻も早くお会いしたかったのですが、何分立て込んでいまして…」
「余を待たせた甲斐はあったのか?」
「ええ、当然ですわ」
「それならば許そう」
そう言って今日初めての笑顔を披露してくれた陛下。
やっぱり可愛い。怒ってはいないと思っていたけど、不貞腐れてはいたみたいだ。
それを茶目っ気のある返しで私が罪悪感を抱かないように配慮してくれる当たり、やはり陛下は優しいな。
陛下の座る椅子の、テーブルを挟んだ向かい側の椅子を促され、恭しく礼を取った後腰掛ける。
すぐに給仕の者が香りのよい紅茶を用意してくれた。
「さて、それでは侯爵になってからの数日間について聞かせておくれ」
「はい、陛下」
好奇心が抑えられないといった様子の陛下に微かに笑みをこぼして、説明するべく口を開いた。
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