Freak out~かくれんぼ∼

月花愛葉(*Mana*)

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1章

5話

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(おお・・羽織(ばおり)さんってなんか本当に情報収集得意そう・・頼りになりそうだ)

「なあ!空き巣ってなんだ?羽織(ばおり)さん!」

凪(なぎ)が 頼りになりそうと心で思いながら ずいっと聞く 

「ああ 灘(なだ)でいいよ  凶器の包丁が 一拓(いったく)君の部屋に来た経緯の可能性の事さ・・」

「!なるほどな~ あ オレも呼び捨てでいいですから」

「ああ 呼びやすいようにさせてもらうよ」

「あ! そうか! 誰かが侵入して 包丁隠して置いてったかもと考えたわけね?」

「おお すげぇ!」

「ああ!すげえな!こっちも なんか頑張れば解決しそうだな!」

皆が一斉に話し出す・・しかし

・・・・・・・・・

ボーっとした様子で 反応が遅れる一拓

「ん?どした 拓?」

「・・・あっ すっすみません・・」

「・・ああ!そうか お前あんまり休めてないんだっけなー 
ワリイ ワリイ!ちょっと休むか?拓」

「ああ~そうだったな!お前 指名手配だったな~」

「そうだな!まずは休め!」

「あ・・ああ・・ありがとう・・確かに眠いです・・」

ふと部屋の時計を見ると23時を回っている・・
安める場所ができた事で 今までの疲労 緊張と心労・・ズンと出てきてしまったようだ・・

「ああ 遠慮すんな!あっち寝室なー襖の先 そこ畳なんだ」

そう教える凪

「あっ 予備の布団 置いてあるから使って!」

杏(あん)が言う

「シャワーも浴びられるぞ あそこー」

「あ もし必要なものがあったら この男どもに遠慮なく頼むのよ!」

「あ あはははは・・はい・・すみません・・ありがとう・・」

(本当に いい人達だ・・)

「そっそれじゃあ お言葉に甘えて ちょっと休ませて下さい・・」

「ああ!気にしないで寝ろよ!」

「おーおやすみー!」

「またな!」

「おやすみなさい 気にしないで寝るのよ!」

「ああ じゃあカメラ借りておくから お休み」

「あ はい・・」

少し申し訳なさそうに でも笑顔で 寝室に向かう
そして布団を敷き ほどなくして 布団に入る一拓・・・

(はあ・・今日は奇跡が起きた日だな・・はは・・・)

襖から漏れる明るい光・・人がいる事 優しい人達・・
今日のその温かい出来事を忘れないと 一拓は再度 心に深く刻んだ・・

そして・・一拓が布団に入るまで影から そっと見ている5人・・

「はは よかった・・もうそっとしといてやろう」

「ああ」

凪と皆がそう言い・・襖が静かに閉まる・・




夜中…目が覚める一拓   まだ部屋は暗い・・

そこへ つられて起きる凪

「おう 拓 休めたか?」

凪は どうやら 隣に布団を敷いて寝ていたようだ

「あ はい ・・よく眠れました ああ 起こしてすいません・・」

「いやいや 気にすんなー」

(ん?あかり まだついてる・・)

さっきの部屋の襖から明かりが漏れているのを見た一拓は
スッと少し開ける・・すると

「あれ 灘さん?」

「ん? ああ 目が覚めたのか?他の皆は帰ったよ
杏さんも自室に戻ってる・・オレは もうちょっと写真を調べたくてね 残らせてもらったんだ」

「そ そうなんですか なんだかホントに有難うございます・・」

「いや 君の事も容疑者とは思えないからね 」

「ああ!そこは すっごい頼りにしてるぜ 灘さん!」

凪が言う

だが その時だ

ぐぅうううう!
突然 一拓のお腹が鳴った

(うっ)

「ガハハハっ!まだ足らねぇか?」

「うっ・・ああ・・いや・・すっ すみません・・・・」

「はは! ちょうどいい 買い物ついでに ちょっと外の風 あたりに行かないか?」

「そうだな 夜中ならあんまり人目 気にしなくていいしなー」

「ああ じゃあ 店に買いに行くのは オレに任せてくれ」

「ああ ワリイ!頼む!」

「あ・・お お願いします・・」

・・そして地下から公園へ出て 寒空の下コンビニへ行き
その帰りに公園で食べ ひと息ついた3人

「さっきまで 暖かいとこにいたのに 
ついあったかいものお願いしちゃうくらい・・やっぱ寒いですね・・はは」

「ガハハハ!そうだな~まあ今食べたから いまはちょうどいいなー」

「・・はは・・・あっ!そういえば飲食代とかってどうすれば・・」

「ああ!それは後で働いて返すって決まりだ!
会ったばっかのお前なら 杏はいいよって言うかもしれないけどな~」

「ああ!わかりました 杏さんにもそこはちゃんと返すって言っときます」

「ガハハ!そうだな お前はそう言うと思った!」

「あはは! ああ 灘さんにも後でちゃんと返しますから」

「ああ いつでもいいから・・」

・・と そこへ プルルルと電話の音が鳴る・・
その電話音の主は 灘の携帯だった

「ああ すまない 電話だ ちょっと外すよ」

「ああ!わかった 」

「あ はい・・」

2人の返答を聞き 少し離れる灘

「ガハハ~灘さんって かっこいいよなーなんか!」

「そっ そうだね・・ 本当にすごい情報を持ってきそうだよね」

「ガハハハ!そうだな 来てもらえて良かった・・早く解決しような!」

「うん・・・あ そうだ・・凪もそうだけど 凪には本当に いい友達がいるね・・」

「ん!ああ! でもお前も もうそうだぞ オレにとっては!」

「う・・うん ありがとう・・・オレも会えて 本当によかったと思ってる・・」

そう言って 晴れ渡る冬の夜空を見上げる 2人・・

・・・そして少しの沈黙の後・・


「・・・はーい なんか友情に浸ってるとこ悪いけどー 注目~」

「っ!?」

そこで 突然 聞いた事のない声が 沈黙を破る・・

「なっ 誰だ⁉︎ 」

凪が言う・・それは2人が立っている公園の遊具 すべり台の
すぐ近く 後ろ側から聞こえた

「まあまあ そう怯えなさんなー」

そう言って暗闇からスッと姿を表したのは・・
外灯で正確にはわからないが おそらく茶髪で 薄茶色っぽい背広を着た・・
だが とても大人には見えないような そんな童顔をした男だった

だが・・その男から「ある独特の雰囲気」を感じ取った凪は・・

「!逃げるぞっ」

「えっ⁉︎」

そう言って緊張を見せた・・

その時 ふと一拓は 同時に灘がいた方向にも目をやったが・・

(・・いない・・どうしたんだろう・・一体何が・・)

「あーだから~そんな怯えなさんなってー はい確保~!」

そして・・その見知らぬ男は なおも変わらぬ様子で 意味深な事を言い放ち・・
おもむろに左腕をサッと上げる動作をした!

「!?」

・・すると どうした事か・・先ほどまでずっと静寂を保ち続け
人の気配など一切しなかった そのうっそうとした公園の・・なんと全方位から
複数人の男達が 突然ザザっと現れた! そして 2人がいるあたりを中心として円を作りながら
その2人を囲い込むように ずいっと迫ってきたのだ!

「っ!」

「ひゃあぁっ」

それは一瞬の出来事だった・・・
2人は・・・その大勢の男に慌てている間に
逃げ場もなく すぐさま包囲されてしまったのである・・

そして地面にへたりと座るしかない状況で
まさに囲い込んでいる複数人のうち 数人を見た凪が驚いた!

「はっ!なっ 警官⁉︎ 」

「えっ!?」

それを聞いて一拓も男達を見る・・すると
囲い込んでいる数人の中に 警官の制服を着た男が混ざっているのが確認できた

それを見て愕然とする一拓・・

「あはは~はい!確保~♡」

2人のそんな嘆きをよそに 包囲が成功して明るくそう言う背広の童顔男・・そして

「あ センパーイ!もういつまで待たせる気かと思っちゃいましたよ~もう~」

・・そう言って 今度は2人の後ろにいる人物を見て話しかけた
そして それを見てつられて振り向く2人・・しかし そこにいたのは・・

「ああ 悪いな・・その2人の事を再度検証してた・・だが遅れるかもとは言っておいただろ」

・・2人の事は まるで気にもしていないかのように・・淡々と話す灘だった・・・
その姿に 驚いたような 裏切られたような顔で呆然とする2人・・

「あはは~まーそうですけどーさすがにこんな時間は ひどいと思いますけどね~
しかも さっきまでオレら動き通しだったのにぃー いい休憩にはなりましたけど~」

「ブーブー!」

そう言って周りの複数の男からも ブーイングが漏れる・・・

「ああ じゃあ今度・・」

「ん⁉︎」

と その時!その男達が一斉に「珍しく何かしてくれるのか!?」
といった様子で 灘に注目した・・が

「・・また 潜入捜査でキツく呼び出してやる」

灘は淡々と それだけを言った・・そして

「・・・・うっ!」  

キイイイイン!

・・・・それを聞き そんな音がそこで聞こえそうなほど
その場と複数の男達は 冷たく固まった・・・・・・

「この程度で うだうだ言うな  なってない証拠だ・・・」

(うっ うっ・・・自分達は警察・・身を粉にしなきゃいけない警察!だからセンパイは正論・・!
なにも言い返せないっ わかってる!わかってるけど うわぁああああん! もう嫌だこの人ぉ!!)

そして そこにいた警官と 複数の男達全員が なんだが悔しそうなポーズを取る・・
おそらく 灘が一番上司なのだろう・・そして・・・

・・・・・・・・・・

・・・そんな やり取りを間近で見せられていた2人は・・
目の前の付き合いの長そうな大人達の会話に・・・

(うっ・・なっ・・なんか楽しそうだ・・・・・)

自分達の最大のピンチ!だが そんな時に ふと漫才を見せられたかのような・・
なんとも言えない そんな複雑な心境でいた・・


「はあ・・・まあ騙して悪かったね 2人とも・・オレは 羽織 灘・・刑事だ・・」

そう言って警察の手帳を本当に出して見せ 話し始める灘・・

(・・・・・・くっ! 最初 この人に感じた あの独特の雰囲気は・・警官だからだったのか・・!
これは見抜けなかったオレの責任だ・・・)

・・そうして凪はひとり・・最初に灘を見た時に感じた怪訝・・
それを思い出していた・・そして・・

「すまない・・」

「えっ・・」

「すまない 拓! こいつらは 多分オレを探してたんだ!
オレのダチから きっとマークしてたんだろう・・警戒してた一霞が信じ込むくらいだ
けっこう前からだったに違いない・・
お前は今日 あそこへ連れて来なきゃ捕まらなかった! だから・・すまないっ!」

悔しそうな凪・・・

「なっ・・・何言ってるんだよ!オレは納得してついてきたんだ!凪のせいじゃないよ!
それに オレ1人じゃ・・結局いつか捕まってたよ! 凪には感謝してるんだ・・」

捕まった後の責任・・後悔と相手への気遣い・・かばい合い・・
きっと 誰であろうと 親しい仲間が捕まればこうなってしまうだろう・・
無実なら なおさらの光景・・しかし

「ぷっ・・・くくく」

なぜか 先ほどの童顔男が・・・そんな2人を見て ぷっと吹き出して口を押さえる・・そして

クスクスクスクス・・

 2人を囲む 他の男達も同じように なぜか皆 笑いをこらえているのだ・・・

「・・・・・・・??」

灘は変わらず 冷静な面持ちで こちらをじっと見ているが・・
一体なんだというのか・・? 2人は首をかしげると同時に 妙な違和感が広がるのを感じる・・

そこへ灘が・・

「・・ああ・・えっと・・そのだな・・騙して悪かったと言ったろう・・」

・・そして その妙な雰囲気に 次の言葉で ようやく終止符が打たれる・・

「ええとだな・・実は 君ら2人の殺人容疑は
先ほど すっぱりと晴れたんだよ・・まずは安心してくれ・・・」

「・・・・・・・・・・え」

突然 予想外な事を言う灘に 目が点の2人・・・

「えええええぇええっ!?」

そして 2人して驚く

「なっ!それは一体どういう事ですかっ⁉︎ 」

「そっ そうですよっ!捕まえたのが 話するためかもって事ならわかりましたけど!」


「・・・ああ・・その・・・ええとだな・・」

2人の意外にも激しい そんな追求の様相に 灘は少しうろたえて・・

「わかった・・わかったよ・・順を追って話そう・・まずは凪・・君からだ」

「!よし 逃げない だから話してくれ・・」

・・そう言って 凪は 観念したように あぐらをかいて
改めて その場に座った 一拓もその横に座る・・

その様子を見て 複数の男達は円形は維持したままだが 2人から少し離れ
灘が その円の中 2人の前側に立ち・・そして冷静に話し始めた・・・・

「・・じゃあ いいかい?・・まず 君が先ほど杏さんの家で 話してくれた事件の詳細と
犯人と思われる奴についてをな 今まで 全てこちらでね 検証していたんだよ」

「!じゃあ 信じてくれたのか! それで!?」

「ああ 全て君の考えた通りだった・・」
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