Freak out~かくれんぼ∼

月花愛葉(*Mana*)

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1章

4話

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「あ!じゃあ あたし お茶出すわ!
初めてきた 灘さんと一拓君には 私が食事を作りまーす
食べられないものないわよね?」

年齢の話はスルーして そう会話に入る杏

「えっ あっお構いなく!」

「ああ 気にしないでくれ・・」

と焦る2人に

「いいからいいから~」

と、そう言う杏。そして

「はは ありがとう・・じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」

「あっ ありがとうございます・・」

灘(なだ)と一択(いったく)が言った。


「ああ!大丈夫だぞ!杏の料理はうまいからな」

 と続けて凪。

「フフン! よろしい!作るからには心して食べなさいよ!」

「あ・・あははは・・」

それを見て

「あーっ ずりぃな!」

「そうだな!」

蒼扇(おうぎ)と一霞(いちか)が突っ込む。

「む!あんたらはコンビニで買ってきてるじゃないの!また今度にしなさい!」

「ああ~」

「でも確かにけっこう買ったから食いきれねぇ・・」

「ガハハハ!じゃあそれ オレにくれ!」

「おーいいぞ!」

・・とても逃げている奴を匿う場の会話とは思えないが
そんな明るい雰囲気に とても安堵する初めて来た2人 一拓と灘・・

そして 数十分後・・・

しばらくして杏のオムライスをご馳走になり・・
久しぶりのまともな食事と人の優しさが 心底 心へと染みた一拓は とても深く感謝した・・

だが・・大げさだと全員に突っ込まれ 再び笑いが起きた。

そしてしばらく 一休みした後・・

「はあ ・・それにしても どうしようかしらね・・
せっかくあんたの方は、決着つきそうだったのに・・」

と、杏が凪に話しかける。

「え??まさか もう犯人が・・?」

驚いて言う一拓と 無言で驚いている 灘

「ああ まだ確定じゃないけどな・・目星はついたんだ
オレはこう・・犯人に はめられた感じなんだけどな」

そう言って話し始める・・

「オレはその日・・道を普通に歩いてただけなんだけど 
後ろからな警官が いきなりそこのフードの上着の奴!待てっ!って追いかけて来たんだよ
なんだと思ってオレは来るまで待って しかも名乗っちゃったんだけどさ 
そうしたらオレを突然 殺人容疑だ言って逮捕しようとしてきやがったんだよね
ホントに何かと思って焦っちゃってさー 何かおかしいと思ったから
隙見て慌てて逃げたんだけどなー」

「よ・・よく逃げられましたね…」

突っ込む一拓

「ガハハハ!・・で その時の状況推測を後からしてみたらだな どうやら
「その時 実際に追いかけられていた犯人」は「オレと似たような格好をした奴」
だったみたいなんだよな・・その時 走ってきた警官が そこのフードの奴!って
言ってたからなんだけど 警官が色とかまで見間違えるはずもないだろ?」

「う・・うん なるほど」

「・・それに実際 「犯人の逃走経路に都合よく同じ格好の奴が現れた!」
これはつまりオレの事なわけだけど・・偶然にしては出来過ぎてると思うだろ?
だから オレは意図的に 誰かに はめられたんだと思ったんだ」

「お おぉ・・」

意外な深い状況分析と推測に感心する一拓

「・・で!それじゃあどうやってオレを犯人と思い込ませたのか?って事だけど
その方法もな 実は考えてみたんだけどなー」

「えっ!す・・すごい」

「ガハハハ!いやいや 冷静に考えれば単純な話さ・・例えばなーこう 
犯人はその日・・オレのいる道まで 警官連れて逃げながら オレの後ろ側からやって来るだろ
で!オレがいるその道に入るために角を曲がった時とかさ
そういう「少しの間 自分の姿が警官から見えなくなる瞬間」その一瞬の間に
例えば その道の別の横道とかさ どっかにササッと 隠れちまえば
入れ替わりは それでもう完了なんだよ」

「あっ!そうか・・」

「ああ! あとは その後に追いかけて来た警官が 道の先にいる「服が犯人と同じオレ」を
勝手に見つけるわけだ そうなればさ「そいつが今まで追いかけていた犯人だ」と
警官は疑いもなく信じ込むってわけ・・ 推測だけどな
多分そんな感じのはめられ方 だと思うんだよな・・
案の定 逃げる犯人目撃証言は走って逃げるオレと同じ服した奴を見た 
顔はよくわからない しかないし
見た警官は自信満々だし 状況的には お手上げでな・・」

「な・・なるほど・・うーん・・」

なおも驚く一拓

「そう!しかもこいつ 着る服のブランド決まっててさー
曜日で何を着るかも全部決めてあって いつもだいたい同じパターンで服着てたのよ!
道歩く時間も だいたい決まってたし 多分・・」

杏が割って入る

「ああ・・!それを知った犯人が弥凪(やなぎ)君を利用した可能性があるって事か・・
それなら 納得がいくな・・」

じっと聞いていた灘も言う

「・・凪と同じ格好をした自分を犯行時に わざと警察や大勢に目撃させながら逃げて
本物の凪がいる方へ誘導・・ついてきた警官に本物の凪を さっきみたいな方法で目撃させて
犯人だと思い込ませ・・自分は隠れてやり過ごし 逃げた・・?」

状況を整理する一拓

「ああ・・おそらくな・・」

「で!誰が怪しいかって言うとなー 被害者の家の近隣住民でな」

「ええっ それもわかってるの⁉︎」

灘と一拓が驚く

「ガハハハ! ああ!実はなー こいつらに聞き込みしてもらったら
なんとオレと同じ服のブランド 突然大量に買い込みしてた奴が いたんだよ!
そいつは同時期に 近所で包丁とか含めたキッチン用品まで買ってやがってなー」

「ああ・・君の事件の凶器は包丁なんだっけな・・
他のキッチン用品まで買ったのはカモフラージュか・・確かに怪しいな
それにしても そこまで突き止めるなんて すごいな・・」

灘が続けて言う

「ああ!すごいだろ!近所のおばちゃん情報と こいつらの聞き込み!」

「照れるな!」

「ただ聞いただけだぞー」

「そうよーあははは!覚えてるおばちゃんと
よく知ってる おばちゃんの方がすごいわよ」

 蒼扇 一霞 杏 3人が言う

「ガハハハ!確かに おばちゃん感謝だよな」

「おおー・・・す すごい」

もはや置いていかれている一拓

「でも オレらには それ以上詳しく調べる事はできなくてな・・
・・現状はそんな感じなんだ・・警察に言っても信じないと思うしな・・」

「うーん・・」

「あ そういやあ一拓の方は?」

 凪が聞いた。

「えっ あ・・ああ・・じ 実は 
オレの方も よくわからない事が・・」

話し始める一拓・・

「えっと・・その・・オレの場合は いつも散歩に行ってるコースが
殺人現場になっちゃったみたいで」

「ああー・・」

同情の声が漏れる・・

「あはは・・オレはその公園で よく野良猫撫でたり写真とか撮ってたんですけど
後日 その事件がニュースになったのを 家で普通に見てたんです・・
・・オレはその時は・・ああ しばらく散歩に行けなくなるなって程度だったんですけど・・
なんか・・それを見た 刑事ドラマ好きの両親が・・」


「たっくん!!これはダメだわ・・すぐ逃げな!」

そういう一拓の母

「えっ⁉︎ なっ 何が・・?」

「ああ 急げ 母さん」

新聞をたたみ 父親も言う 休日の午前中・・

「あんた あそこへ散歩にばかり行ってたでしょう? 」

「えっ・・う・・うん」

「いずれ あんたを見たって目撃情報が上がって警察が訪ねてくるかも・・」

その時! ピンポーン ピンポーン

ドンドン!!

「御磋崎(みさざき)さん!警察ですが 捜査にご協力下さい!」

(うわあーっ!マジかぁああーっ!!)

「あーあーもう これ捕まったら自白させられるわよ!
これ うちのへそくり! あとは いざとなったら 遠くの方の親戚を頼るのよ!」

本当に へそくりを渡しながら言う母・・

「って!!知らないよ そんな親戚っ!
もう!刑事ドラマのノリで話すのやめてよ!」

「あははは!・・・ま とにかくね・・うちに帰って来ちゃダメだし 知り合いの家もダメ
なるべく遠くに 人気ない方へ転々としながら逃げな!あと携帯とかも持ってっちゃダメよ! 」

「本当に警察が来るなんてね・・・なんかこれ 怪しい雲行きな気がするわ・・」

途中から真面目になる母・・

「えっ!? てゆうか  まっ マジで逃げろって言うのか・・・・?」

(ドキドキドキドキ )

珍しくそんな面持ちをする母に 緊張する一拓

(ま・・まあ本当に警察は来たし・・母さん達の方が詳しい・・
もしや・・ホントに容疑者にされそうのかな・・オレ・・うーん・・
まあ しばらくして何もなければ 戻ればいいだけか・・・)

「大丈夫!たっくんやったりしてないのわかってるから!
今は 散歩行ってるって言うし しばらくごまかしとくわ!
もしニュースで何もなければ帰っておいで」

「あ・・ああ うん・・」

「じゃ!グッジョブ!!」

そして親指を立て ウインクし 裏口から逃げる事を嬉々として促す2人・・

(・・・・それを言うなら グッドラックだろう・・・・)


という感じで・・・実は逃げて来ちゃったんですけど・・・・


「おおぉぉおおーーっ!!ウソだろっ!マジすげえ!!」

「お前の父ちゃんと母ちゃんサイコーだな!!」

「ガハハハハっ!マジか 拓!カッケー」

「あら 可愛いご両親ね~」

「・・・・笑われると思いました・・・
まあ刑事ドラマの影響で 母さん達は何気にワクワクしちゃってたし・・
後から やっぱ逃げない方がよかったんじゃ・・って
ちょっと後悔も してたんですけど・・でも・・」

「・・ん? 」

「・・母さん達は 正しかったんです・・」

「・・あ そうか・・報道じゃあ・・」

凪が言う

「ええ・・これは 本当におかしな話なんですが・・オレが逃げた後 家の中探した警官が
新聞紙にくるまれた血のついた刃物を なんでだか オレの部屋から見つけたらしくて・・・
指紋は出てませんが 血も被害者のものと一致したって 逃げた先で見たテレビで報道が・・」

「なっ・・・なにーぃいいいっ!?」

一霞と蒼扇と凪が そろって言う

「・・・オレも唖然としましたけどね・・なので多分・・
オレも はめられたんだとは思うんです・・
もし 両親が気にしていなければ いずれは逮捕されてたはずですから・・」

「こっ・・・・・・・こええっ!」

「なにそれ!ウソだろ! めっちゃ怖えっ!!」

「うーんそれは 謎だなー・・・」

「いやだ・・怖いわね・・」

それぞれに言う4人

「まあ オレの方はそんな感じで・・やっぱりお手上げなんですけどね・・」

・・だが 少し沈んだその場を打ち消すように

「・・・・なあ さっき言っていた その写真て 何か持ってないかな?」

と 1人だけ じっと黙って聞いていた灘が ふと言った

「え?あ・・ああ ポケットにカメラ入れたままでしたから 持ってますけど・・」

「見せてくれるかい?」

「えっ ええ  いいですよ」

「有難う」

そう言って受け取ると 複数のその写真に「たまに映り込む人影」を見て
全て同じ人物のようだと発見する灘・・そして・・

「・・なあ この人は?よく写り込んでいるけど」

「え? ああ 前に話しかけてきた事があるおじさんですよ
そういやあ この辺の子?とか よく来るの?とか たくさんそんな事は聞かれましたけど」

(・・・・このおじさん 本当によく写り込んでるや 気づかなかった まあ偶然か・・)

「うーん・・これしばらく借りてもいいかな?」

「えっ」

「真犯人につながるかは わからないけど・・ちょっと調べたくてね」

「あっ・・は・・はい  わかりました」

「有難う」

「いえ・・こちらこそです・・」

「おお!そんな奴 写ってるなら そいつ怪しいんじゃね?」

と凪。

「いやーそれだけで疑われたらオレだったら悲しいな
ただ 若いもんとの話がしたいおじさんかもしれん・・」

そう蒼扇が同情の色で返す。

「そっ そうだな 琴生(ことな)・・確かにオレでも かなしーなそれ・・」

と一霞。そして杏も

「うーん 誰でも怪しく見えるわね・・」

・・と 灘が持つカメラを他の4人が覗き込み 割り込むように言った。

「ううん・・見た目は温厚そうな人でしたけど・・」

それを見ながら 付け足して言う一拓・・するとそこへ

「あ・・・それと もうひとつ・・」

・・そう 再度切り出す灘 

「つかぬ事を聞くけど 君の家 空き巣とかに遭った事は?」

「えっ・・・・?そ そうですね・・オレが生まれる前はわかりませんが
なっ・ないと思います・・」

「そうか・・ああ 最近の情報で十分だ 有難う」

「・・あ! そういえば・・」

「ん?」

「そのおじさん うちの周辺にいるのは よく見た事がありますよ
あの公園も うちの近所だったから あのおじさんもそうなのかなって思う程度でしたけど・・」

そこへ 今度は一拓が 突然 思い出したように言った・・

「そうか・・わかった 他に何か思い出したら なんでもいい また教えてくれ・・」

「あ はい・・」




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