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1章

3話

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「あーまぁまぁ~ とりあえず中 入って話そうぜ」

・・そして 中へと押し込められる女性と一拓

・・数十分後・・

ズーン・・沈む表情の杏

すでに自己紹介を済ませた一拓達は  先ほどの扉を入った先の部屋で
少し広めの 明るい ごく普通の部屋に通されていた

内心 どんな部屋か?それとも またフリルがすごい部屋なのか?
と・・少し思ったのだが・・そこは 
布団設置済みのこたつが置かれている事と地下部屋だという事以外は
本当に普通の よくある洋風 標準的な部屋だった 

・・そこは彼女・・祇城 杏(しじょう あん)と 名乗った彼女の家で
同居する家族も 実は住んでいる家らしいが 
その家族のいる部屋とは隔離されたような感じになっており
今はその部屋を 彼女が別室や来客用にと自由に使っているそうだ

・・もちろん さっき自分達が来た扉以外にも
外へ通じる玄関は別の所にちゃんとあるらしい

・・だが驚いたのは 家族にも知られないようにしながら
その凪と呼ばれた彼・・名前を 弥凪 鷹楠(やなぎ たかな)と名乗った その男を
信じ匿っているという事だった・・

(それにしても 今時そんな事をしてくれるなんて・・本当にお互いが良い友達なんだな・・・)

「・・で あんた‥その子には悪いけど またやっかい事増やしてどうすんのよ・・」

杏が重い口を開く

「うっ! す すみません・・恐縮です‥」

かなり うろたえて言う一拓・・

「・・凪のカンは当たるし 私も君が そんな風に見えないから
本当に無実では あるんだろうけど・・まさか凪と同じ容疑だなんて・・」

「・・・え・・?ええっ!!」

驚く一拓 

「まあ2人とも 落ち着いてな」

ピッ そして おもむろにテレビをつけ ニュースにチャンネルを合わせる凪

一拓の事もやっていたが 叶夜町での事件がニュースに上がり 
容疑者の男の写真と名前が出ると・・

「あっ!」

「・・ そう目の前にいるだろ オレが この弥凪 鷹楠
ここ 叶夜町で起きた殺人事件の容疑者だ・・やってないけどな」

ポカーン 

「ウ ウソ・・」

「・・本当なのよ 面倒な事にね・・」

あっけに取られる一拓

「な!ほら!オレが通報するわけないのわかってくれるだろ?
お前は実苗町だから ここからは隣町の そのまた隣くらいの距離だよなー
ずっと逃げてきたんだな・・オレも置いてもらってる身だけどさ
疲れただろ?今日のとこは まあ安心して休めよ」

「は・・は・・はい  あ・・ありがとう ございます・・」

まだポカンとしながら なんとかそう言い・・・コクっと下を向く一拓 

(・・・はあ・・・・ウソだろ・・ホントにもう・・なんて人だろう・・・・
自分もそんな状況だったなんて・・!善人すぎるよ・・
こんな温かい人・・本当にいるもんなのか・・)

・・自分と同じ境遇だった・・それなのに 見ず知らずの自分を気遣ってくれ
さらに本当に一緒になって 匿おうとまでしてくれている・・
その事実に・・いっそう深く心を打たれる一拓・・

(・・あら やっぱり疲れてるのかしらね 何か食べるかしら・・)

(そうだな・・もうあいつらも来るし ちょうどいいか・・)

・・うつむきかげんで こたつに座っている一拓だが
それは密かに感動しているんだ とは つゆ知らず・・
部屋のこたつの机を挟み 一拓と向かい合うようにして座っていた
杏と凪2人が そう小声で話す


(はあ 杏さんてば こんな良い人いるのに どんだけだよ・・・はぁ・・)

・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・

(よし・・余計な事に突っ込む元気は出てきたぞ・・オレ・・
・・オレも ここの人のために できる事をしよう・・)

・・すると そこへ・・

コンコン!

「入るぞ!」

「あ 来たわね!」

(ん!だっ誰・・?)

「ああ 心配すんな!オレと杏のダチだよ
一緒に匿ってくれてんだ あ それとあの扉の鍵 内側からかけたけどなー
実は外から開ける裏技もあるんだ~ 仲間内だけが知ってる」

笑って そう返す凪だが・・心配は消えない 一拓

「あ・・そ・・そうなんですか・・はは・・」

(だっ・・・大丈夫なのか・・?・・うーん・・
よくよく考えると この人・・ダチが けっこういそうだな・・・
まあ 1ヶ月近くずっといて大丈夫なら・・ )

「あ!そうだ 言ってなかったけど 一霞(いちか)も今日
別の奴連れてきたいって言ってたわ! 多分 今一緒に来てるわね」

さえぎるように言った杏に さらにドキッとする一拓 

「おお!そうなのか?」

嬉しそうな凪 

(う・・・・・)
焦る一拓

「うん そいつ あたしも面識ないんだけどね 一霞がちょっと前に知り合った奴で
なんかすごく良い人だって で 情報収集が上手らしくてさ
一霞からあんたの話聞いたら 自分も とてもあんたが殺人するなんて信じられないから
協力したいって そうかなり強く言ったらしいわ・・
まあ再三確認とって信用できる奴だって一霞は言ってたけど・・
最終的には あんたが決めて  いい?入れるわよ・・?」

「ああいいぞ!オレは あいつらを信じる 」

(・・・・・・そっ 即答・・・うう・・本当にもう この人は・・・)

「あ!そうかワリィ! 今日はお前もいるんだったなあ!
ほら!オレの話聞いただけでも信じてくれてる奴ならさ
お前の事も 話せばきっとわかってくれる・・だから・・オレを信じてくれねえか?」

「うっ・・・」

凪にそう言われ たじろぐ一拓・・だがそこへ

「ああ!それはちょっと難しいわよ 凪!今日 会ったばっかなんでしょ?もう・・
君 一拓 って言ったわね 心配しないで! こいつ いつもこんななのよ~
だから私が気をつけてるの!来た奴がもし変な素振り見せるようなら すぐ逃がしたげるからね」

杏がそう バシッと突っ込む

「ガハハハ!そうかぁ~?ワリィワリィ!」

「あ・・・あはは・・わ・・わかりました・・」

(ははは・・杏さんが突っ込んでくれなかったら どうしようかと思っちゃった・・
でも確かにそうなんだよな・・・まだ 完璧にお前を信じる!って
オレがこの人に即答するのは無理だ・・でも オレは この人が殺人しただなんて
とても信じられない・・良い人・・それは確か・・ううん・・今はこんなに中途半端・・
でも・・ついてきた事と その結果に後悔はしないぞ・・)

「よし!じゃ行くわよ!」

杏が応対し そしてまた・・新しい扉が開く・・

・・ガチャ!

「さ いいわよ!入って・・あ、上着はそこで脱いでよ」

バタバタバタ・・

数人だろうか・・杏との軽い挨拶やりとりと、数人の足音がする・・・
ガチャ ドアが閉まる・・そして・・

「よっ!さみしくなかったか~凪ー」

「ガハハハ! お前がさみしかったんだな~」

「だははっ いやあ~」

予想に反してかなり明るい顔が飛び込んできた

(ううん・・)

一拓は懸念するが 様子を見守る事にした

先ほど真っ先に入り 凪に挨拶したのは・・やせ型で茶髪ではねた髪に
ベージュと茶色の長袖 くたびれたようなジーパンというカジュアルラフな格好をして
男物のペンダントを1つ下げ 白いコンビニの買い物袋を持った・・
なんと言うか 子供で例えると 元気でいつも走り回ってそうな
そんな やんちゃそうな感じの青年だった・・背は170いくかいかないか くらいだろうか

そして次に・・

「よう凪!」

「おう!」

「飯食おうぜ 飯ー」

「ガハハ お前は真面目な顔したまんまで言うなよ~」

「ん?別にそんなつもりはねえんだが・・」

その もう1人は・・やせ型で髪はきちんと整えられた黒 そして これまたきちんとした上下に
ベストを着た 見た目は完全に優等生・・しかも お約束のメガネまでしている
そんなクールそうな青年だった 背は やんちゃな彼と同じくらいだろうか・・
終始冷静な面持ちで 淡々としゃべるその男だが・・どうやら 嬉しいようだった・・

「ああ こいつらがダチ!よろしくな」

凪が一拓に小さくそばで言う

「あ はい・・」

スッ・・

そして最後に もう1人が現れる

「ああ あんたね 協力したいって来てくれたの」

杏が言う

「ああ 一霞と最近知り合って話を聞いてね・・
弥凪君に協力できればと話を聞きに来た・・君達の事も聞いてるよ」

ハキハキと好意的に だが冷静に そう話すもう1人の男

・・その男は やせ型だが鍛えている感じのする体格で 少し茶髪の入った なだらかな髪に
黒の長袖一枚 男物のペンダントをして細身の黒いジーパンという・・
なんだか大人な雰囲気をしている・・身長も175くらいだろうか・・おそらく
自分やここにいる誰よりも年上だろうと感じる一拓

そしてその 年上の彼が言い出した

「君が弥凪君だね?」

「ん・・・?」

少し怪訝そうに その人物を見る凪・・

「ん?どしたの?」

と聞く一拓

「あ・・いや・・
わざわざ来てくれてサンキューな!」

そう言って すぐに笑顔に戻った凪は 立って手を差し出す

「ああ よろしく」

そして それにすぐ応え 握手をする2人

「あはは!そいつ いい奴だから!仲良くしてやって~」

と やんちゃな彼が言う 多分この人が杏さんの言っていた 一霞という人なのだろう

「ガハハハ わかってるって!」

「ああ!」

答える優等生の彼と凪

「・・ん?そういやあ 今日はもう1人いるな 凪?」

そして優等生の彼がふっと言う

そして3人が一斉に一拓の方を見る
すでに皆が気づき 内心 気になっていたようだ・・

(うっ・・・見られてる・・)
緊張する一拓

「って・・!ちょっと待て! そいつは……まっまさか 殺人犯⁉︎」

一拓を見て少しの沈黙の後・・優等生の彼が気づき 場の空気が凍る・・・

(やっ やっぱり言われた・・)

「いっ いやその・・ちっ・・違います・・!」

必死で その凍えた空気を破ろうとする一拓

「ガハハハ~!実は 夜の散歩中に会っちゃってさ~無実だってー」

笑顔の凪 

「なっ!まさかっ!! そんな事が 起こるもんなのかっ!?」

「すげぇな!!」

凪の友人の男2人が一拓にずいっと迫りながら言う・・

(うっ・・)
たじろぐ一拓

・・結局 凪の方が その凍った空気を すぐさま楽観の雰囲気へと溶かした・・

協力で来たもう1人は びっくりした様子で黙って見ていた・・そして


「ははぁ~こりゃあ参ったね・・まあいいや オレは蒼扇・・
蒼扇 琴生(おうぎ ことな)だ・・凪が信じられる奴だって言うなら オレもそうする・・
ま!お前の事は まだ知らないからな すぐは無理だと思うが よろしく頼むぜ・・」

優等生の彼がそう軽快に名乗った

そう言われ はっと そこで返答しようとした一拓・・だが 間髪入れずに もう1人が続けて言う

「ううん!それにしてもすげえ!あ オレはパッと見じゃあ お前が容疑者には見えねぇかな~」

そしてニヤっとして

「オレは一霞!一霞 成(いちか なる)だ!人は まあ付き合ってみなきゃわかんねぇ!よろしくな!」

やんちゃな彼が言った。そして やっと一拓が話し出す・・

「・・・あっいっいえ! その・・オレは 匿ってもらえてるだけでも すごく助かってます・・
無実なんですけど 迷惑はかけたくないので・・あまり気にしないで下さい・・
でも その・・よろしくお願いします 御磋崎 一拓(みさざき いったく)です」

緊張しながらオドオドと話す一拓・・

すると・・・・・気づけば 2人がその様子を 覗き込むように じーっと見ている

(んっ・・??)
たじろぐ一拓・・

「ガハハハ!!なっ!こいつ 絶対無実だと思うだろ~」

と そこへ凪が突っ込む

「あははは!ホントだな!超真面目!」

「だははは! すげえな!」

「はは・・オレも 君が容疑をかけられてるなんて見えないや」

そう言って近寄り もう1人の年上そうな彼も笑って会話に入ってきた・・

一拓の周りに集まる3人 それを見て 凪と杏も近くに座る・・

「あ!そういや まずさ お前の名前は?」

蒼扇が「名前を名乗っていない最後の年上そうな1人」へ 質問を まず投げかける

「ああ すまない オレは灘 ・・羽織 灘(ばおり なだ) よろしく」

「へえ~あのさ なんか年上に見えるけどいくつ?」

蒼扇が聞く

「28だ」

「おお!おとなー!」

「って お前も もうだいたい大人だろ!19に20に杏は21!」

一霞と凪が突っ込む そこへ・・

バシッ!

一霞の頭を軽く叩く杏・・

「ってぇ!」

どうやら 彼女が一番年上らしい・・

「ガハハハ!」

そして また そこで 笑いが起きた・・

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