【完結】まだ結婚しないの? 私から奪うくらい好きな相手でしょう?

横居花琉

文字の大きさ
上 下
3 / 3

後編

しおりを挟む
フローラがエリオットと婚約したことを知ったリリーは、嬉しそうに微笑みながら姉を祝福した。

「お姉さま、婚約おめでとう! エリオット様は素敵な方だし、きっと幸せになれるわね!」

フローラは彼女の言葉に感謝しつつも、リリーが本心から祝福してくれているのか信じられなかった。

「私もケイン様との結婚を進めているから私の方が先に幸せになるもの! 私はお姉さまに負けないわ!」

リリーは自信満々な様子で言った。

その強気な態度にフローラはいつも通りの妹だと逆に安心した。

「リリー、あなたが幸せになることを心から願っているわ。ケインがあなたを選んだのだから、きっと大丈夫よ」

フローラは思ってもいない言葉を口にした。
結婚の話が進んでいないことを把握しており、リリーが虚勢を張っているのだと知っていた。
このままでは彼女が幸せな結婚を迎えられるないのではないかと思っていたが、あえて口にするようなことはしない。





フローラとエリオットは結婚に向けて急いで準備を進めた。
忙しい日々が続き、様々な手続きや式の準備に追われながらも、彼らの心は幸せに満ちていた。
お互いの存在が支えとなり、結婚への期待が高まっていった。

そして、ついに二人は無事に結婚式を迎えた。
晴れ渡る空の下、家族や友人たちに囲まれながら誓いを交わす瞬間はフローラにとって特別な思い出となった。
エリオットの優しい眼差しと、彼が自分を愛していることを実感しながら、彼女は幸せな未来を描いていた。

「お姉さま、結婚おめでとう……」

リリーは二人の結婚を不機嫌そうに祝福した。

「リリー、どうしたの? 私たちのこと、祝ってくれているのよね?」

フローラは優しく尋ねたが、リリーの表情は変わらなかった。

「もちろん祝っているわ。でも……私も早く結婚したいのに、ケイン様が乗り気でないの」

やはりそうなったかとフローラは思った。
しかしそれもリリーが選んだことの結果だ。
ケインが結婚に乗り気でないことはリリーも知っていたはずだ。
そのことをあえて指摘するつもりもない。

「リリー、焦らずに待てばきっと良い結果が待っているわ。あなたも幸せになれる日が来ると思う」

結局、社交辞令のような言葉を選んだ。

リリーは不満そうな表情を隠そうともしなかった。





「ケイン、私たちも早く結婚しようよ」

リリーはケインに会うなり要望を伝えた。

ケインは不愉快そうに彼女を見つめた。

「結婚……? まだそんなことを考える時期じゃないと思う」

「でも、私たちは婚約しているんだから結婚を考えるのは当然じゃない?」

ケインはため息をついた。

「結婚に対する考え方が俺とは違うみたいだな。まだ準備が整っていないんだ。理解してくれよ」

結婚を先延ばしする考えを変えないケインに、リリーは怒りがこみ上げてきた。

「何を言っているの? 私たちの関係をどう考えているの? こんなに待っているのに結婚する気がないなんて……」

「そんなに不満なら婚約を破棄しても構わないよ。あ、でも無理だよな。これは家と家の取り決めでもあるから」

ケインの言葉はリリーを馬鹿にするような響きがあった。

リリーはその場で言葉を失った。
彼の態度は愛している人へのものではない。
つまり、リリーはケインから愛されていないということだ。

「どうしてそんなことを言うの?」

「俺はまだ結婚を考えていない。それは譲れないことだ。婚約関係もどうにもならな。現状を受け入れるんだな」

ケインは無情にも言い放った。

リリーは彼の言葉に心が折れそうになった。
婚約破棄ができない以上、不本意ながら彼の言葉を受け入れるしかなかった。

「……わかったわ」





リリーが両親と一緒に食卓を囲んでいるときのことだ。

「結婚はまだか?」

父親の言葉に、リリーは胸が苦しくなった。

「実は……ケイン様が結婚に乗り気ではないの」

リリーは躊躇いながらも真実を打ち明けた。
両親は驚くこともなかった。

「少し進展があってもいい頃じゃないか? 結婚に乗り気ではないことは理解していて選んだのだろう? 今まで何をしていたんだ?」

父親の容赦のない言葉にリリーの心は傷つき追い込まれていく。
父親の指摘は事実だった。
しかしここまで結婚に消極的だとは考えていなかった。

彼女は自分の選択を後悔した。
ケインを奪うようにしたことは間違っていたと思った。
それでもこの関係を終わらせることはできないことも理解している。

リリーは自分の未来がどうなるのか、ますます不透明になっていくのを感じていた。





数ヶ月後、フローラは用事があって実家へ行くことになった。

実家に着くと両親は温かく迎えてくれたが、リリーは元気がない様子だった。
ケインとの関係が上手くいっていないから元気がないのだろうとフローラは考えた。

「まだ結婚しないの? 私から奪うくらい好きな相手でしょう?」

フローラはリリーに優しく微笑みかけ、思わず言ってしまった。

その瞬間、リリーの表情が変わった。
彼女は感情が高ぶり、涙をためながら叫び出した。

「結婚はまだなの! ケインが全然乗り気じゃないのよ! 私、もう我慢できない!」

「ケインが結婚に消極的だと分かっていて奪ったのでしょう?」

事実を告げられリリーはますます取り乱す。

「こうなるとは思わなかったの! こうなると分かっていれば奪わなかったわよ!」

「そう言っても過去は変えられないわ。今になって何を言っても無駄よ。それよりもこれからのことを考えるべきよ」

「無理なの! ケインは相変わらずだし、婚約は破棄できないし……。私、どうすればいいの?」

リリーは縋りつくような思いでフローラに尋ねた。

「どうにもできなかった私では何も言えないわ。奪ってくれる人でも出てこない限り、どうにもならないんじゃないの?」

リリーはケインを奪ってくれるような人を求めることにした。
自分のように愚かな人がいれば自分は救われる。
その考えに悲しくなり、希望を抱けないことでますます悲しくなった。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

【完結】初恋の人も婚約者も妹に奪われました

紫崎 藍華
恋愛
ジュリアナは婚約者のマーキースから妹のマリアンことが好きだと打ち明けられた。 幼い頃、初恋の相手を妹に奪われ、そして今、婚約者まで奪われたのだ。 ジュリアナはマーキースからの婚約破棄を受け入れた。 奪うほうも奪われるほうも幸せになれるはずがないと考えれば未練なんてあるはずもなかった。

私から略奪婚した妹が泣いて帰って来たけど全力で無視します。大公様との結婚準備で忙しい~忙しいぃ~♪

百谷シカ
恋愛
身勝手な理由で泣いて帰ってきた妹エセル。 でも、この子、私から婚約者を奪っておいて、どの面下げて帰ってきたのだろう。 誰も構ってくれない、慰めてくれないと泣き喚くエセル。 両親はひたすらに妹をスルー。 「お黙りなさい、エセル。今はヘレンの結婚準備で忙しいの!」 「お姉様なんかほっとけばいいじゃない!!」 無理よ。 だって私、大公様の妻になるんだもの。 大忙しよ。

【完結】他人に優しい婚約者ですが、私だけ例外のようです

白草まる
恋愛
婚約者を放置してでも他人に優しく振る舞うダニーロ。 それを不満に思いつつも簡単には婚約関係を解消できず諦めかけていたマルレーネ。 二人が参加したパーティーで見知らぬ令嬢がマルレーネへと声をかけてきた。 「単刀直入に言います。ダニーロ様と別れてください」

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?

ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。 レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。 アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。 ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。 そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。 上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。 「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ

水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。 ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。 なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。 アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。 ※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います ☆HOTランキング20位(2021.6.21) 感謝です*.* HOTランキング5位(2021.6.22)

処理中です...