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中編
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アレックスは牢獄に行くと、そこにはパトリシアが力なく座っている姿があった。
彼の心は愛する彼女を見つけた安堵と、彼女の苦境に対する怒りでいっぱいだった。
パトリシアは彼を見て力なく笑顔を浮かべた。
「アレックス、来てくれたのね」
「パトリシア、君が無実であることを信じている。国王には抗議したけれど反応は良くなかった。だが諦めたりはしない。何とかして君を助ける」
彼の存在が彼女にとって救いだった。
その彼が助けると言うのだから信じて待つしかない。
「私のことを信じてくれてありがとう。でも、私がここにいるのは、エミリーの陰謀に決まっているわ。そうとしか考えられないもの」
「エミリーか……。実は同じことを考えていたんだ。彼女であれば誰よりもパトリシアに詳しい。その彼女がパトリシアに嘘の罪を着せたと考えれば理解はできる」
「私も同じことを考えていたわ。もしかしたら証拠も捏造しているかも」
アレックスは少し考え込んだ。
「エミリーならやり兼ねないな。それにしてもそこまで酷いとは思わなかった」
「エミリーは私の婚約を破棄させあなたを手に入れようとしているのかも。私が有罪にでもなれば婚約破棄されるでしょう? そこに公爵家の影響力をちらつかせてあなたとの婚約を持ち込もうとしているに違いないわ」
アレックスは彼女の言葉にショックを受けた。
エミリーがそのような理由でパトリシアを卑劣な手段で陥れたことが許せなかった。
「そんなことを許すわけにはいかない。エミリーがそこまでするならこちらも覚悟を決めるしかないな」
アレックスは決心した。
「でも、気をつけて。エミリーは何をするか分からないわ。彼女を侮ってはいけないわ」
「心配しないで、パトリシア。君の無実を証明するさ」
アレックスはパトリシアをしっかりと見た。
そこに決意と愛があることをパトリシアは感じ取った。
二人は別れを惜しみながらも、無実を証明するためにアレックスは牢獄を後にした。
パトリシアは自分の無力さを痛感していた。
彼が自分を助けるために奮闘しようとしている姿に深い感動を覚えつつも、何もできない自分が情けないと感じていた。
「アレックス、あなたが私のためにこんなにも尽くしてくれることが本当に嬉しい。でも、私には何もできない……。ただここで待つだけの存在なのが情けないわ……」
パトリシアは心の奥からこみ上げる感情を抑えきれず、涙を浮かべた。
今の彼女にできることは少ない。
「どうか、アレックスが無事でありますように。彼が私を助けるために、危険な目に遭うことがありませんように」
パトリシアはアレックスの無事を祈った。
愛と感謝を込め、彼の身を案じた。
アレックスはパトリシアを救うために手段を選ばないと覚悟を決めた。
彼女の無実を証明するためには、エミリーの陰謀を暴く必要があると理解していた。
そのために必要な第一歩を、彼は速やかに実行に移した。
アレックスはエミリーを呼び出した。
エミリーはアレックスが婚約の件で話があるのだろうと心を弾ませて指定された部屋へ向かった。
部屋の中にはアレックスが一人待っていた。
「考えが変わったの?」
エミリーは自分の思い通りになったと信じ、アレックスに愚かな判断を後悔したかという気持ちを込めて尋ねた。
「考えか……。確かに私は間違っていた。だからもう間違えない。覚悟を決めたんだ」
アレックスは真剣な表情だったが、エミリーは違和感を覚えた。
彼の考えが読めなかった。
少なくとも自分が想像していたものとは違うことだけは察した。
その時だった。
部屋に近衛兵が雪崩れ込んできたのだ。
「な、何よ!? どうしたっていうの!?」
まさかの事態にエミリーは混乱した。
近衛兵はエミリーを逃がさないよう取り囲んだ。
困惑するエミリーにアレックスは侮蔑の視線を投げかけた。
「エミリー、君の身柄を拘束する。罪状は内乱を誘発しようとした罪だ」
「ま、待って! 何かの誤解よ! 私はそんなことしていないもの!」
「そうか。ならば証拠がないか調べないとな。その間に自由にさせてしまえば証拠を隠滅する恐れがある。しばらくは牢屋にでも入っていろ」
今までのアレックスの態度からは考えられないような暴挙にエミリーは呆然とした。
「……私が何をしたというの? 冤罪よ!」
「そうか、私は冤罪で投獄された人を知っている。どうやら証言一つでそのような罪に問われたようだ。ならば私の考え一つで投獄すると決めても問題ないだろう?」
「横暴よ! そんなこと認められないわ!」
「残念だが前例がある。諦めるんだな」
「嘘よ! こんなの受け入れられないわ! 国王陛下は何をしているの!? 私が何をしたというのよ!?」
喚くエミリーにアレックスは冷静に告げた。
「お前が国王に事実無根のパトリシアの反乱を告げ口したことが問題だ。そんなことも理解できないのか?」
「私がそうしたという証拠がない限り、ただの妄想よ。あなたには何もできないわ」
エミリーは無理に余裕を装うとしたができなかった。
明らかに動揺していた。
「もういいだろう。投獄しろ」
「はっ!」
近衛兵はエミリーを連行し牢屋へと連れていこうとした。
「アレックス、待って! 考え直して!」
エミリーは必死に叫んだがアレックスは無視した。
彼女は投獄されてからも叫んだが無駄だった。
アレックスはエミリーが投獄されたことで邪魔されずに彼女の自室や関係者を調べることができた。
これは公爵の許可を得てのものだ。
公爵はパトリシアの無実を信じていたが、国王の決めた判断に異議を唱えられなかったのだ。
多くの人員を投入しての調査だったが、アレックスが思った以上に苦戦することになった。
エミリーの部屋からはパトリシアを陥れるための手がかりや証拠が一切見つからなかった。
アレックスは焦りを感じ始めた。
「エミリーは巧妙だ。彼女は証拠を隠すために何か手を打っているのかもしれない。もっと違う場所も含めて探せ」
彼は指示を出したが焦りは消えなかった。
その後、アレックスはエミリーの関係者や、彼女と接触していた者たちにも目を向けた。
彼は、彼らに話を聞き、エミリーがどのようにパトリシアを陥れようとしていたのかを探ろうとした。
しかし、関係者たちの口から有力な証言は得られなかった。
アレックスは焦燥感を抱えながら自分の思考を整理した。
何度も考え直す中で彼は気づいた。
パトリシアが反乱を企てたという証拠は一切存在しない。
もし証拠がないなら、それはパトリシアは反乱なんて企てていないという証拠だと。
冤罪であるという証明だ。
「これでどうにかできるな」
アレックスは調査結果を国王に報告しなくてはならないと考えた。
そうすればパトリシアの無実を明らかにできると信じていた。
彼の心は愛する彼女を見つけた安堵と、彼女の苦境に対する怒りでいっぱいだった。
パトリシアは彼を見て力なく笑顔を浮かべた。
「アレックス、来てくれたのね」
「パトリシア、君が無実であることを信じている。国王には抗議したけれど反応は良くなかった。だが諦めたりはしない。何とかして君を助ける」
彼の存在が彼女にとって救いだった。
その彼が助けると言うのだから信じて待つしかない。
「私のことを信じてくれてありがとう。でも、私がここにいるのは、エミリーの陰謀に決まっているわ。そうとしか考えられないもの」
「エミリーか……。実は同じことを考えていたんだ。彼女であれば誰よりもパトリシアに詳しい。その彼女がパトリシアに嘘の罪を着せたと考えれば理解はできる」
「私も同じことを考えていたわ。もしかしたら証拠も捏造しているかも」
アレックスは少し考え込んだ。
「エミリーならやり兼ねないな。それにしてもそこまで酷いとは思わなかった」
「エミリーは私の婚約を破棄させあなたを手に入れようとしているのかも。私が有罪にでもなれば婚約破棄されるでしょう? そこに公爵家の影響力をちらつかせてあなたとの婚約を持ち込もうとしているに違いないわ」
アレックスは彼女の言葉にショックを受けた。
エミリーがそのような理由でパトリシアを卑劣な手段で陥れたことが許せなかった。
「そんなことを許すわけにはいかない。エミリーがそこまでするならこちらも覚悟を決めるしかないな」
アレックスは決心した。
「でも、気をつけて。エミリーは何をするか分からないわ。彼女を侮ってはいけないわ」
「心配しないで、パトリシア。君の無実を証明するさ」
アレックスはパトリシアをしっかりと見た。
そこに決意と愛があることをパトリシアは感じ取った。
二人は別れを惜しみながらも、無実を証明するためにアレックスは牢獄を後にした。
パトリシアは自分の無力さを痛感していた。
彼が自分を助けるために奮闘しようとしている姿に深い感動を覚えつつも、何もできない自分が情けないと感じていた。
「アレックス、あなたが私のためにこんなにも尽くしてくれることが本当に嬉しい。でも、私には何もできない……。ただここで待つだけの存在なのが情けないわ……」
パトリシアは心の奥からこみ上げる感情を抑えきれず、涙を浮かべた。
今の彼女にできることは少ない。
「どうか、アレックスが無事でありますように。彼が私を助けるために、危険な目に遭うことがありませんように」
パトリシアはアレックスの無事を祈った。
愛と感謝を込め、彼の身を案じた。
アレックスはパトリシアを救うために手段を選ばないと覚悟を決めた。
彼女の無実を証明するためには、エミリーの陰謀を暴く必要があると理解していた。
そのために必要な第一歩を、彼は速やかに実行に移した。
アレックスはエミリーを呼び出した。
エミリーはアレックスが婚約の件で話があるのだろうと心を弾ませて指定された部屋へ向かった。
部屋の中にはアレックスが一人待っていた。
「考えが変わったの?」
エミリーは自分の思い通りになったと信じ、アレックスに愚かな判断を後悔したかという気持ちを込めて尋ねた。
「考えか……。確かに私は間違っていた。だからもう間違えない。覚悟を決めたんだ」
アレックスは真剣な表情だったが、エミリーは違和感を覚えた。
彼の考えが読めなかった。
少なくとも自分が想像していたものとは違うことだけは察した。
その時だった。
部屋に近衛兵が雪崩れ込んできたのだ。
「な、何よ!? どうしたっていうの!?」
まさかの事態にエミリーは混乱した。
近衛兵はエミリーを逃がさないよう取り囲んだ。
困惑するエミリーにアレックスは侮蔑の視線を投げかけた。
「エミリー、君の身柄を拘束する。罪状は内乱を誘発しようとした罪だ」
「ま、待って! 何かの誤解よ! 私はそんなことしていないもの!」
「そうか。ならば証拠がないか調べないとな。その間に自由にさせてしまえば証拠を隠滅する恐れがある。しばらくは牢屋にでも入っていろ」
今までのアレックスの態度からは考えられないような暴挙にエミリーは呆然とした。
「……私が何をしたというの? 冤罪よ!」
「そうか、私は冤罪で投獄された人を知っている。どうやら証言一つでそのような罪に問われたようだ。ならば私の考え一つで投獄すると決めても問題ないだろう?」
「横暴よ! そんなこと認められないわ!」
「残念だが前例がある。諦めるんだな」
「嘘よ! こんなの受け入れられないわ! 国王陛下は何をしているの!? 私が何をしたというのよ!?」
喚くエミリーにアレックスは冷静に告げた。
「お前が国王に事実無根のパトリシアの反乱を告げ口したことが問題だ。そんなことも理解できないのか?」
「私がそうしたという証拠がない限り、ただの妄想よ。あなたには何もできないわ」
エミリーは無理に余裕を装うとしたができなかった。
明らかに動揺していた。
「もういいだろう。投獄しろ」
「はっ!」
近衛兵はエミリーを連行し牢屋へと連れていこうとした。
「アレックス、待って! 考え直して!」
エミリーは必死に叫んだがアレックスは無視した。
彼女は投獄されてからも叫んだが無駄だった。
アレックスはエミリーが投獄されたことで邪魔されずに彼女の自室や関係者を調べることができた。
これは公爵の許可を得てのものだ。
公爵はパトリシアの無実を信じていたが、国王の決めた判断に異議を唱えられなかったのだ。
多くの人員を投入しての調査だったが、アレックスが思った以上に苦戦することになった。
エミリーの部屋からはパトリシアを陥れるための手がかりや証拠が一切見つからなかった。
アレックスは焦りを感じ始めた。
「エミリーは巧妙だ。彼女は証拠を隠すために何か手を打っているのかもしれない。もっと違う場所も含めて探せ」
彼は指示を出したが焦りは消えなかった。
その後、アレックスはエミリーの関係者や、彼女と接触していた者たちにも目を向けた。
彼は、彼らに話を聞き、エミリーがどのようにパトリシアを陥れようとしていたのかを探ろうとした。
しかし、関係者たちの口から有力な証言は得られなかった。
アレックスは焦燥感を抱えながら自分の思考を整理した。
何度も考え直す中で彼は気づいた。
パトリシアが反乱を企てたという証拠は一切存在しない。
もし証拠がないなら、それはパトリシアは反乱なんて企てていないという証拠だと。
冤罪であるという証明だ。
「これでどうにかできるな」
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