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第四夜:角部屋の女霊
悲恋メモリーズ
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「……ありがとう、幽霊さん」
こちらの提案に乗っかってきてくれて、まず何よりもホッとしたというのが正直なところだ。
もし話し合いが決裂していた場合は――強引に追い出すしか、打つ手はなくなっていただろう。塩を撒く、あるいは神社からお札を貰ってきて張る。何通りか方法は考えていた。しかしそれは、危険を伴う諸刃の剣でもある。
七瀬も渚も、幽霊は見えるだけ。観測は出来ても触れることは出来ない。逆に、力のある幽霊ならば物体に干渉してこれる。
そんな状況で幽霊と戦うのは、自殺行為もいいところなのだ。着のみ着のままで猛獣を組み伏せようとするのを想像してもらえればいい。追い出せないどころか、こちらにまで被害が及ぶ。
絶対に襲って来ないという保証でもあれば、話は別なのだが。
「えっとじゃあ、そうだね……何から訊くべきかな」
さて。
無事に話の切っ掛けを得たはいいが、どこから切り出したものか。
最初から本題に切り込んでいくのは、いささか性急だろうか? まずは、今日の夜中にあったことを尋ねてみるのが無難かもしれない。しかし下手なことを訊けば、逆に幽霊を刺激してしまうかもしれず――。
緊張のせいか上手く頭が回らず、余計に焦りが募っていく。
「先輩」
「うん?」
「こういう時には、まず名前を言えばいいんじゃないかと思います」
「それもそうだね。渚ちゃんありがとう」
じっと動かず佇んでいる幽霊に、七瀬は自分の名字を告げた。フルネームで教えなかったのは、そうするべきだという直感が働いたからだ。
意味も無く敵対する気はないのだが、警戒を完全に解くにはまだ早すぎる。
「……じゃあ、幽霊さん。僕たちは貴女をどう呼べばいいかな」
『……』
黙ったままの幽霊に、七瀬と渚が顔を見合わせる。語る名前が無い? 流石にそんなことはないだろう。
「もしかして、喋れないんですか?」
渚の問いかけに対して、幽霊は大きく首を縦に振った。それを見た部長が、怪訝な様子で呟く。
「……おかしいな。あの時は、確かに何かを言ってたような気がするんだが……」
「部長?」
「ん? ああ、何でもない。続けてくれ」
「はい。……でも、これからどうしよう」
話が通じないことは予想していたが、喋れないとまでは思ってもいなかった。
言葉を発せられないのならば、幽霊の話を“聞く”ことは不可能になる。その未練の正体も、此処にいる理由も分からぬまま。
勿論、こちらから語りかけることは可能だ。だがそんな一方通行気味に諭されても、よし成仏しようとはならないだろう。
「とりあえず……座ろうか?」
すぐには片が付きそうにないので、一先ずひとまず腰を落ち着けることにする。
七瀬が手振りで示すと、幽霊は大人しくそれに従った。後ろにいる二人もおそるおそるといった具合で続く。
床に敷かれた灰黄緑色の絨毯は、部屋の空気と同じようにひんやりとしていた。今は夏だったが、その冷たさは、あまり心地よく感じれなかった。七瀬は肩から下げていたショルダーバッグを外して、自身へ立て掛けるように置いた。
「困りましたね、先輩。助けになりたいと言っても、これだと何も出来ないままです。何か、幽霊さんと意思の疎通が出来るいい方法があればいいんですけど……」
「筆談とか……いやでも、流石に難しいかな」
強い幽霊ならば、物体に干渉するのも不可能ではない。ポルターガイスト現象がいい例だ。
しかしそうは言っても、皿を飛ばすのとペンで文字を書くのとでは難易度の次元が違い過ぎている。少なくとも七瀬は、そんなことが出来る幽霊をこれまでに見たことがない。
他に思いつくのは手話ぐらいだが、手話の心得など、七瀬たちにあろう筈もなく。
力になれると宣言したはいいものの、早々に手詰まり感が漂い始めた。
他人と交流をするために必ずしも言葉は必要でない、とは言うが。それにしたって会話が出来るのと出来ないのとでは、意思疎通の難しさに雲泥の差がある。
特に今回は幽霊の側から情報を発信するため、幽霊が喋れないのは致命的なのだ。
幽霊が自身の片腕を不意に持ち上げたのは、七瀬が頭を悩ませていた、まさにその時だった。
丁度、彼女の記憶の一部を見せられた時と同じような仕草で、手の平をこちらに向けて突き出してくる。
「……ああ、なるほど」
その動作が表わす意味には、すぐに合点がいった。
「“直接”教えてくれるってことだね」
銅線の中に電流を流すように、重なった箇所を通じて情報をそのまま送り込むということだ。あるいは共有すると言ってもいい。
霊感のある人間にしか出来ない芸当だが、七瀬も渚も、それについては持ち合わせがある。
ならば、一番手っ取り早くて正確なこの方法を、試さない手はなかった。
「幽霊さんと手を合わせて、記憶そのものを見せてもらうってことですね」
「うん。さっきみたいに直接触れなくても、重なっていれば繋がることは出来るようだし」
「……でしたら、私も御一緒させてください」
「渚ちゃんも?」
「はい。先輩が幽霊さんと繋がっているときに、万が一何かあってはいけません。でも二人でなら、多分大丈夫です。二人同時には幽霊も取り憑けません。それに、どちらかが危なくなったときには、もう一人が助けられますから」
「……言いたいことは分かったよ。でもそれだと、渚ちゃんが危ない目に合うかもしれないじゃないか」
「同じ台詞を、そっくりそのままお返ししますよ、先輩。……あと、実は他にも理由があって」
渚は声を落とすと、七瀬の耳元に顔を寄せて来た。
きっと、幽霊には聞かせたくない内容なのだろう。目線は幽霊に向けたまま、七瀬は意識だけを渚へと傾ける。
「何だか嫌な予感がしているんです」
「嫌な予感……って?」
「先輩一人だけを幽霊さんに向かわせたら、大変な事になりそうな……。どうしてこんな風に感じるのか、自分でも分からないんですけど」
虫のしらせ、という言葉が頭に思い浮かんだ。
こういう状況で一番頼りになるのは、理屈ではなく直感だ。七瀬も重々承知している。故に、渚が悪い予感を覚えていることは、無視できない事実だった。その分警戒して事に臨むべきなのだろう。
だが仮に危険があるとしても、結局は誰かがやらねばならない事だ。そうしないといつまでたっても、解決まで辿り着けない。
彼女の不安は心の片隅に留めておいて、心配してくれる気持ちだけ、ありがたく貰っておくことにする。元より警戒を緩めるつもりなどないのだから。
「きっと、緊張しているせいだと思うよ」
「……だといいんですけど。それでも、先輩一人では行かせませんからね」
「そう。……本当にいいの? 僕と一緒に来てくれるってことで」
「当然です」
渚は力強く頷いてから、七瀬の肩に手を置いた。
冷え込んだ部屋にある中で。彼女と繋がっているそこだけが妙に温かい。そのぬくもりは、七瀬に少しばかりの安心を授けてくれる。
――いつも助けられてばかりだな。
そんな気持ちが無意識の内に、呟きとなってこぼれ出た。
「……ありがとう、渚ちゃん」
「先輩、今何か?」
「ううん。……じゃあ、行こうか」
応えるように渚の手に力がこもった。
七瀬が頷いて、指先を幽霊に近付けて行く。
互いのそれが重なった瞬間、体内を竜巻が駆け抜けるような感覚が腕を通して伝わってきた。首筋がそそけだつ。
渚の肩を掴む力がさらに強くなって、爪が肌にたてられる。彼女も同じものを受け取っているのだろう。
刹那、視界が暗転した。あっと思う間もなく再び光が戻る。そこに広がっていたのは、周りを建物に囲まれた、中庭らしき場所の光景だった。
※
映画を観ているようだ、とでも言えばいいだろうか。予め決まった情景を、頭の中に直接注ぎ込まれている感覚だ。
木製のベンチには、女性が一人腰掛けていて、何かを待ちかねた様子で辺りを見渡している。若い女性だ。楽しみな事でもあるのだろう。隠しきれない心中の喜びが、彼女の口元を自然と弛ませている。
その女性に、背後から忍び足で近寄る影があった。それは気付かれないまま女性の近くまで辿り着くと、そのまま両手でサッと女性の視界を覆ってしまう。そして甘い声でこう囁く。
『だーれだ?』
『……声で丸分かりよ。あなたでしょう』
そのやり取りは、恋人どうしだけに許された特権みたいなものだ。
重ねられた両手を、女性は優しい手付きで取り払った。後ろに向き直ればそこにいるのは、テニスサークルにでも入っていそうな、爽やか系の男性だ。
二人は蕩けるような視線を交わして数秒間見つめあった後、照れくさげな笑みを同時に浮かべた。
『ほら。やっぱり、――さんだった』
女性が言った。男性の名前も確かに口にした筈だったが、その部分だけ搔き消されたかのように、傍観している七瀬には聞き取れない。
肝心な所なのに……と、眉をひそめていたその時。
「……い、――七瀬先輩。聞こえますか」
どこからか、自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
「――渚ちゃん?」
虚空に向けて声の主の名前を呼べば、ちゃんと相手に届いていたようで、安堵に満ちた応えが返ってくる。
「先輩……! よかった、大丈夫ですか」
そちらに意識を向けると、渚の声もよりはっきりとしたものになった。
声は映像と同じく、耳で聞いているのではなくて、直接頭の中まで流れ込んでくる。実際に経験したことは無いが、もしテレパシーを受けたらきっとこんな感じだろう。
「大丈夫だよ。今は……仲のいい恋人たちの姿を見せられてる。女の人はベンチに座ってて……」
「後ろから男の人がイタズラをしたんですよね。私も、先輩と同じものを見ているみたいです」
「そうらしいね。まあそこまではいいとして……こうやって話が出来てるのは、どういう訳なんだろう。」
この言葉だって、実際の世界で口にしている訳では無い……と思う。
今、二人は意識下の世界にいる訳だが、そこでの動作は凡そ現実に反映されない筈である。聞き慣れた表現を使うなら、“夢を見ている”ようなものだ。
「……こんなこと言うと魔法みたいだけど、意識を共有してるって感じかな?」
「二人で一緒に、一つの映画を観ている……ようなものでしょうか」
「映画、か。その喩えいいね。……じゃあ、そろそろ今見ているものの話に戻るけど」
渚と話している間にも、目の前では恋人同士が愛を語らい――もとい、イチャイチャしていた。半ば強制的に観覧させられている状況ではあるのだが、それでも、他人の一番プライベートな部分を覗き込んでいるようで、背徳感と後ろめたさを覚えてしまう。
「あの女性は、幽霊さんが生きていたころの姿でしょうか」
「多分その筈だよね。他に誰がいるのっていう話だし。そうすると、隣にいる男の人は彼女の彼氏さんってことになるのかな。……っと、何だい? これ」
途端に世界がとろけ始めた。周りに見えている人間から地面に至るまで、全てが各々の形を失い、崩れて、一体となる。かと思えばその傍から、新たな物体が生えてきてまた別の景色を作り上げた。思考の世界で起きていることとはいえ、人の理解を超えた光景に頭痛がした。
“映画を見ているよう”と渚が言っていたが、これはハリウッドのCGよりもリアルだ。
目の前に新しく出来上がったのは、お洒落な喫茶店のような空間だった。
さっきと同じ二人が窓際の席に向かい合わせで座っている。だがそこに漂う雰囲気は一転、幸福感からはかけ離れていた。
原因は――机の上に並べられた写真を見ればおよそ想像がつく。男性と仲良く寄り添って歩く、別の女性の姿がそこには映っていたのだ。
その女性は、男性の腕をしがみつくようにして掴んでいた。腰の高さで指と指とが密接に絡み合っている。女性は身体を気持ちばかり男性の方へ傾けて、上目づかいで何かを言っているようだった。傍から見ればわざとらしい振る舞いだが、当の男性はまんざらでもない様子で頬を緩めている。
“媚びる”。そんな言葉が、ふと脳裏に浮かんできた。
「男の方が浮気をしていた……?」
七瀬の言葉を肯定するがごとく、女性は怒りに満ちた表情でパートナーを問い詰め始める。
『――ねえ、説明してよ』
『何をだよ……』
『とぼけないで、この女は誰なの』
『……ただの後輩だよ、同じサークルのな。ったく、ちょっと一緒に出掛けたくらいだ。そんな怒らなくてもいいだろ』
男の返事は歯切れの悪いものだった。やましさを覆い隠したいのか、目線を反らし、頻繁に瞬きをしている。
『“ちょっと一緒に出掛けたくらい”? にしてはやけに仲が良さそうじゃない。その後輩とかと、こんな風にくっついて歩いてる』
『何が言いたいんだ』
『もう分かってるでしょ? 貴方はこの女と浮気してる――、違う?』
『――ああそうだ。前々から思ってたんだけど、お前はいっつも重たいんだよ。一緒にいて疲れる』
舌打ちの後、男は冷淡にそう言い放った。
『重すぎるってなんなのよ! わたしはただ、貴方のことが好きなだけで――』
『――だから、そういうところだって。……もううんざりだ、別れさせてもらう』
『え……ねえちょっと待ってよ、嘘でしょ?』
『悪いな、美沙』
そのまま席を立つと、男は振り返ることもせずに歩き去っていく。最後に彼の口から発せられた女性の名前には、到底愛情など込められていない。
美沙という名前の女性は、戸惑いながら、それでも遠ざかる恋人に対して手を伸ばした。だがそれは、何も無い所を虚しく掻いてから、握り拳となって机に叩きつけられた。
その上には一枚の写真がある。今しがたまで恋人だった男が、楽しげに女性と歩いている光景を映した一枚の写真が。二人が浮かべているのはまぎれもない笑顔だったが、他人から奪い取って得た幸せを祝福することなど、七瀬にはどだい無理な話だった。
再び世界が再構築された。
今度出来上がったのはどこかの情景ではなく、ただただ真っ暗闇の空間だった。
中心には、四肢を力無く垂らした女性の身体が、どこからか伸びている縄に吊り下がっている。鋭利な刃物で切りつけた跡が、幾筋もその手首に見受けられた。
警察ではない七瀬にもありありと分かる。恋人と破局した後、彼女は自ら命を絶ったのだ。
最初は手首を切ることで死ぬつもりだったのだろう。だがそれは、おそらく上手くいかなかった。動脈を切るのは難しいと聞くし、あるいは、絶望の中わずかに残っていた生きたいという思いが、寸前で無意識の内に、邪魔をしていたのかもしれない。
結果、この美沙という女性は、首を吊ってその人生に幕を降ろした。
そう、七瀬が結論づけた時。
『…………い』
周囲の空間から声が聞こえた。
『……い。……ない』
小さすぎて、何を言っているのかまでは分からない。
すると死体はそれを察知したかのように、吊られたままの体勢で平行移動をして、すぅーとこちらへ近づいてきた。顔が起き上がり、紅く染まった眼球が露わになる。
壊れたビデオテープのように、一つの言葉が四方八方から、何度も何度も聞こえてくる。
許さない。
許さない。
許さないゆるさないユルサナイ…………
こちらの提案に乗っかってきてくれて、まず何よりもホッとしたというのが正直なところだ。
もし話し合いが決裂していた場合は――強引に追い出すしか、打つ手はなくなっていただろう。塩を撒く、あるいは神社からお札を貰ってきて張る。何通りか方法は考えていた。しかしそれは、危険を伴う諸刃の剣でもある。
七瀬も渚も、幽霊は見えるだけ。観測は出来ても触れることは出来ない。逆に、力のある幽霊ならば物体に干渉してこれる。
そんな状況で幽霊と戦うのは、自殺行為もいいところなのだ。着のみ着のままで猛獣を組み伏せようとするのを想像してもらえればいい。追い出せないどころか、こちらにまで被害が及ぶ。
絶対に襲って来ないという保証でもあれば、話は別なのだが。
「えっとじゃあ、そうだね……何から訊くべきかな」
さて。
無事に話の切っ掛けを得たはいいが、どこから切り出したものか。
最初から本題に切り込んでいくのは、いささか性急だろうか? まずは、今日の夜中にあったことを尋ねてみるのが無難かもしれない。しかし下手なことを訊けば、逆に幽霊を刺激してしまうかもしれず――。
緊張のせいか上手く頭が回らず、余計に焦りが募っていく。
「先輩」
「うん?」
「こういう時には、まず名前を言えばいいんじゃないかと思います」
「それもそうだね。渚ちゃんありがとう」
じっと動かず佇んでいる幽霊に、七瀬は自分の名字を告げた。フルネームで教えなかったのは、そうするべきだという直感が働いたからだ。
意味も無く敵対する気はないのだが、警戒を完全に解くにはまだ早すぎる。
「……じゃあ、幽霊さん。僕たちは貴女をどう呼べばいいかな」
『……』
黙ったままの幽霊に、七瀬と渚が顔を見合わせる。語る名前が無い? 流石にそんなことはないだろう。
「もしかして、喋れないんですか?」
渚の問いかけに対して、幽霊は大きく首を縦に振った。それを見た部長が、怪訝な様子で呟く。
「……おかしいな。あの時は、確かに何かを言ってたような気がするんだが……」
「部長?」
「ん? ああ、何でもない。続けてくれ」
「はい。……でも、これからどうしよう」
話が通じないことは予想していたが、喋れないとまでは思ってもいなかった。
言葉を発せられないのならば、幽霊の話を“聞く”ことは不可能になる。その未練の正体も、此処にいる理由も分からぬまま。
勿論、こちらから語りかけることは可能だ。だがそんな一方通行気味に諭されても、よし成仏しようとはならないだろう。
「とりあえず……座ろうか?」
すぐには片が付きそうにないので、一先ずひとまず腰を落ち着けることにする。
七瀬が手振りで示すと、幽霊は大人しくそれに従った。後ろにいる二人もおそるおそるといった具合で続く。
床に敷かれた灰黄緑色の絨毯は、部屋の空気と同じようにひんやりとしていた。今は夏だったが、その冷たさは、あまり心地よく感じれなかった。七瀬は肩から下げていたショルダーバッグを外して、自身へ立て掛けるように置いた。
「困りましたね、先輩。助けになりたいと言っても、これだと何も出来ないままです。何か、幽霊さんと意思の疎通が出来るいい方法があればいいんですけど……」
「筆談とか……いやでも、流石に難しいかな」
強い幽霊ならば、物体に干渉するのも不可能ではない。ポルターガイスト現象がいい例だ。
しかしそうは言っても、皿を飛ばすのとペンで文字を書くのとでは難易度の次元が違い過ぎている。少なくとも七瀬は、そんなことが出来る幽霊をこれまでに見たことがない。
他に思いつくのは手話ぐらいだが、手話の心得など、七瀬たちにあろう筈もなく。
力になれると宣言したはいいものの、早々に手詰まり感が漂い始めた。
他人と交流をするために必ずしも言葉は必要でない、とは言うが。それにしたって会話が出来るのと出来ないのとでは、意思疎通の難しさに雲泥の差がある。
特に今回は幽霊の側から情報を発信するため、幽霊が喋れないのは致命的なのだ。
幽霊が自身の片腕を不意に持ち上げたのは、七瀬が頭を悩ませていた、まさにその時だった。
丁度、彼女の記憶の一部を見せられた時と同じような仕草で、手の平をこちらに向けて突き出してくる。
「……ああ、なるほど」
その動作が表わす意味には、すぐに合点がいった。
「“直接”教えてくれるってことだね」
銅線の中に電流を流すように、重なった箇所を通じて情報をそのまま送り込むということだ。あるいは共有すると言ってもいい。
霊感のある人間にしか出来ない芸当だが、七瀬も渚も、それについては持ち合わせがある。
ならば、一番手っ取り早くて正確なこの方法を、試さない手はなかった。
「幽霊さんと手を合わせて、記憶そのものを見せてもらうってことですね」
「うん。さっきみたいに直接触れなくても、重なっていれば繋がることは出来るようだし」
「……でしたら、私も御一緒させてください」
「渚ちゃんも?」
「はい。先輩が幽霊さんと繋がっているときに、万が一何かあってはいけません。でも二人でなら、多分大丈夫です。二人同時には幽霊も取り憑けません。それに、どちらかが危なくなったときには、もう一人が助けられますから」
「……言いたいことは分かったよ。でもそれだと、渚ちゃんが危ない目に合うかもしれないじゃないか」
「同じ台詞を、そっくりそのままお返ししますよ、先輩。……あと、実は他にも理由があって」
渚は声を落とすと、七瀬の耳元に顔を寄せて来た。
きっと、幽霊には聞かせたくない内容なのだろう。目線は幽霊に向けたまま、七瀬は意識だけを渚へと傾ける。
「何だか嫌な予感がしているんです」
「嫌な予感……って?」
「先輩一人だけを幽霊さんに向かわせたら、大変な事になりそうな……。どうしてこんな風に感じるのか、自分でも分からないんですけど」
虫のしらせ、という言葉が頭に思い浮かんだ。
こういう状況で一番頼りになるのは、理屈ではなく直感だ。七瀬も重々承知している。故に、渚が悪い予感を覚えていることは、無視できない事実だった。その分警戒して事に臨むべきなのだろう。
だが仮に危険があるとしても、結局は誰かがやらねばならない事だ。そうしないといつまでたっても、解決まで辿り着けない。
彼女の不安は心の片隅に留めておいて、心配してくれる気持ちだけ、ありがたく貰っておくことにする。元より警戒を緩めるつもりなどないのだから。
「きっと、緊張しているせいだと思うよ」
「……だといいんですけど。それでも、先輩一人では行かせませんからね」
「そう。……本当にいいの? 僕と一緒に来てくれるってことで」
「当然です」
渚は力強く頷いてから、七瀬の肩に手を置いた。
冷え込んだ部屋にある中で。彼女と繋がっているそこだけが妙に温かい。そのぬくもりは、七瀬に少しばかりの安心を授けてくれる。
――いつも助けられてばかりだな。
そんな気持ちが無意識の内に、呟きとなってこぼれ出た。
「……ありがとう、渚ちゃん」
「先輩、今何か?」
「ううん。……じゃあ、行こうか」
応えるように渚の手に力がこもった。
七瀬が頷いて、指先を幽霊に近付けて行く。
互いのそれが重なった瞬間、体内を竜巻が駆け抜けるような感覚が腕を通して伝わってきた。首筋がそそけだつ。
渚の肩を掴む力がさらに強くなって、爪が肌にたてられる。彼女も同じものを受け取っているのだろう。
刹那、視界が暗転した。あっと思う間もなく再び光が戻る。そこに広がっていたのは、周りを建物に囲まれた、中庭らしき場所の光景だった。
※
映画を観ているようだ、とでも言えばいいだろうか。予め決まった情景を、頭の中に直接注ぎ込まれている感覚だ。
木製のベンチには、女性が一人腰掛けていて、何かを待ちかねた様子で辺りを見渡している。若い女性だ。楽しみな事でもあるのだろう。隠しきれない心中の喜びが、彼女の口元を自然と弛ませている。
その女性に、背後から忍び足で近寄る影があった。それは気付かれないまま女性の近くまで辿り着くと、そのまま両手でサッと女性の視界を覆ってしまう。そして甘い声でこう囁く。
『だーれだ?』
『……声で丸分かりよ。あなたでしょう』
そのやり取りは、恋人どうしだけに許された特権みたいなものだ。
重ねられた両手を、女性は優しい手付きで取り払った。後ろに向き直ればそこにいるのは、テニスサークルにでも入っていそうな、爽やか系の男性だ。
二人は蕩けるような視線を交わして数秒間見つめあった後、照れくさげな笑みを同時に浮かべた。
『ほら。やっぱり、――さんだった』
女性が言った。男性の名前も確かに口にした筈だったが、その部分だけ搔き消されたかのように、傍観している七瀬には聞き取れない。
肝心な所なのに……と、眉をひそめていたその時。
「……い、――七瀬先輩。聞こえますか」
どこからか、自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
「――渚ちゃん?」
虚空に向けて声の主の名前を呼べば、ちゃんと相手に届いていたようで、安堵に満ちた応えが返ってくる。
「先輩……! よかった、大丈夫ですか」
そちらに意識を向けると、渚の声もよりはっきりとしたものになった。
声は映像と同じく、耳で聞いているのではなくて、直接頭の中まで流れ込んでくる。実際に経験したことは無いが、もしテレパシーを受けたらきっとこんな感じだろう。
「大丈夫だよ。今は……仲のいい恋人たちの姿を見せられてる。女の人はベンチに座ってて……」
「後ろから男の人がイタズラをしたんですよね。私も、先輩と同じものを見ているみたいです」
「そうらしいね。まあそこまではいいとして……こうやって話が出来てるのは、どういう訳なんだろう。」
この言葉だって、実際の世界で口にしている訳では無い……と思う。
今、二人は意識下の世界にいる訳だが、そこでの動作は凡そ現実に反映されない筈である。聞き慣れた表現を使うなら、“夢を見ている”ようなものだ。
「……こんなこと言うと魔法みたいだけど、意識を共有してるって感じかな?」
「二人で一緒に、一つの映画を観ている……ようなものでしょうか」
「映画、か。その喩えいいね。……じゃあ、そろそろ今見ているものの話に戻るけど」
渚と話している間にも、目の前では恋人同士が愛を語らい――もとい、イチャイチャしていた。半ば強制的に観覧させられている状況ではあるのだが、それでも、他人の一番プライベートな部分を覗き込んでいるようで、背徳感と後ろめたさを覚えてしまう。
「あの女性は、幽霊さんが生きていたころの姿でしょうか」
「多分その筈だよね。他に誰がいるのっていう話だし。そうすると、隣にいる男の人は彼女の彼氏さんってことになるのかな。……っと、何だい? これ」
途端に世界がとろけ始めた。周りに見えている人間から地面に至るまで、全てが各々の形を失い、崩れて、一体となる。かと思えばその傍から、新たな物体が生えてきてまた別の景色を作り上げた。思考の世界で起きていることとはいえ、人の理解を超えた光景に頭痛がした。
“映画を見ているよう”と渚が言っていたが、これはハリウッドのCGよりもリアルだ。
目の前に新しく出来上がったのは、お洒落な喫茶店のような空間だった。
さっきと同じ二人が窓際の席に向かい合わせで座っている。だがそこに漂う雰囲気は一転、幸福感からはかけ離れていた。
原因は――机の上に並べられた写真を見ればおよそ想像がつく。男性と仲良く寄り添って歩く、別の女性の姿がそこには映っていたのだ。
その女性は、男性の腕をしがみつくようにして掴んでいた。腰の高さで指と指とが密接に絡み合っている。女性は身体を気持ちばかり男性の方へ傾けて、上目づかいで何かを言っているようだった。傍から見ればわざとらしい振る舞いだが、当の男性はまんざらでもない様子で頬を緩めている。
“媚びる”。そんな言葉が、ふと脳裏に浮かんできた。
「男の方が浮気をしていた……?」
七瀬の言葉を肯定するがごとく、女性は怒りに満ちた表情でパートナーを問い詰め始める。
『――ねえ、説明してよ』
『何をだよ……』
『とぼけないで、この女は誰なの』
『……ただの後輩だよ、同じサークルのな。ったく、ちょっと一緒に出掛けたくらいだ。そんな怒らなくてもいいだろ』
男の返事は歯切れの悪いものだった。やましさを覆い隠したいのか、目線を反らし、頻繁に瞬きをしている。
『“ちょっと一緒に出掛けたくらい”? にしてはやけに仲が良さそうじゃない。その後輩とかと、こんな風にくっついて歩いてる』
『何が言いたいんだ』
『もう分かってるでしょ? 貴方はこの女と浮気してる――、違う?』
『――ああそうだ。前々から思ってたんだけど、お前はいっつも重たいんだよ。一緒にいて疲れる』
舌打ちの後、男は冷淡にそう言い放った。
『重すぎるってなんなのよ! わたしはただ、貴方のことが好きなだけで――』
『――だから、そういうところだって。……もううんざりだ、別れさせてもらう』
『え……ねえちょっと待ってよ、嘘でしょ?』
『悪いな、美沙』
そのまま席を立つと、男は振り返ることもせずに歩き去っていく。最後に彼の口から発せられた女性の名前には、到底愛情など込められていない。
美沙という名前の女性は、戸惑いながら、それでも遠ざかる恋人に対して手を伸ばした。だがそれは、何も無い所を虚しく掻いてから、握り拳となって机に叩きつけられた。
その上には一枚の写真がある。今しがたまで恋人だった男が、楽しげに女性と歩いている光景を映した一枚の写真が。二人が浮かべているのはまぎれもない笑顔だったが、他人から奪い取って得た幸せを祝福することなど、七瀬にはどだい無理な話だった。
再び世界が再構築された。
今度出来上がったのはどこかの情景ではなく、ただただ真っ暗闇の空間だった。
中心には、四肢を力無く垂らした女性の身体が、どこからか伸びている縄に吊り下がっている。鋭利な刃物で切りつけた跡が、幾筋もその手首に見受けられた。
警察ではない七瀬にもありありと分かる。恋人と破局した後、彼女は自ら命を絶ったのだ。
最初は手首を切ることで死ぬつもりだったのだろう。だがそれは、おそらく上手くいかなかった。動脈を切るのは難しいと聞くし、あるいは、絶望の中わずかに残っていた生きたいという思いが、寸前で無意識の内に、邪魔をしていたのかもしれない。
結果、この美沙という女性は、首を吊ってその人生に幕を降ろした。
そう、七瀬が結論づけた時。
『…………い』
周囲の空間から声が聞こえた。
『……い。……ない』
小さすぎて、何を言っているのかまでは分からない。
すると死体はそれを察知したかのように、吊られたままの体勢で平行移動をして、すぅーとこちらへ近づいてきた。顔が起き上がり、紅く染まった眼球が露わになる。
壊れたビデオテープのように、一つの言葉が四方八方から、何度も何度も聞こえてくる。
許さない。
許さない。
許さないゆるさないユルサナイ…………
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他に、志乃歩の秘書でもある黒兎、口は悪いが料理の腕前はピカイチの姫子、野雪が生み出した巨大な犬の化想のシロ。彼らは、山の中にある洋館で、賑やかに共同生活を送っていた。
その洋館に、新たな住人が加わった。
記憶を失った少女、たま子。化想が扱える彼女は、記憶が戻るまでの間、野雪達と共に過ごす事となった。
だが、記憶を失くしたたま子には、ある目的があった。
たま子はクズミ化想社の一人として、志乃歩や野雪と共に、化想を出してしまった人々の様々な思いに触れていく。
壊れた友情で海に閉じこもる少年、自分への後悔に復讐に走る女性、絵を描く度に化想を出してしまう少年。
化想操術の古い歴史を持つ、阿木之亥という家の人々、重ねた野雪の過去、初めて出来た好きなもの、焦がれた自由、犠牲にしても守らなきゃいけないもの。
野雪とたま子、化想を取り巻く彼らのお話です。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
百合系サキュバス達に一目惚れされた
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
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