私はヒロインになれますか?

水瀬 こゆき

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一章

私はダサいですか?

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 「養っ……は?はい??今なんて?」

 さっきから首を傾げっぱなしの魔王サマがおかしい。クスクスと小さく笑ってからカトレアはもう一度告げた。

 「ですから、私を養ってください」

 「なんで!」

 聞き間違いじゃなったとばかりに食いついてきた魔王サマ。気持ちは痛いほどわかりますが、まあ落ち着いてくださいよ。

 カトレアは戸惑う魔王に、自分の考えを一から説明することにした。

 「まず私が今、天涯孤独の身であることはご存知ですよね?」

 「…っ!は、はい」

 さっきから思っていたのだが、何故この魔王サマは私に敬語を使うのだろう。ああ、あれか。あの協定がある限り私と魔王サマは同じ舞台に立っていることになるのか。

 カトレアは話を続ける。

 「街ではこう噂されています。『魔王殺しの一族を殺したのは魔王だ』と」

 「それは……!!」

 カトレアは目を細め、笑みを深めた。
それを見逃さなかった魔王はビクリと身を強張らせる。最早痛々しいほどだ。

 「貴方は六年前に即位なさったそうですね。と言うことは、噂になっているのは貴方ではなく、前魔王なのでしょう」

 「はい…。そうだと思います。僕はあの事件の後に即位しましたから」

 「そうですか。でも私はそうは思っていませんでした」

 「と、仰いますと?」

 ハッキリと否定の言葉を口にしたカトレアに、横に控えていた男性が口を挟んだ。先ほど宰相と名乗っていたから、彼は宰相閣下なのだろう。
随分若いように見えるが、これで宰相なのか。恐らく凄く有能なのだろう。

 「簡単なことです。私はつい先程まで噂になっているのは貴方だと思っていたのです。何故だか分かります?」

 魔王は目を見開くと、すぐにぶんぶんと首を振った。思い当たる節がないのだろう。

 「分からないです」

 まあ、そうでしょうね。
カトレアはボソリと静かに呟く。

 「…簡単なことですよ」

 呟いてから、カトレアは魔王を真っ直ぐ見つめた。胡散臭い角がはみ出たフードで未だその顔を見ることはできないが、彼がこちらを食い入るように見ていることだけは何となくわかった。

 魔王サマはどうやら間違いなくビビりのようだ。可哀想だとは思うけれど、よくそんな状態で六年も魔王をやってこれたな、とも正直なところ思った。
 カトレアはこちらに釘付けになっている目線に応えるようにして言った。

 「本当に簡単なことです。貴方が事件後に即位なさったという事実を私自身すっかり忘れていた。だから、噂の魔王が貴方だと思い込んでいた。ただそれだけです」
 
 あまりにもダサい言い訳に、魔王も宰相もガクリと肩を落とした。
しかし、本題はここからだとばかりにカトレアは切り出す。

 「それに関しては謝ります。ですが、私が言いたいのはそう言うことじゃないんですよ。私は噂の魔王のせいで齢16にして働いています。ですが、世の16歳の少年少女は働いていません。青春を謳歌しています。私はそれが、堪らなく羨ましいのです」


 **************

 溜まってたストックを一気に公開してます。
次話を今日中にアップしようかしないでおこうか……考え中(*´ー`*)

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