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一章
私はお偉いさんですか?
しおりを挟む「すみませんでしたぁぁぁ!!!」
魔王サマがいきなり土下座を披露してくれたけど、何のことやらさっぱりわからない。いや、分かるけれども。思い当たる節は一個だけあるけれども。
「え……いや、魔王サマ?何やって…」
「そこの君!早く!早く牢から出して差し上げて!」
土下座をやめさせそうとするカトレアの声を遮り、魔王は未だに頭を下げていた護衛に牢の鍵を開けるよう指示を出した。そして即座に鍵を開け、牢の外へと誘導されたカトレアはと言うと苦笑いだった。
あちゃーー。どうしよう。
やっぱり名乗るんじゃなかったな。
牢屋でニート生活を送るという夢のような生活が一瞬にして終わってしまった…。いやでも、魔王サマに名を問われて答えなかったらもう斬首ものでしょ。
なら、ニート生活は諦めるか?
いいえ、諦めるわけがないわ!!
こうなったら最初の作戦通り、魔王サマに養ってもらおう。
「えー…と、魔王サマ?取り敢えず土下座はやめません?」
初対面で魔王サマに土下座を披露された人間なんて今まで聞いたこともない。後で誰かに難癖をつけられても困るし、そもそも私の精神的にきついし、土下座は勘弁してほしい。
「でも……!!」
それでも尚、渋る魔王に再び苦笑してしまう。この魔王サマは就任してからまだ6年のはず。カトレアは魔族のことは全く知らないので、魔王の種族も年齢も性別も名前も経歴も、一切知らない。
声は低かったから恐らくは男性だろう。
種族はわからないが先程までのカトレア同様、黒いフードを深くかぶっているので顔はよく見えない。フードからは二本の角が生えている。あの角は本物だろうか?どうも嘘くさい。まあただの勘だけど。
「魔王サマ。私のお願い、聞いてくれます?」
目を細めてそう聞くと、首の関節大丈夫ですかと聞きなくなるくらいカクカクと首を縦に振ってくれた。
「はい、もちろん!何なりと!!」
「じゃあ、土下座をやめて下さい。後ろのお二人もです。土下座はやめて、普通に立ってもらえますか?」
ニッコリ笑顔でお願いをすると、御三方はそれはそれは素直に言うことを聞いてくれた。
どうして魔王サマともあろうお方が私のような小娘に頭を下げたのか?
それには当然理由がある。
六年前、彼が魔王に即位した後、私の元に書状が届いた。宛先はカトレア・メルシェで送り主は魔王サマ。そこに魔王サマの本名が書いてあった気がするけれど、残念ながら一文字も覚えていない。
書状に書いてあったことは極めて単純なことだった。魔王とカトレア・メルシェで個人的に協定を結ぼうと言うものである。
魔王はカトレア・メルシェに今後一切危害を加えないから、カトレア・メルシェも魔王に危害を加えないと約束してほしい、という内容だったはずだ。
カトレアは当然この提案を受け入れた。
『魔王殺しの一族』の生き残りであるカトレアにとっての唯一の脅威とも言える魔王が自分に危害を加えないと約束してくれるのだから、受け入れるに決まっている。
さて、それを踏まえて今の状況を考えてみよう。魔王本人がしたことではないとはいえ、部下の行動は上司の責任。つまり、カトレアを牢に入れたのも、魔王の責任になるのだ。
これは立派な協定破りである。
だから、魔王は今ここでカトレアに殺されても文句は言えないのだ。
まぁ、カトレアにそんな気力と体力は一切ないため杞憂なのだが。
「あのーー……取り敢えず、ここで話をするのも何だからどこか別の場所に案内してもらいたいのだけど」
土下座をやめて立ち上がったきり、カトレアの顔色を伺うばかりで何もしようとしない三人に遠慮がちに告げてみると、喜んで魔王城の中に入れてくれた。
「で……魔王サマ?例の協定、覚えてます?」
やたら煌びやかな部屋に通されるなりそうたずねると、魔王サマは大きく肩を震わせた。
さっきから思ってたけど……もしかしてこの魔王サマ、超ビビりだったりしますかね?
***************
そろそろクリスマスです!
良い子の皆さん、サンタさんはまだ来てくれていますか?
うちの家にはまだサンタクロースがきます。
そして、我が作品のヒロインには……
サタンコロースがやって来ます!
てか何だよサタンコロースって。
怖いよ、夜中に夢に出て来そうで怖いよ。
そもそも誰だ、こんなしょうもない親父ギャグみたいなネタ考えたの!
知ってます。私ですね。知ってます。
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