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16章
色々終わって……
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——◆◇◆◇——
「——これ、どうすっかなぁ」
「ヴェスナー様。お加減の方はいかがでしょうか?」
「ん。ああ、特に問題ない。元々、どっか怪我したってわけでもないんだ。ただ疲れたってだけで」
神樹とかいうみみっちい存在との話を終えた後、ぶっ倒れそうになった体を無理やり動かして親父と合流し、陣地へと戻っていった。
だがその途中で救出部隊に回収された俺は、安心感から眠りについてしまった。
そして、国境付近で戦っていたこともあり、カラカスに変えるか聖国に戻るか迷ったそうだが、結局は話し合いとか必要だろうと言うことで聖都へと戻り、俺は唯一無傷で済んだ聖国の王城に運び込まれることとなった。
とはいえ、聖都からだいぶ離れていたこともあり運び込まれるまで二日ほどかかっているので、その間に俺は起きて自分の体に問題ないことは確認してある。
しかしそれでも安静にしておくべきだと言うことで、話し合いなんかの事後処理は全部母さんや親父や婆さん達に任せて俺は与えられたお部屋でお休み中だ。
まあ、動こうとしてもソフィアやベルや母さんが止めるからまともに動けないってのもあるんだけどさ。
今は猫の手も借りたいくらいに忙しいようで、ソフィアもベルも誰もいない。とはいえ、俺のいる部屋は結界が張ってあるようで部外者の侵入はできない。
なので安心だし、監視役もいないから隙を見て動き回ることはできるんだけど、それをやると見つかった時に怒られるからな。母さんに関しては泣かれるかもしれない。なのでろくに動けないでいる。
しかし、色々と考え事をするのにはちょうどいい時間だとも言える。
何せあの神樹、最後にとてつもなく面倒なものを押し付けてきやがったのだ。その面倒なもの——神樹の種らしきこれについて考えないわけにはいかない。
それに、俺に与えられた神樹の力についてもだ。
神樹に対面した時に感じた圧からすると、俺に与えられた力なんて微々たるものだ。だが、それでも普通ではない強力な力であることに違いはない。そんな力が俺の中に入っているのだ。
まあ、神樹の力の方は取り除こうにもすでに俺自身と一体化してるのがなんとなくの感覚で理解できるためどうしようもないと思うが、せめて神樹の種の方だけでも答えを出したい。
「それは……神樹の種ですか。綺麗に育つといいですね」
ソフィアはそう言っているが、俺としてはまだ悩んでいるので頷くことはできない。
「まだ育てるとは決まってないけどな」
「そうなのですか? てっきり聖樹の時のように育てるものかと思っていましたが……」
「んー。まあそれでもいいんだけど、正直言って得体の知れないものだろ? 普通に育てていいものなのか、育てて周辺に害は出ないのか、後は場所の問題もあるな。これが神樹の種だってんなら相当デカくなるだろうし、また別の街を作る必要があるんだよなぁ」
こいつが土の栄養素をバカ喰いするような育ち方をすれば、周囲の植物はまともに育たなくなり、死の土地となるかもしれない。
あるいは、地脈とか龍脈とかを通じてエネルギーを吸収するかもしれないが、それはそれで周りに影響が出るかもしれない。
そう考えると軽々に植えることはできないし、そもそも場所がない。
「それなあにー?」
なんて考えていると、フローラがひょこりと俺の胸のあたりから顔を出した。
そういえば、フローラを取り込んだまま外に出してなかったっけ。まあこいつは自分の意思で出てこれるんだからてっきりもう出歩いているものかと思ったけど、どうやらそうではなかったようだ。
「フローラ? ああ、これは神樹から貰った……というか押し付けられたものなんだけど……」
「あむ」
フローラに対して神樹の種について説明していたのだが、その途中でフローラが突然種を食べてしまった。
「って、おい!?」
慌ててフローラを俺の体から抜き出し、正面を向かせる。
……俺の体からフローラを抜き出すって、すごい表現だよな。
って、そんなことよりもフローラだ。大丈夫なのか?
しっかりと向き合いフローラのことを観察すると、目がそれまでの色とは変わって、虹色になった。
後は、感じる気配がなんとなく変わっている。フローラではあるんだけど、俺に近くなった? ……いや、これはあれか。俺ではなく、俺の中にある力——神樹に近くなったのか?
「フローラ、それ、おい。大丈夫なのか? 何したんだ? なんだってそんなものを食べて……」
「なんかねー? 食べてって言ってたのー」
「いや、食べてって、普通言うか……?」
自分のことを食べてなんて普通言わないだろ。
だが、そもそも神樹という存在が普通じゃない。であれば、自分のことを食べろと言うこともある……のかもしれない。
神樹自体はエネルギー体っぽいものだったから、種と言っても普通の育て方ではダメだった可能性はある。
「種の問題は解決したようですね」
「解決、したか? でも……そうだなぁ。どうしようか」
……少なくとも、フローラの力にはなったみたいだし、まあいいか。
それよりも、今はわからない過ぎたことについてとやかくいうよりも、せっかくソフィアが来たんだから他の奴らの状況について話しを聞きたい。
「それよりも、状況はどうなってる?」
「はい。レーレーネ様は、戦闘を行っていた場所が国境付近だったこともあり、終わった後はそのまま自領へとお戻りになられました」
レーレーネ引きこもり性質のせいで早く帰りたいと言っていたようで、来た時と同じように魔王の引く台車に乗せられて帰っていった。
「フィーリア様は先程まで聖国の王を交えて皆様方とお話ししていましたが、話がまとまったようで後一月ほどとどまることが決まりました」
「なんだ、あいつは残るのか」
「はい。土魔法はこの状況では貴重だとのことです」
「ああ、復興作業か」
フィーリアは土魔法を使えるので、その気になれば家も建てることができる。
その能力はこんな街が崩壊した状況では役に立つだろう。まあ、その対価として何かしらを求めただろうが、そこは俺の知ったことではない。ザヴィートと聖国でどうにかして話をつければいい。
「他の方々に関しましては、カルメナ様を筆頭に、集まった方々や聖国の王のご協力もありましたので、その意見に逆らえるものなど誰もいませんでした。全て事前に話されていた通りになっています」
教会の奴らは呪いに侵されながらも残っていた奴らがいたようで、そいつらは助ける条件として強力することを求めていたわけだが、まあ、あの戦いを見ている奴らなら、逆らおうとはしないだろうな。なんたって第十位階の力をこれでもかと見せつけられたんだ。戦いになるようなことは避けたいと思うだろう。
第十位階がいなかったとしても、邪神によって街が荒らされ、混乱も収まりきっていない状態で襲われでもしたら、『事故死』することになる。
それが理解できる頭があるんだったら、こっちの意見に逆らおうとはしないはずだ。聖国の王もこっちの味方だから縋り付くこともできない。
結果、俺たちの言うことを聞くしかないわけだ。
邪神によってめちゃくちゃにされた聖国だが、今回の大騒ぎについての説明としては、国民達は諸外国には教会が邪神を呼び出し、それを『勇者』を旗頭として持ち上げた聖国が、ザヴィートやカラカスやエルフの協力を得て討伐した、ということになっている。
あの王は今回の邪神討伐で勇者が活躍したんだと言うことを推し出して民衆の心をまとめ、他国に対しての牽制とするようだ。まああいつの攻撃はだいぶ目立ってたしな。何せ空に浮かぶ無数の光の剣だ。目立たないわけがない。
本当は勇者ではなく魔王。聖国ではなくカラカスが主導となってやったのだが、この形にするのが一番面倒がなく終わらせることができるのでそうなった。元々俺たちには名誉欲とかないし、実利さえ確保できたのならそれでいい。
今後、その勇者の傍には聖女と魔女がいることになるらしいが……さて、どうなることやら。魔女はいいとしても、一度見捨てた聖女がこれまで通りにやっていけるのかっていうと……。
まあ、その辺は俺が気にすることでもないな。
しかし、なんだな……。そこらへんの話がついたんだったら、もう俺たちがやることは終わったんだよな。
「そうか。なら、そろそろ帰るとするか」
「——これ、どうすっかなぁ」
「ヴェスナー様。お加減の方はいかがでしょうか?」
「ん。ああ、特に問題ない。元々、どっか怪我したってわけでもないんだ。ただ疲れたってだけで」
神樹とかいうみみっちい存在との話を終えた後、ぶっ倒れそうになった体を無理やり動かして親父と合流し、陣地へと戻っていった。
だがその途中で救出部隊に回収された俺は、安心感から眠りについてしまった。
そして、国境付近で戦っていたこともあり、カラカスに変えるか聖国に戻るか迷ったそうだが、結局は話し合いとか必要だろうと言うことで聖都へと戻り、俺は唯一無傷で済んだ聖国の王城に運び込まれることとなった。
とはいえ、聖都からだいぶ離れていたこともあり運び込まれるまで二日ほどかかっているので、その間に俺は起きて自分の体に問題ないことは確認してある。
しかしそれでも安静にしておくべきだと言うことで、話し合いなんかの事後処理は全部母さんや親父や婆さん達に任せて俺は与えられたお部屋でお休み中だ。
まあ、動こうとしてもソフィアやベルや母さんが止めるからまともに動けないってのもあるんだけどさ。
今は猫の手も借りたいくらいに忙しいようで、ソフィアもベルも誰もいない。とはいえ、俺のいる部屋は結界が張ってあるようで部外者の侵入はできない。
なので安心だし、監視役もいないから隙を見て動き回ることはできるんだけど、それをやると見つかった時に怒られるからな。母さんに関しては泣かれるかもしれない。なのでろくに動けないでいる。
しかし、色々と考え事をするのにはちょうどいい時間だとも言える。
何せあの神樹、最後にとてつもなく面倒なものを押し付けてきやがったのだ。その面倒なもの——神樹の種らしきこれについて考えないわけにはいかない。
それに、俺に与えられた神樹の力についてもだ。
神樹に対面した時に感じた圧からすると、俺に与えられた力なんて微々たるものだ。だが、それでも普通ではない強力な力であることに違いはない。そんな力が俺の中に入っているのだ。
まあ、神樹の力の方は取り除こうにもすでに俺自身と一体化してるのがなんとなくの感覚で理解できるためどうしようもないと思うが、せめて神樹の種の方だけでも答えを出したい。
「それは……神樹の種ですか。綺麗に育つといいですね」
ソフィアはそう言っているが、俺としてはまだ悩んでいるので頷くことはできない。
「まだ育てるとは決まってないけどな」
「そうなのですか? てっきり聖樹の時のように育てるものかと思っていましたが……」
「んー。まあそれでもいいんだけど、正直言って得体の知れないものだろ? 普通に育てていいものなのか、育てて周辺に害は出ないのか、後は場所の問題もあるな。これが神樹の種だってんなら相当デカくなるだろうし、また別の街を作る必要があるんだよなぁ」
こいつが土の栄養素をバカ喰いするような育ち方をすれば、周囲の植物はまともに育たなくなり、死の土地となるかもしれない。
あるいは、地脈とか龍脈とかを通じてエネルギーを吸収するかもしれないが、それはそれで周りに影響が出るかもしれない。
そう考えると軽々に植えることはできないし、そもそも場所がない。
「それなあにー?」
なんて考えていると、フローラがひょこりと俺の胸のあたりから顔を出した。
そういえば、フローラを取り込んだまま外に出してなかったっけ。まあこいつは自分の意思で出てこれるんだからてっきりもう出歩いているものかと思ったけど、どうやらそうではなかったようだ。
「フローラ? ああ、これは神樹から貰った……というか押し付けられたものなんだけど……」
「あむ」
フローラに対して神樹の種について説明していたのだが、その途中でフローラが突然種を食べてしまった。
「って、おい!?」
慌ててフローラを俺の体から抜き出し、正面を向かせる。
……俺の体からフローラを抜き出すって、すごい表現だよな。
って、そんなことよりもフローラだ。大丈夫なのか?
しっかりと向き合いフローラのことを観察すると、目がそれまでの色とは変わって、虹色になった。
後は、感じる気配がなんとなく変わっている。フローラではあるんだけど、俺に近くなった? ……いや、これはあれか。俺ではなく、俺の中にある力——神樹に近くなったのか?
「フローラ、それ、おい。大丈夫なのか? 何したんだ? なんだってそんなものを食べて……」
「なんかねー? 食べてって言ってたのー」
「いや、食べてって、普通言うか……?」
自分のことを食べてなんて普通言わないだろ。
だが、そもそも神樹という存在が普通じゃない。であれば、自分のことを食べろと言うこともある……のかもしれない。
神樹自体はエネルギー体っぽいものだったから、種と言っても普通の育て方ではダメだった可能性はある。
「種の問題は解決したようですね」
「解決、したか? でも……そうだなぁ。どうしようか」
……少なくとも、フローラの力にはなったみたいだし、まあいいか。
それよりも、今はわからない過ぎたことについてとやかくいうよりも、せっかくソフィアが来たんだから他の奴らの状況について話しを聞きたい。
「それよりも、状況はどうなってる?」
「はい。レーレーネ様は、戦闘を行っていた場所が国境付近だったこともあり、終わった後はそのまま自領へとお戻りになられました」
レーレーネ引きこもり性質のせいで早く帰りたいと言っていたようで、来た時と同じように魔王の引く台車に乗せられて帰っていった。
「フィーリア様は先程まで聖国の王を交えて皆様方とお話ししていましたが、話がまとまったようで後一月ほどとどまることが決まりました」
「なんだ、あいつは残るのか」
「はい。土魔法はこの状況では貴重だとのことです」
「ああ、復興作業か」
フィーリアは土魔法を使えるので、その気になれば家も建てることができる。
その能力はこんな街が崩壊した状況では役に立つだろう。まあ、その対価として何かしらを求めただろうが、そこは俺の知ったことではない。ザヴィートと聖国でどうにかして話をつければいい。
「他の方々に関しましては、カルメナ様を筆頭に、集まった方々や聖国の王のご協力もありましたので、その意見に逆らえるものなど誰もいませんでした。全て事前に話されていた通りになっています」
教会の奴らは呪いに侵されながらも残っていた奴らがいたようで、そいつらは助ける条件として強力することを求めていたわけだが、まあ、あの戦いを見ている奴らなら、逆らおうとはしないだろうな。なんたって第十位階の力をこれでもかと見せつけられたんだ。戦いになるようなことは避けたいと思うだろう。
第十位階がいなかったとしても、邪神によって街が荒らされ、混乱も収まりきっていない状態で襲われでもしたら、『事故死』することになる。
それが理解できる頭があるんだったら、こっちの意見に逆らおうとはしないはずだ。聖国の王もこっちの味方だから縋り付くこともできない。
結果、俺たちの言うことを聞くしかないわけだ。
邪神によってめちゃくちゃにされた聖国だが、今回の大騒ぎについての説明としては、国民達は諸外国には教会が邪神を呼び出し、それを『勇者』を旗頭として持ち上げた聖国が、ザヴィートやカラカスやエルフの協力を得て討伐した、ということになっている。
あの王は今回の邪神討伐で勇者が活躍したんだと言うことを推し出して民衆の心をまとめ、他国に対しての牽制とするようだ。まああいつの攻撃はだいぶ目立ってたしな。何せ空に浮かぶ無数の光の剣だ。目立たないわけがない。
本当は勇者ではなく魔王。聖国ではなくカラカスが主導となってやったのだが、この形にするのが一番面倒がなく終わらせることができるのでそうなった。元々俺たちには名誉欲とかないし、実利さえ確保できたのならそれでいい。
今後、その勇者の傍には聖女と魔女がいることになるらしいが……さて、どうなることやら。魔女はいいとしても、一度見捨てた聖女がこれまで通りにやっていけるのかっていうと……。
まあ、その辺は俺が気にすることでもないな。
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