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友人達の村で
401─イリン:小物の集まり
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たどり着いたそこには二十名ほどでしょうか? みすぼらしい格好に統一感のない鎧をつけた者達がそれぞれ武器を構えています。
その中でもまだマシな身なりをした男が一歩前に出ていますが、持っている武器は杖なので魔術師なのでしょう。あれがここのリーダーでしょうか?
「ああん? やってきたのは女が二人か? さっきのバケモンは魔術で作ったもんだろうから片方は魔術師ってことになんだが……いくら魔術師に年齢は関係ねえつってもよぉ、ちぃっとガキすぎねえか?」
ガキと呼ばれるのは腹立たしくもありますが、こちらを侮ってくれるというのであれば好都合なので、良しとしましょう。
ともあれ、あれがリーダーなのだとしたら、捕らえたほうが良いですね。
一応、予め環にも言ってありますが、環の鬼を倒した相手となれば私が相手をすることになりそうですし、殺さないように気をつけ──
「ま、見てくれは十分だな。はっ、なんだよ。ハズレを引いたと思ったが、なかなか使えそうじゃねえか」
……気をつける必要はありませんね。死んだら死んだでその時です。
「その下劣な視線をやめてもらってもよろしいでしょうか?」
「そうね。あなたのようなのにみられていると思うと、それだけで気分が悪くなるわ」
私の全てはアキト様のもの。このようなクズに渡すものなど塵ほどもありません。
それは環も同じ気持ちなのでしょう。声を聞いただけでその顔が不快感で歪んでいるのがわかります。
「おお~、言うねぇ。……だがよぉ、自分たちの立場ってもんを、もう少し考えたほうがいいんじゃねえの?」
男は少し戯けた様子でいやらしく笑いながらそう言うと、杖に魔力を込めて構えました。
「こんだけの人数相手に、まともに戦えると思ってんのかよ?」
そして男がそう言うと、じわじわと動いて私たちを囲むようにしていた者達が一斉に武器をこちらに向けました。
「さっきのバケモンはなかなかの強さだったが、あんなのを何体も出せうわけねえ。精々後二、三体が限界ってとこだろ」
私は男の言葉に驚きを禁じ得ませんでした。
「あれが『なかなかやる』、ですか……」
「ああ。結構強かったぜ。ま、俺には勝てなかったがな」
私としては『あの程度が』、と言う意味だったのですが男は私の言葉を勘違いしたのか、得意げに笑っています。
ですが、私はその様子を見て呆れてしまいました。
今回出した環の鬼は、その炎を抑えていたためにそれほど強くはありません。
それなのになかなか強かったと言うのであれば、その実力はたかが知れています。
「少々期待外れのようですので、あとはあなたに任せます。どうせ、全力でやればすぐに終わるでしょうから」
「あらそう? なら遠慮なくもらっておくわね」
「ええ。私は洞窟内の探索をしておきます」
何度も何度もしつこくあの村を襲ったのです。であれば何か理由があったのではないか。それが私たちの考えです。
もし何かあったとしても、それが証拠として残っていないかも知れません。ですが、絶対にないとも言い切れません。もしここの者達が誰かに雇われたのだとしたら、契約書の一つくらいなら取っておいてもおかしくありませんから。
「逃すと思ってんのか?」
ですが、私たちがこの空間に来た道は、賊に封鎖されています。封鎖といっても数名で邪魔をしているだけですが。
「……逃げる必要があるのはどちらでしょうか?」
敵のリーダーらしき男は私たちのことを逃さないつもりでいるようですが、そもそも逃げる必要なんてありません。むしろ彼らの方こそ逃げる必要があるのではないでしょうか?
「はんっ、口の減らねえガキだ。その生意気な顔を歪めてやれると思うと、楽しみで仕方がねえぜ」
「おあいにくですが、私のすべては私のご主人様のためにありますので。あなた方には毛の一筋すらも差し上げることはできません」
「私も同じよ。彰人以外に触らせるつもりはないわ」
「調子に乗ってられんのも今の内だ。安心しろ。殺しはしねえからよ!」
男がそう言うと、私たちの背後にいた賊達が私の足を目掛けて斬りつけてきました。
おそらくこれは殺すつもりはないということなのでしょうが、その元となっている考えがわかっているだけに、より一層気持ち悪く感じます。
「はっ……?」
ですがその程度では当たるどころか掠らせるつもりさえありません。
「では環。あとは任せます。自分の身を焼くような馬鹿なことはしないでくださいね」
私は賊の攻撃を躱してその後ろ、私たちがやってきた道へと戻りました。
その際、環に任せると言いながらも襲ってきた数名は倒させてもらいましたが、これくらいはいいでしょう。
「そんなことしないわよ。あなたの方こそ、隠れてた敵に襲われた、だなんてことにならないようにね」
そして私は広間から通路へと身を翻して進み始めます。
「チッ、何やってやがる! さっさと追──」
「追わせないわ」
環がそう言うと背後から熱を感じ、道が照らされました。おそらく環がスキルを使ったのでしょう。
どれほどの数を出したのかわかりませんが、背後の威圧感からすると思ったよりも多く出したようです。
……これは、予想よりも早く終わりそうですね。
「なっ!?」
「あなた達はここで私の相手をしてもらうわよ。試したいこともあるし、少しつきあってちょうだい」
そんなちょっとだけ楽しげな環の声を聞きながら私は宣言通り洞窟内を調べる始めました。
思っていたよりも小物の集まりでしたし、ここはハズレかもしれませんね。
その中でもまだマシな身なりをした男が一歩前に出ていますが、持っている武器は杖なので魔術師なのでしょう。あれがここのリーダーでしょうか?
「ああん? やってきたのは女が二人か? さっきのバケモンは魔術で作ったもんだろうから片方は魔術師ってことになんだが……いくら魔術師に年齢は関係ねえつってもよぉ、ちぃっとガキすぎねえか?」
ガキと呼ばれるのは腹立たしくもありますが、こちらを侮ってくれるというのであれば好都合なので、良しとしましょう。
ともあれ、あれがリーダーなのだとしたら、捕らえたほうが良いですね。
一応、予め環にも言ってありますが、環の鬼を倒した相手となれば私が相手をすることになりそうですし、殺さないように気をつけ──
「ま、見てくれは十分だな。はっ、なんだよ。ハズレを引いたと思ったが、なかなか使えそうじゃねえか」
……気をつける必要はありませんね。死んだら死んだでその時です。
「その下劣な視線をやめてもらってもよろしいでしょうか?」
「そうね。あなたのようなのにみられていると思うと、それだけで気分が悪くなるわ」
私の全てはアキト様のもの。このようなクズに渡すものなど塵ほどもありません。
それは環も同じ気持ちなのでしょう。声を聞いただけでその顔が不快感で歪んでいるのがわかります。
「おお~、言うねぇ。……だがよぉ、自分たちの立場ってもんを、もう少し考えたほうがいいんじゃねえの?」
男は少し戯けた様子でいやらしく笑いながらそう言うと、杖に魔力を込めて構えました。
「こんだけの人数相手に、まともに戦えると思ってんのかよ?」
そして男がそう言うと、じわじわと動いて私たちを囲むようにしていた者達が一斉に武器をこちらに向けました。
「さっきのバケモンはなかなかの強さだったが、あんなのを何体も出せうわけねえ。精々後二、三体が限界ってとこだろ」
私は男の言葉に驚きを禁じ得ませんでした。
「あれが『なかなかやる』、ですか……」
「ああ。結構強かったぜ。ま、俺には勝てなかったがな」
私としては『あの程度が』、と言う意味だったのですが男は私の言葉を勘違いしたのか、得意げに笑っています。
ですが、私はその様子を見て呆れてしまいました。
今回出した環の鬼は、その炎を抑えていたためにそれほど強くはありません。
それなのになかなか強かったと言うのであれば、その実力はたかが知れています。
「少々期待外れのようですので、あとはあなたに任せます。どうせ、全力でやればすぐに終わるでしょうから」
「あらそう? なら遠慮なくもらっておくわね」
「ええ。私は洞窟内の探索をしておきます」
何度も何度もしつこくあの村を襲ったのです。であれば何か理由があったのではないか。それが私たちの考えです。
もし何かあったとしても、それが証拠として残っていないかも知れません。ですが、絶対にないとも言い切れません。もしここの者達が誰かに雇われたのだとしたら、契約書の一つくらいなら取っておいてもおかしくありませんから。
「逃すと思ってんのか?」
ですが、私たちがこの空間に来た道は、賊に封鎖されています。封鎖といっても数名で邪魔をしているだけですが。
「……逃げる必要があるのはどちらでしょうか?」
敵のリーダーらしき男は私たちのことを逃さないつもりでいるようですが、そもそも逃げる必要なんてありません。むしろ彼らの方こそ逃げる必要があるのではないでしょうか?
「はんっ、口の減らねえガキだ。その生意気な顔を歪めてやれると思うと、楽しみで仕方がねえぜ」
「おあいにくですが、私のすべては私のご主人様のためにありますので。あなた方には毛の一筋すらも差し上げることはできません」
「私も同じよ。彰人以外に触らせるつもりはないわ」
「調子に乗ってられんのも今の内だ。安心しろ。殺しはしねえからよ!」
男がそう言うと、私たちの背後にいた賊達が私の足を目掛けて斬りつけてきました。
おそらくこれは殺すつもりはないということなのでしょうが、その元となっている考えがわかっているだけに、より一層気持ち悪く感じます。
「はっ……?」
ですがその程度では当たるどころか掠らせるつもりさえありません。
「では環。あとは任せます。自分の身を焼くような馬鹿なことはしないでくださいね」
私は賊の攻撃を躱してその後ろ、私たちがやってきた道へと戻りました。
その際、環に任せると言いながらも襲ってきた数名は倒させてもらいましたが、これくらいはいいでしょう。
「そんなことしないわよ。あなたの方こそ、隠れてた敵に襲われた、だなんてことにならないようにね」
そして私は広間から通路へと身を翻して進み始めます。
「チッ、何やってやがる! さっさと追──」
「追わせないわ」
環がそう言うと背後から熱を感じ、道が照らされました。おそらく環がスキルを使ったのでしょう。
どれほどの数を出したのかわかりませんが、背後の威圧感からすると思ったよりも多く出したようです。
……これは、予想よりも早く終わりそうですね。
「なっ!?」
「あなた達はここで私の相手をしてもらうわよ。試したいこともあるし、少しつきあってちょうだい」
そんなちょっとだけ楽しげな環の声を聞きながら私は宣言通り洞窟内を調べる始めました。
思っていたよりも小物の集まりでしたし、ここはハズレかもしれませんね。
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