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友人達の村で
387:村の異常
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イリンと一緒に御者台にいるが、ようやく村が見えた。
あと少しでガムラとキリーに会うと思うと少し緊張するが、同時に楽しみでもある。あいつらは、どんなふうに生活しているのだろうか?
「アキト様」
そんなふうに考えていると、イリンが声をかけてきたが、なんだかいつもより声が硬い気がする。
「……どうした?」
何かあったのかと思い、少し警戒しながらイリンに尋ねると、イリンは前を向いたまま答えた。
「こちらを狙っているものがいます」
「なに?」
イリンの言葉を受けて、俺は探知を広げて周囲を確認した。
すると、イリンの言ったように武装した者が数名が俺たちを待ち構えるかのように、ガムラの故郷である村のそばに潜んでいた。
「……確かにいるな。だがなんでだ? ここはガムラの故郷だよな?」
この村の立地からして、旅人はそれなりに来るはずだ。これが街道から外れた場所だったら滅多に来ない旅人を警戒するってのはわかるけど、ここは違う。場所的にそれなりに人通りがあるはずだ。
旅人が珍しいってこともないだろうし、こちらを狙う必要なんてないと思うのだが……。
「……警戒はしておけ」
「はい」
なんでこっちを狙っているのかわからないが、いきなり攻撃するってことはないと思う。
だが建物の陰や麦畑の中に潜んでいることを考えると、村人の協力無しにはできないから、もしこれが賊なのだとしたら村は占拠された事になる。
ガムラが防衛のために魔術具を買い漁ってたらしいからそれもないと思うんだが……行ってみない事にはわからないか。
「平気」
「ナナ?」
イリンに警戒をし、馬車の中にいる環とナナにも言っておこうと窓を開けようとすると、その前にナナが開けてそう行ってきた。
「聞いた」
言葉というよりも、もはや単語でしかないナナの言葉。それがなにを意味しているのかはわからないが、状況的に考えると村の中、もしくは潜んでいる者の会話だろう。
「聞いた? ……村人の会話をか?」
「そう」
村人の方で合ってたか。
だが俺には全く聞こえなかった。イリンには聞こえただろうかと思って視線を向けると、イリンは首を横に振った。
人外級に耳のいいイリンであっても聞こえないような会話を本当に聞いたんだろうか?
だがここでナナが嘘をつく必要はないのだから、本当に聞こえたのだろう。
「なら、このまま行くか」
けど一応警戒は解かないようにしておこう。
「おや、旅人の方ですか?」
街道を進み、そこら辺の村には似つかわしくないほど立派な門までたどり着くと、そこには門番がいた。
まあそれは以前来た時もそうだったが、なんだか物々しい感じがする。そして相変わらず隠れているものたちはこっちに狙いを定めている。
その理由はわからないが……とりあえずは穏やかに進むように話をしてみるしかないだろう。
「ええ。知人がこの村にいるので」
「そうでしたか。その方の名前はなんでしょう? よければ呼んできましょうか?」
どうする? そこまでしてもらう必要もないのだが、わざわざこうして聞いてきたってことは、そうしたほうがいいってことか?
仮にこの人たちが何かを企んでいるとして、警戒していることもわせて考えると……あー、なんだろう?
とりあえず断る必要もないし呼んできてもらえれば話も早く済むだろうから、ガムラを呼んでもらうか。
「……そこまでしてもらうのは悪い気がしますが、お言葉に甘えさせてもらってもいいですか?」
「ええ。こちらから言い出したことですから」
「ならガムラっていうんですけど、わかりますか?」
「ガムラの知り合いの方ですか?」
俺がガムラの名前を出すと、門番の男性は驚愕混じりに尋ね返してきた。その様子は先ほどまでの警戒が薄れているように感じた。
あっ、そうか。もしかして、さっきわざわざ知人を呼んでこようかなんて言ったのは、本当に知人がいるのか確かめようとした?
とすると、そんなことをしてまで警戒するような何か……多分賊のような外敵がいるんだと思う。
そうでなければ人間を警戒する必要なんてないんだから。
「ええ。獣人国でちょっと知り合いまして、こっちに来るなら寄れと」
「そうでしたか。では今呼んできますね」
門番のうち片方の男性が、そう言うと走って村の中へと消えていった。
ガムラに会う前に、残った門番から少しでも情報を集めておこうと思い、適当に話をする。
「……それにしても、なんだか以前と様子が違いますが、何かありましたか?」
「ん? 以前って、あんた前にもきた事があるのか?」
「はい。もう結構前ですけど、ここでガムラと戦いました」
「戦った? あいつとか?」
男性は少し訝しげに眉を寄せて考え込むと、少しした後にハッとしたように口を開いた。
「……ああ思い出した。あんたあの時の狼獣人の子を連れたやつか」
「はい」
「いやあ、あん時とは全然違うからわからなかったよ。そっちの人はあの時の女の子か? 久しぶりだな……と言っても、特に何かあったわけじゃないし、あんた達は俺のことなんてわからないだろうけど」
男性はそう言って肩を竦めたが、まあ覚えていないのは事実だ。立ち寄った村の村人全員を覚えていられるわけがない。
この人が俺たちのことを覚えているのは、俺たちがガムラと戦った事があるからだろう。多分それを見ていた人のうちの一人なんだと思う。
「それにしても、随分と別嬪になったじゃないか。女の成長は早いっていうけど……ハァ~」
「ありがとうございます」
「それで、何かあったんですか?」
感心げにイリンを見つめている門番の男性に笑いかけているイリン。それが愛想笑いだとわかっていても、少しだけ……本当に少しだけ嫉妬してしまった俺は話を先程の村の状況についての話に戻す。
「おっとそうだった。まあこの後ガムラから聞くだろうが……この村を襲ってくる奴がいんだよ」
「襲う? ここはガムラが魔術具を設置してるって言ってましたが……」
あいつの稼いでいる額から考えると、並大抵の防衛力じゃないはずだ。
「おう。それでもそんなもん関係なしに襲う奴はいる。いや、むしろだからこそか?」
「魔術具があるからこそ? ……それって──」
「アンドー!」
男性の言葉に問い返そうとしたところで、誰かが俺の名前を呼びながら走ってきている。
「ガムラ」
「おう! よくきたな!」
ガムラは以前あった時と変わらない様子だったが、普段着のようなものではなく、村の中という場所には似つかわしくない、冒険者としての格好で武装していた。
「ここで話すのもなんだから、こっちこいよ。家に案内してやんぜ」
あと少しでガムラとキリーに会うと思うと少し緊張するが、同時に楽しみでもある。あいつらは、どんなふうに生活しているのだろうか?
「アキト様」
そんなふうに考えていると、イリンが声をかけてきたが、なんだかいつもより声が硬い気がする。
「……どうした?」
何かあったのかと思い、少し警戒しながらイリンに尋ねると、イリンは前を向いたまま答えた。
「こちらを狙っているものがいます」
「なに?」
イリンの言葉を受けて、俺は探知を広げて周囲を確認した。
すると、イリンの言ったように武装した者が数名が俺たちを待ち構えるかのように、ガムラの故郷である村のそばに潜んでいた。
「……確かにいるな。だがなんでだ? ここはガムラの故郷だよな?」
この村の立地からして、旅人はそれなりに来るはずだ。これが街道から外れた場所だったら滅多に来ない旅人を警戒するってのはわかるけど、ここは違う。場所的にそれなりに人通りがあるはずだ。
旅人が珍しいってこともないだろうし、こちらを狙う必要なんてないと思うのだが……。
「……警戒はしておけ」
「はい」
なんでこっちを狙っているのかわからないが、いきなり攻撃するってことはないと思う。
だが建物の陰や麦畑の中に潜んでいることを考えると、村人の協力無しにはできないから、もしこれが賊なのだとしたら村は占拠された事になる。
ガムラが防衛のために魔術具を買い漁ってたらしいからそれもないと思うんだが……行ってみない事にはわからないか。
「平気」
「ナナ?」
イリンに警戒をし、馬車の中にいる環とナナにも言っておこうと窓を開けようとすると、その前にナナが開けてそう行ってきた。
「聞いた」
言葉というよりも、もはや単語でしかないナナの言葉。それがなにを意味しているのかはわからないが、状況的に考えると村の中、もしくは潜んでいる者の会話だろう。
「聞いた? ……村人の会話をか?」
「そう」
村人の方で合ってたか。
だが俺には全く聞こえなかった。イリンには聞こえただろうかと思って視線を向けると、イリンは首を横に振った。
人外級に耳のいいイリンであっても聞こえないような会話を本当に聞いたんだろうか?
だがここでナナが嘘をつく必要はないのだから、本当に聞こえたのだろう。
「なら、このまま行くか」
けど一応警戒は解かないようにしておこう。
「おや、旅人の方ですか?」
街道を進み、そこら辺の村には似つかわしくないほど立派な門までたどり着くと、そこには門番がいた。
まあそれは以前来た時もそうだったが、なんだか物々しい感じがする。そして相変わらず隠れているものたちはこっちに狙いを定めている。
その理由はわからないが……とりあえずは穏やかに進むように話をしてみるしかないだろう。
「ええ。知人がこの村にいるので」
「そうでしたか。その方の名前はなんでしょう? よければ呼んできましょうか?」
どうする? そこまでしてもらう必要もないのだが、わざわざこうして聞いてきたってことは、そうしたほうがいいってことか?
仮にこの人たちが何かを企んでいるとして、警戒していることもわせて考えると……あー、なんだろう?
とりあえず断る必要もないし呼んできてもらえれば話も早く済むだろうから、ガムラを呼んでもらうか。
「……そこまでしてもらうのは悪い気がしますが、お言葉に甘えさせてもらってもいいですか?」
「ええ。こちらから言い出したことですから」
「ならガムラっていうんですけど、わかりますか?」
「ガムラの知り合いの方ですか?」
俺がガムラの名前を出すと、門番の男性は驚愕混じりに尋ね返してきた。その様子は先ほどまでの警戒が薄れているように感じた。
あっ、そうか。もしかして、さっきわざわざ知人を呼んでこようかなんて言ったのは、本当に知人がいるのか確かめようとした?
とすると、そんなことをしてまで警戒するような何か……多分賊のような外敵がいるんだと思う。
そうでなければ人間を警戒する必要なんてないんだから。
「ええ。獣人国でちょっと知り合いまして、こっちに来るなら寄れと」
「そうでしたか。では今呼んできますね」
門番のうち片方の男性が、そう言うと走って村の中へと消えていった。
ガムラに会う前に、残った門番から少しでも情報を集めておこうと思い、適当に話をする。
「……それにしても、なんだか以前と様子が違いますが、何かありましたか?」
「ん? 以前って、あんた前にもきた事があるのか?」
「はい。もう結構前ですけど、ここでガムラと戦いました」
「戦った? あいつとか?」
男性は少し訝しげに眉を寄せて考え込むと、少しした後にハッとしたように口を開いた。
「……ああ思い出した。あんたあの時の狼獣人の子を連れたやつか」
「はい」
「いやあ、あん時とは全然違うからわからなかったよ。そっちの人はあの時の女の子か? 久しぶりだな……と言っても、特に何かあったわけじゃないし、あんた達は俺のことなんてわからないだろうけど」
男性はそう言って肩を竦めたが、まあ覚えていないのは事実だ。立ち寄った村の村人全員を覚えていられるわけがない。
この人が俺たちのことを覚えているのは、俺たちがガムラと戦った事があるからだろう。多分それを見ていた人のうちの一人なんだと思う。
「それにしても、随分と別嬪になったじゃないか。女の成長は早いっていうけど……ハァ~」
「ありがとうございます」
「それで、何かあったんですか?」
感心げにイリンを見つめている門番の男性に笑いかけているイリン。それが愛想笑いだとわかっていても、少しだけ……本当に少しだけ嫉妬してしまった俺は話を先程の村の状況についての話に戻す。
「おっとそうだった。まあこの後ガムラから聞くだろうが……この村を襲ってくる奴がいんだよ」
「襲う? ここはガムラが魔術具を設置してるって言ってましたが……」
あいつの稼いでいる額から考えると、並大抵の防衛力じゃないはずだ。
「おう。それでもそんなもん関係なしに襲う奴はいる。いや、むしろだからこそか?」
「魔術具があるからこそ? ……それって──」
「アンドー!」
男性の言葉に問い返そうとしたところで、誰かが俺の名前を呼びながら走ってきている。
「ガムラ」
「おう! よくきたな!」
ガムラは以前あった時と変わらない様子だったが、普段着のようなものではなく、村の中という場所には似つかわしくない、冒険者としての格好で武装していた。
「ここで話すのもなんだから、こっちこいよ。家に案内してやんぜ」
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