『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―

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王国との戦争

336:友の旅立ち

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 クーデリアがグラティースとクリスティアを呼んだ夕食会は、あの後無事に終えることとなり、三人は魔術具で呼んだ馬車で城へと帰って行った。

 クーデリアはキリーがこの街からいなくなってしまうことに文句を言っていたが、最後には納得とまではいかないが、理解を示して帰っていった。

 そして今はガムラが告白した日から一週間後の早朝。俺たちは街の外へと続く門の前で集まっていた。
 そこに集まっていたメンバーはガムラとキリー。それとその二人を見送るた目に俺とイリンと環ちゃんがいた。

「それじゃあ俺たちはこれで行くな」
「ああ。元気でな。グラティース達が見送りに来れないことを残念がってたけど……」

 どうやらあいつとしては友人の出立を見送るというイベントをしてみたかったらしい。本人が「友人の見送りというものに行ってみたかった」なんて言っていたので勘違いとかではない。
 あいつはこの国の王だ。そんな奴が一個人を見送りに行ったとなればすごいことになるだろう。
 友人という存在に対しては空気が読めなかったり踏み込みすぎたりと少しダメになるが、それくらいの分別はあるようだ。まあ王様やってるわけだし、当然か。

「い、いや、それは……」

 ガムラはグラティースがここに来なかったことにホッとしているが、仮にも相手は一国の王。来なかったことの喜びを表に出していいのか分からず戸惑ってしまっているようだ。

 場所が場所なら不敬罪とかそんな感じで捕まってもおかしくはないし、ガムラの反応もわからないでもない。

「……まあ、元気でなって言っても、そのうちまたお前の村に行くつもりだけどな」

 俺たちはイリンの故郷に行くつもりだが、その後はギルド連合国の方に行こうと思っている。
 ガムラの住んでいる村は、ちょうどその道のりの途中にあるから寄ることになる。まあ、遠回りになったとしても二人の様子を確認する意味でも村には行くつもりだけど。

「そうかよ。なら今回泊めてくれた礼に、今度はこっちが泊めてやるよ。色々準備して待ってるぜ」

 ガムラはそう言って歯を剥き出しにしてニッと笑って手を差し出してきた。
 俺はその手を握り返して笑い返した。

「キリーさん。今までいろいろ教えていただきありがとうございました」
「ガムラさんとお幸せに」

 そんな俺達から少し離れた場所では、イリンと環ちゃんがキリーに挨拶をしてる。

「幸せにって言われても、この後どうなるかなんてわかりゃしないけどね」

 そう言って戯けているキリーはイリン達と笑い合っている。
 この一週間でガムラとのことを言われるのは随分と慣れたようだ。一週間前だったら今みたいなことを言われたら混乱していただろうし、混乱までいかなかったとしても今みたいな返しは出来なかった。良くも悪くも、今まで過ごしてきた環境的に状況への順応が早いだろうと思う。

「ガムラ、また会う時には別れてないことを期待してるよ」
「そんなことにはさせやしねえよ」

 三人で笑い合っているキリー達の様子を見ていた俺は、ガムラにそう言ってみるが、それは見事に自信満々の顔で否定されてしまった。

 そしてそんなふうに話していると、ガラーンガラーンと鐘の音が響き渡った。
 どうやらもう門が開く時間となったらしい。

「おっと時間だね。じゃあ、元気でね。また会える時を楽しみにしてるよ」
「ああ。キリーも元気でな」

 最後にキリーともそう言葉を交わすと、二人は門の外へと向かって歩いていった。

 そんな二人の後ろ姿を見送っていたのだが、その姿はすぐに人混みに紛れてしまい見えなくなった。

「……行ってしまいました」
「ああ、行ったな」

 つい口に出てしまったというように、イリンの口からそんな言葉がこぼれ落ちた。
 イリンはキリーに色々教えてもらったりしていただけに、やはり寂しく感じるのだろう。

 だいたい半年くらいか。俺たちがキリーに会ってから接してきた時間は。

 俺がこっちにきてからまだ一年経ってないことを考えると、結構長い間キリーと接してきたんだなと感慨深いものがある。

「でも、また会えるんですよね」
「うん。そうだね。また、そのうちね」

 そんなふうに俺たちが思い出に浸っていると、俺たちよりも一緒にいた時間が短い環ちゃんがそう言ってきた。

「……じゃあ、帰ろうか」

 二人にそう言うと二人はうなずき、俺たちは家に帰るべく門に背を向けて歩き出した。

 ……でも後一ヶ月もすれば俺たちがこっちにきてから一年か。

 俺は歩きながらふいにそんなことを思った。

 召喚されてから今日に至るまで色々あった。思い返すと全部がいい思い出とはいえないけど、それでも悪いこと以上に良いこともいっぱいあった。

 ……時期としても悪くないし、旅立つための節目としてはちょうど良い、かな。

 俺は左右を歩くイリンと環ちゃんへと視線を向けた。そこにはキリーとガムラについて話し合っている二人の姿があった。
 時折喧嘩することもあるが、それでもこうして笑い合っていられる程度には仲良くなってくれた。
 そんな二人を見ていると思わずフッと笑いを漏らしてしまった。

「アキト様?」
「どうかしましたか?」

 突然笑った俺を不思議そうに見上げる二人。

 そんな二人になんでもないと返して俺は笑いかける。

 家に帰ったら二人にも相談しよう。その結果次第だけど、約一ヶ月後──俺達がこの世界に召喚されてから一年経ったその時に、俺たちもここを旅立つことにしようかな。
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