『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―

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王国との戦争

324:『収納』の秘密

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「それは、どういう意味だ?」

 突然の言葉に顔を顰めつつも、俺はケイノアに問いかける。

「どうもこうもないわよ。あんたは当然みたいにやってるけど、そんなバカみたいな事、普通はできるはずがないじゃない」

 だがそれを聞いても何がおかしいのかわからない。
 それを見かねたケイノアは自身の考えを話し始める。

「いい? わからないみたいだから私が教えてあげる。心して聞きなさい!」

 ……あ、いや。こいつは見かねて説明するんじゃなくて、俺をバカにしてるっていうか、ただ自分の知識を自慢したいだけだこれ。

「まずは収納魔術についてだけど、収納魔術っていうのは、空間に穴を開けて世界の狭間へと繋げて世界になる前の世界を固定化する魔術なの」

 世界の狭間に、世界になる前の世界か。正直なに言ってんだこいつって感じがする。
 だっていきなり世界がどうこうだなんて言われても、突拍子がなさ過ぎるだろ。

「けど世界になる前の世界なんてのはすごく不安定でそれを補強する必要があるわ。それが魔力によって収納量の変化がある理由ね。魔力が少なければ広い世界なんて維持できないもの」

 けど俺の内心なんてお構いなしにケイノアはドンドン話を進めていく。

 もしこれが本当なんだとしたら、今までなんで俺にはスキルが使えなかったのかとかわかるかもしれないのか。
 いやまあ、一応俺が収納しか使えないのは召喚を欲張ったことによる失敗が原因なんだけど、なにをどう失敗したのかまでは分かってない。
 別に分からなくても今更だし困ることはないんだけど、それが分かるとなるとちょっと気になる。

「で、固定化した世界って言っても、まだ明確な世界として存在しているわけじゃないから不安定なのよ。それが生き物を入れられない理由ね。収納魔術が生き物を拒んでるんじゃなくて、魔術が繋いだ先の世界が生き物を拒んでいるの」

 世界の固定化とか言われてもよく分からないけど、生き物を入れられない事にそんな理由があったのか。

 にしても世界が拒む、ねぇ。今までは入らないからと、そういうものだと思ってやって来なかったけど、無理やり入れたらどうなるんだろうか?

「普通は『空間を認識する』なんていう特殊な才能が必要だけど、あんた達は存在がちょっと特殊だからねぇ。異世界から来たってことは、世界の狭間を超えてきたわけだし、もしかしたらその途中でできかけの世界にも触れたのかもしれないわね。だから勇者は全員が収納を使えるのかも」

 なるほど。最初から繋げる先を知ってたから勇者は『収納』スキルを覚える事ができるのか。たしかにそれなら全員が覚えるって言うのにも納得できる。

 でもそうなると勇者以外の異世界人はどうなるんだろうな?

 ……というか今更だけど、こいつなかなかに重要な事を言ってないか?
 普段からそれだけの能力はあると分かってはいたけど、こんな事まで知っているとは思わなかった。なんでこいつはそんな事を知ってるんだ?

「まあそうは言ってもあんたはその中でもさらに特殊よね。それだけ収納に親和性が高いとなると、こっちの世界に来るとき、実際にどこかのできかけの世界に落ちたんじゃない?」

 今まで好きに話させて聞いているだけだった俺だが、その言葉は止めざるを得なかった。

「ちょっと待て、俺はしっかりとここにいるじゃないか」
「それは召喚の魔術があんたを引っ張り上げたからでしょ。召喚されたときに何かおかしな事とかなかったの?」

 いや、そんなことを言われても、もう覚えてないぞ。それに、あの時は混乱しててそこまで気にする余裕なんてなかったし。

「あっ、そういえば、あのとき彰人さんだけ少し遅かったような気が、しなくもないような……」
「なら決まりね。あんたが他にスキルを使えないっていうのも、スキルを覚える前にそのなりかけの世界に落ちて、それと繋がったからよ。つまりスキルに使うはずだった能力を全てその世界の維持に回しちゃったってことね。ま、元々収納に親和性があったってのもあると思うけどね」

 ぼんやりとした答えだが、環ちゃんが当時の事を思い出しながら言うと、ケイノアはそう結論づけた。

 無理やり召喚枠を増やした結果最後までしっかりと呼ぶ事ができず、喚ばれた俺は世界の狭間に落とされたってわけか。で、俺を落としたその召喚魔術にもう一回拾われたと。

 いささか強引な感じはしなくもないが、まあ筋は通ってる。

 今までろくに考えたことはなかったが、もしかしたら召喚失敗の影響がスキル以外にもでる可能性だってあったはずだ。これから先、俺の体に何か異変があったときに召喚失敗の影響の可能性について心配しなくて済むんだから聞く価値はあったな。
 まあそうでなくともそれなり……いやかなり貴重で重要な話ではあったけど。

 それに、収納の応用方法が俺しか使えないって分かって少しほっとしている自分がいる。
 収納の応用について自分から環ちゃんに教えようとしたくせに、いざできないとなるとホッとするなんて、まったく……。

「……ああそうだ。そういえば、なんでお前はそんなに詳しいんだ?」

 一安心し、内心で自分を笑っていたところで、ケイノアに少し気になった事を聞いてみる事にした。

「そんなの調べたからに決まってるじゃない。あれはもう百年くらい前だったわね。……二百年だったかしら? ……まあいつでもいっか。最初は自分の理想のお昼寝空間を作るために頑張ってたんだけど、いろいろやってるうちに部屋が異界化しちゃってね。いや~、あの時は流石に焦ったわ。父さんと母さんにバレたら怒られるってね」

 ……部屋を異界化って……それは怒られるで済むもんでもないだろ?

「けど異界になった部屋を見て思ったのよ。だったら自分の部屋を変えるんじゃなくて、最初から理想の世界を作ればよくない? って」
「その発想はおかしくないか?」
「え……そう? でも自分の秘密基地とか欲しくない?」
「いや、まあそれはわからなくもないけど、普通世界を作るなんて考えないだろ」
「世界って言っても部屋くらいのごく小規模のものだし、無から作るんじゃなくてそれっぽいのを探して改造すれば出来なくもないかな~って」

 かな~、なんて言われても、そうだな、とはうなずけない。
 思わず妹のシアリスの方を見てしまったが、彼女は諦めたような疲れたような色々なものが混ざったような微妙な表情で首を振った。

「いろいろ無茶苦茶ですが、それでもできてしまうのがお姉様なのですよ。……なにせ、お姉さまは『天才』ですから」

 表情以外にも、その言葉には色々な想いが込められているように感じたが、それがどんな理由でどんなものなのかは分からなかった。

「まあね! で、まあいろいろやってみて作れたんだけど、壊れちゃったのよね……」
「壊れたのか」
「そうよ。大体一ヶ月くらいだったかしら? ……あー! あれができてればこんなところにいなくても良かったのにい!」
「人の家に泊まっておいてこんなところか。随分と言ってくれるな」
「あ……えっと、その……か、感謝はしてるわ、よ?」

 なんで目を逸らした上に疑問形なんだよ。一回追い出してやろうか?

「まあいい。今まで疑問だったことがわかってよかったとしておこう」

……それにしても、出来かけの世界だなんていうくらいだから、いつかはれっきとした世界になるんだろうか?
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