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王国との戦争
302:感謝と打算
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辿り着いた先、俺が先日まで世話になっていた治癒の神獣を祀る里には、激しい戦いの後が残されていた。
「これは……」
地面は一部が抉れており、幾つもの建物が壊れている。そしてそのうちの何軒かは完全に倒壊までしている。
「やっぱり襲撃があったのか」
「……戦闘があったのは確かだけど、襲撃では、ないわ……」
俺が里を見回しながら呟くと、先導しているセラーラが首を振った。
「戦闘があったけど襲撃じゃない?」
それはどう言う事だろうか? 襲撃ではない戦闘といえば仲間割れが思いつくが、そうであればもっと険悪な雰囲気が漂っていてもおかしくはない筈だ。だが周りを見てもそんな雰囲気は感じられない。
「それは──」
「詳しい事は神子様と話して。……どこまで言っていいか、何を言えばいいか、まだ私にも整理できてないから」
セラーラはそう言って黙るとそれ以上話す事はなく、俺たちは無言のまま里の中を進んで行った。
「ちょっと待ってて」
そうしてたどり着いた建物の前で、以前この里に来た時のようにチオーナの家から少し離れた場所で待機させられる。
だが前回と違うところは、その家の側にはコーキスが武器を持って待機していたことだ。
目が合ったので手をあげて挨拶をすると、コーキスはこちらへと近づいてきた。
が、その視線は俺よりも俺の背後にあるソーラルの方へと向いている気がする。
だいぶ姿が変わっていると思うが、分かるものなんだろうか?
「久しいな」
「ああ。元気そう……ではない感じか?」
再会してそれほど話していないが、それでもなんとなくだがコーキスの元気がないように感じられた。
「……色々とあってな」
色々とはやはり視線の先にあるソーラルの事だろうか? アイツは里にいられなくなったみたいな事を言ってたが、それが関係しているんだろうと思う。
「それよりも、聞きたいことがあるのだが……貴殿の背後に浮かぶソレは、ソーラルで合っているか?」
「やっぱり分かるのか」
「先日、その姿を見ているのでな」
「見た? こいつのこの姿を?」
こいつは追い出された後にこの姿に変異して俺のところに来たはずだ。それなのにどこで……。
いや、別におかしいことでもないか。あいつはここで変異してから俺のところに来たのであれば、コーキスが見ていてもおかしくはない。
ん? まて。そうするとさっきセラーラの言ってた襲撃じゃないってのはソーラルか?
「……って事は、もしかしての戦いの後って……」
「ソーラルだ。ソレ以外にも襲撃はあったが、主なものはその時にできたものだ」
「ああ、やっぱりそうだったのか……」
「それで、ソーラルは……死んだのだろうか?」
コーキスがいつもより硬い雰囲気を出して尋ねてきた。やはり当然と言うべきか、友人のことが心配なのだろう。
「いや、生きてるよ。どういうわけか、俺が戦争の邪魔をしてきた後、ここに戻ってくる途中にやってな。手遅れかもしれないけど、一応、な……」
これほどまでに姿が変わって仕舞えば、元の姿に戻ることなんてできないかもしれない。けど、そうじゃないかも知れない。
おrが首を横に振って答えると、コーキスは安心したのかその雰囲気を幾分か和らげた。
「そうか……。その状態のソーラルが襲ってきたことを考えれば、殺してもおかしくはなかったはずだ。だがそれでも貴殿は殺さずに連れてきてくれた」
俺はソーラルを殺そうかとも思った。なのに殺さずにここまで連れてきたのは、偶然によるところが大きい。
あの戦いの時。あの時にソーラルが気を失わなければ、俺はこいつを殺していただろう。
今目が覚めていないのか、その理由さえ分かっていない。もし途中で起きて暴れるようならその時こそ殺していたかも知れない。
だからほとんど偶然だ。
「アンドー殿。貴殿に感謝を」
そんなかなりいい加減な理由で連れてきたと言うのに、真剣に感謝をしてくるコーキス。そのことになんとなく気まずくなってしまった。
「気にしないでくれ。こっちにも打算があるんだ」
正直、打算云々はここへくる途中で思いついたが、なかなか有用なのではないかと思っている。
その打算の内容とは、ソーラルを生きたままの状態でここに連れてくれば、環ちゃんの中に残っているであろう洗脳の解除を手伝ってもらえるのではないかという事だ。
環ちゃんの中にはまだ洗脳の魔術が残っている。
こうして王国を離れて俺についてきていることを思えば完全な状態ではないのだろうけど、残っている事には違いない。
恐らくはそれが彼女の中で変な風に作用して色々とおかしな感じになっているんだと思う。
まあこれには俺の、そうであって欲しいという願望が入っているのも否定しない。
中途半端に残った洗脳の魔術の影響さえなくなれば、環ちゃんは『普通』に戻ると信じたいのだ。
だから俺は危険だと何度も殺そうと思いながらもソーラルを捨てずにここまで運んできたのだ。
「だとしても、だ」
だがそれでもなお感謝を示すソーラル。
「お帰りなさい、アンドーさん」
そうこうしているうちに、チオーナの家から家主でありこの里の実質的なまとめ役でもあるチオーナ本人が出てきた。
「チオーナ。ああ、ただいま」
「そちらはアンドーさんのお仲間で良いのかしら?」
「ああ。俺が助けたかったこの一人で、滝谷環ちゃんだ」
「ご紹介に預かりました、滝谷環です。よろしくお願いします」
環ちゃんはそう言ってしっかりとした挨拶をするが、なんでこんなに礼儀正しくしてられるんだ?
そんなことができるんだったら俺に対してももっと、こう、普通にして欲しいんだけどな……。
「はい。こちらこそよろしくお願いしますね」
チオーナは環ちゃんに向かってにこりと笑うと、家の中へと招くようにドアを開いた。
「とりあえず、ここで話しをするのもなんですから、どうぞ中へ」
「これは……」
地面は一部が抉れており、幾つもの建物が壊れている。そしてそのうちの何軒かは完全に倒壊までしている。
「やっぱり襲撃があったのか」
「……戦闘があったのは確かだけど、襲撃では、ないわ……」
俺が里を見回しながら呟くと、先導しているセラーラが首を振った。
「戦闘があったけど襲撃じゃない?」
それはどう言う事だろうか? 襲撃ではない戦闘といえば仲間割れが思いつくが、そうであればもっと険悪な雰囲気が漂っていてもおかしくはない筈だ。だが周りを見てもそんな雰囲気は感じられない。
「それは──」
「詳しい事は神子様と話して。……どこまで言っていいか、何を言えばいいか、まだ私にも整理できてないから」
セラーラはそう言って黙るとそれ以上話す事はなく、俺たちは無言のまま里の中を進んで行った。
「ちょっと待ってて」
そうしてたどり着いた建物の前で、以前この里に来た時のようにチオーナの家から少し離れた場所で待機させられる。
だが前回と違うところは、その家の側にはコーキスが武器を持って待機していたことだ。
目が合ったので手をあげて挨拶をすると、コーキスはこちらへと近づいてきた。
が、その視線は俺よりも俺の背後にあるソーラルの方へと向いている気がする。
だいぶ姿が変わっていると思うが、分かるものなんだろうか?
「久しいな」
「ああ。元気そう……ではない感じか?」
再会してそれほど話していないが、それでもなんとなくだがコーキスの元気がないように感じられた。
「……色々とあってな」
色々とはやはり視線の先にあるソーラルの事だろうか? アイツは里にいられなくなったみたいな事を言ってたが、それが関係しているんだろうと思う。
「それよりも、聞きたいことがあるのだが……貴殿の背後に浮かぶソレは、ソーラルで合っているか?」
「やっぱり分かるのか」
「先日、その姿を見ているのでな」
「見た? こいつのこの姿を?」
こいつは追い出された後にこの姿に変異して俺のところに来たはずだ。それなのにどこで……。
いや、別におかしいことでもないか。あいつはここで変異してから俺のところに来たのであれば、コーキスが見ていてもおかしくはない。
ん? まて。そうするとさっきセラーラの言ってた襲撃じゃないってのはソーラルか?
「……って事は、もしかしての戦いの後って……」
「ソーラルだ。ソレ以外にも襲撃はあったが、主なものはその時にできたものだ」
「ああ、やっぱりそうだったのか……」
「それで、ソーラルは……死んだのだろうか?」
コーキスがいつもより硬い雰囲気を出して尋ねてきた。やはり当然と言うべきか、友人のことが心配なのだろう。
「いや、生きてるよ。どういうわけか、俺が戦争の邪魔をしてきた後、ここに戻ってくる途中にやってな。手遅れかもしれないけど、一応、な……」
これほどまでに姿が変わって仕舞えば、元の姿に戻ることなんてできないかもしれない。けど、そうじゃないかも知れない。
おrが首を横に振って答えると、コーキスは安心したのかその雰囲気を幾分か和らげた。
「そうか……。その状態のソーラルが襲ってきたことを考えれば、殺してもおかしくはなかったはずだ。だがそれでも貴殿は殺さずに連れてきてくれた」
俺はソーラルを殺そうかとも思った。なのに殺さずにここまで連れてきたのは、偶然によるところが大きい。
あの戦いの時。あの時にソーラルが気を失わなければ、俺はこいつを殺していただろう。
今目が覚めていないのか、その理由さえ分かっていない。もし途中で起きて暴れるようならその時こそ殺していたかも知れない。
だからほとんど偶然だ。
「アンドー殿。貴殿に感謝を」
そんなかなりいい加減な理由で連れてきたと言うのに、真剣に感謝をしてくるコーキス。そのことになんとなく気まずくなってしまった。
「気にしないでくれ。こっちにも打算があるんだ」
正直、打算云々はここへくる途中で思いついたが、なかなか有用なのではないかと思っている。
その打算の内容とは、ソーラルを生きたままの状態でここに連れてくれば、環ちゃんの中に残っているであろう洗脳の解除を手伝ってもらえるのではないかという事だ。
環ちゃんの中にはまだ洗脳の魔術が残っている。
こうして王国を離れて俺についてきていることを思えば完全な状態ではないのだろうけど、残っている事には違いない。
恐らくはそれが彼女の中で変な風に作用して色々とおかしな感じになっているんだと思う。
まあこれには俺の、そうであって欲しいという願望が入っているのも否定しない。
中途半端に残った洗脳の魔術の影響さえなくなれば、環ちゃんは『普通』に戻ると信じたいのだ。
だから俺は危険だと何度も殺そうと思いながらもソーラルを捨てずにここまで運んできたのだ。
「だとしても、だ」
だがそれでもなお感謝を示すソーラル。
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「チオーナ。ああ、ただいま」
「そちらはアンドーさんのお仲間で良いのかしら?」
「ああ。俺が助けたかったこの一人で、滝谷環ちゃんだ」
「ご紹介に預かりました、滝谷環です。よろしくお願いします」
環ちゃんはそう言ってしっかりとした挨拶をするが、なんでこんなに礼儀正しくしてられるんだ?
そんなことができるんだったら俺に対してももっと、こう、普通にして欲しいんだけどな……。
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