『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―

文字の大きさ
131 / 499
獣人国での冬

197:イリンの部下

しおりを挟む
「……これからは言う事を聞くっていうんなら、まあ良いだろう」

 やっぱりエルフとの繋がりっていうのは欲しい。困った事があった時に、何かに使えるかもしれないし。

「だが一応今後の話はしておいた方が良いな。ここじゃなんだし、中に入るか」
「お待ち下さい。まずはその方を綺麗にした方がよろしいかと」
「ん? ……そうだな」

 イリンに言われたのでケイノアのことを見ると、そういえば色々酷い格好をしていたなと思い出した。

「でも、風呂とか用意してないしどうする? 俺は水を出すくらいしか出来ないぞ」

 生憎とお湯は収納してない。収納から水を出す事ぐらいなら出来るが、それで良いだろうか?

「お任せください。──ケイノアさん、こちらを使ってください」
「え? なにこれ?」

 イリンがケイノアに何かを渡す。どうやらそれはケイノアも見たことがないもののようだ。

「身を清めるための魔術具です」
「ヘェ~、こっちにはそんなのがあるのね~。わかったわ!」

 ……身を清めるための魔術具? それって、あのちょっとアレな体を這うスライムの事か? そういえばイリンはなんでか持ってたな。……え? あれ使うの?

「──んっ。……んあっ! な、なに、これ……!」

 イリンが渡したのは俺の予想通りの物だったようで、ケイノアの全身をスライムが絡みつき這い回っている。

 数秒もすると魔術具の効果は切れたようで、スライムはシュルシュルと魔術具を持っている手に集まり、溶けるように消えてしまった。

「っはあ、はあ……な、なんなのよ、今の……!」

 ケイノアが乱れた息で自分の体を抱くようにした状態で問いかけた。

「洗浄の魔術具です。使えば油や血であっても綺麗に落としてくれます」

 だが、イリンは淡々と話すだけ。二人の間の温度差がひどいな。

「うう~。た、確かにそうかもしれないけど……!」
「ほら。汚れが落ちたんなら中に入れ」

 これ以上話してもろくな話合いにならないだろうと、俺は二人の会話に割り込んで家の中に誘導する事にした。

「で、なんであんな事をしたのか聞かせてもらおうか」
「だ、だって、お金が欲しかったし、家も欲しかったから、ああすれば一石二鳥かなって……」

 俺がどうにか出来なくても、この家は俺が直接この国の王から貰ったものだ。貸しを作る事になるが、最悪はどうにかするために動くだろう。

「というか、お前は俺たちを家の中に入れてからはどうするつもりだったんだよ?」
「え? どうにかって、なにが? お金もらって中に入れたらそれで終わりよ?」
「……お前、中に入った俺たちがお前を捕まえるとは思わなかったのか?」
「え……」

 ああ、うん。この様子からしてそんな事カケラほども思ってなかったんだろうなぁ。
 こいつ、やっぱり悪いことするのに向いてないわ。計画がガバガバすぎる。

「はあ……。まあ、いい。それよりも今後についてだ」

 なんというかこいつは怒りづらいんだよなぁ。やってる事自体は犯罪だが、本人を見てるとどうもな……

「今後、お前はこの家で暮らしてもらって構わないが、俺たちに迷惑をかけるような事をしたらすぐに衛兵に突き出す。加えて、依頼達成後にお前に渡すはずだった報酬は減らさせてもらう」
「なんでよ! 減らされたら私の借金が返せないじゃない!」
「あんな事をしておいてなんのペナルティーがないとでも思ったのか? 借金は自力でどうにかしろ。──イリンからは何か言いたいことはあるか?」

 項垂れるケイノアを無視して背後に控えていたイリンに聞いた。

「……では、一つお許しいただけるのでしたら、その方を私の下で働かせてもよろしいでしょうか?」
「お前の下で? ……まあいいか。どうせやることないだろうし」

 この家だってそれなりに広いし、電化製品とかないこの世界じゃやる事だっていっぱいあるだろう。掃除とか洗濯とか。
 金がないところを住まわせるんだから、手伝わせても文句はない筈──いや、こいつのことだし文句はあるか。まあ良いか。

「ちょっと、勝手に決めないでよ! 私にだってやる事くらいあるわよ!」
「たとえば?」
「え? えっと……寝るとかご飯食べるとか?」
「そうか。──イリン今日からこいつはお前の部下だ。精々こき使ってくれ」
「何でよ!」
「じゃあ住む場所も食事も要らないのか? それで生活できるのか、お前?」
「むぐっ! でも……ああもう! これからよろしくお願いしますぅ!」

 何だか投げやりな返事になってたが、気にする必要はないだろう。

「働くんだったら給料ぐらい出すからそれで納得しろ」

 やっぱり働かせる以上は金を渡さないと落ち着かない。
 そういえば、一応イリンにも渡してるはずなのに使ってるの見たことないな。

「お金が貯まったら出ていくわよ!」
「貯まれば良いな」

 こいつじゃ多分独り立ちする金なんてたまらない気がするけどな。
 そもそも給料は出すが、それでもこの国の常識的な給料しか出すつもりはない。それだけでは借金を返せるほどにはないから貯めるのは無理だろう。
しおりを挟む
感想 317

あなたにおすすめの小説

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。 『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。 2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。  主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。