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1巻

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 そして今、俺はメイドさんの案内で部屋に向かっている。
 彼女たちが着ているのは、俺の知っているものとは若干違うが、まごうことなきメイド服である。
 自己主張しすぎず、なおかつ作業の邪魔にならない程度の装飾。だがそれは決して地味というわけではなく、可愛らしさに溢れたものとなっている。
 控えめにいって素晴らしい。この服を作った奴とは仲良くなれそうなくらい、俺の趣味しゅみと見事に一致している。どうにかして会えないものか。

「こちらがスズキ様のお部屋となります」

 そんなバカなことを考えながら歩いていると、部屋に到着した。
 それなりに金がかかっていそうな扉を開けると、扉と同じく高級そうな家具が置かれていた。

「ああ、ありがとうございます……ご存知かと思いますが、私の名は鈴木彰人と申します。以後よろしくお願いします」

 俺は案内してくれたメイドさんにお礼を言い、自己紹介する。

「ご丁寧ていねいにありがとうございます。ですが私ども使用人にそのような態度は必要ありません。どうぞ普段通りの態度で接していただければと思います」
「そう言っていただけるのはありがたいのですが、これはくせみたいなものでして。できる限り気をつけるようにはしてみます」
「いえ、私こそ出過ぎたことを申しました。申し訳ありません」

 綺麗なお辞儀じぎをするメイドさん。
 でも実際のところ、友人でも家族でもない会ったばかりの人に普段通りの対応って難しいよな。

「この部屋は自由に使ってもいいのですか?」
「はい。ここはスズキ様専用となっておりますので。申し遅れましたが、私はスズキ様の専属となりました、アリアン・アニストンです。どのようなことでも従いますので、ご自由にご命令くださいませ」

 そう言われるが、これまで誰かを使うようなことがなかったので正直困る。

「それでは私はこちらで待機させていただきます。いつでもお声がけください」
「え?」

 そう言って部屋の隅に立ち、動こうとしないアリアン。
 だが、そこにいられると困る。これじゃあ自由に動けないじゃないか。
 そう思って見つめていると、首をかしげられてしまった。

「何か御用でしょうか」
「いや、用ってわけじゃないんですが……」

 はっきり言っていいものか悩む。
 やりたいことがあるから出ていけ、なんて言ったら見られては困るのかと怪しまれるだろうし、かといって退室してもらわなければ何もできない。
 だから、仕方ないけど最初にはっきりと言っておくことにした。

「あー、その。実は……今までメイドさんに世話してもらったことがなくてですね。ずっとそばにいられるのはちょっと落ち着かなくて。必要な時には呼びますから、それまでは別室で待機したり今まで通り他の仕事をしたりしていてください」

 ここは「出て行ってもらっていいですか?」という疑問形ではなく「出て行ってください」と命令するのが重要だ。そうすれば『命令』なのだから向こうは従うしかない。

「ですが、そういたしますとスズキ様にご不便をおかけしてしまうかもしれません」
「構いませんよ。自分で望んだことですし」
「……かしこまりました。それでは、何か御用がございましたら、こちらのベルをお使いください。私のもとに知らせが来ますので、即座にスズキ様のもとへ参ります」

 了承するまでに少し間があったのは、部屋には残りたいがここで食い下がれば俺に怪しまれると思ったからか、それともただ単に職業意識からなのか。
 それにこの渡されたベル。すぐに来るって言ってたけど『この部屋』ではなくて『俺のもと』って言ってた。もしかして、このベルは発信機のようなものなんじゃないか? ……流石に疑いすぎだろうか。
 ともあれ、怪しまれないためにも受け取りを拒否することはできない。

「ありがとうございます。ではアニストンさん、これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

 アリアンが出ていったのを見送った俺は、改めて部屋の中を見回す。
 実は昔、泊まったホテルに盗聴器とうちょうきが仕掛けられていたことがあった。それ以来、初めて泊まる場所では最初に調べるようにしているのだ。
 部屋にあるものは机、ベッド、サイドチェスト、本棚、それとクローゼット。そのどれもが金がかかっているんだろうなと思わせるような造りをしている。
 軽く調べた後、脱いだジャケットをサイドチェストの上に置き、ボフンッとベッドに倒れこんだ。
 色々あって疲れたが、このまま寝るわけにはいかない。
 今のうちに今後の対策を考えなければ、この先、生き残ることができないだろう。

「……それで、これからどうするかな」

 この世界に来てから少ししか経ってないけど、それでもこのままここにいちゃいけないと感じていた。
 王女や王の言葉、それに態度の端々に、俺たちを見下している雰囲気が感じられるのだ。
 アリアンたちメイドをつけてくれたのだって、慎重しんちょうに考えてみれば、不便を感じないようにって理由だけじゃなくて、監視の意味合いが強いだろう。
 もちろん考えすぎかもしれないけど、用心するに越したことはない。
 俺はベッドに倒れたまま、右手で横にあったまくらに触って収納スキルを使う。
 すると一瞬の黒い光と共に、今まで触っていた筈の枕が消え去っていた。
 起き上がってから、今度は左手から枕を出すイメージで収納を使ってみると、左の手の平の上に枕が出現した。


 うん。やっぱり予想した通りの効果だな。
 その後何回か、他のものを使って試してみた。
 まずスキルの使い方については、さっき試したように、手で触ったものをしまおうと思うだけで自由にしまうことができ、しまったものは好きに出すことができた。それに、このスキルの有用性にちょっとした可能性も見出みいだせた。
 容量がどれくらいかは分からなかったが、感覚的にいくらでも入るんじゃないかと思える。
 俺は再び寝転がり、スキルをどう使っていくか考える。
 これだけでも十分チートと呼べるんだろうけど……他の勇者として呼ばれた子たちは、更にもう一つスキルを持っている以上、これじゃ足りない。
 だから俺は、俺の唯一ともいえる武器であるこの収納スキルを、どうにかして『切り札』にまで仕上げなければならない。
 それも誰にも気づかれずに、だ。
 気づかれてしまえば他の勇者に真似されて、俺のアドバンテージがなくなってしまうからな。
 海斗くんたち四人とは、仲良くなって彼らの能力を探りつつ、自分の能力はバレないようにきたえていかなければならない。
 それと同時に、この国の奴らに処分されないようにうまく立ち回る必要もある。俺が有用だと分かれば、すぐに殺されることはない筈……だといいな。
 そんな風に今後のことや自分の能力について考えていると、コンコンと少し控えめにドアをたたく音が聞こえた。
 誰だろうか? この世界に俺を訪ねてくるような知り合いがいるわけない。
 王女がわざわざ来る筈もないし、アリアンが戻ってきたのか?

「はい。どなたでしょうか?」
「あ、えっと俺、神崎です。今、少しお時間をもらえますか?」
「ああ、今開けるよ」

 横になっていた体を起こしてドアを開けると、そこには一緒に召喚された海斗くんがいた。

「どうしたんだい。神崎……海斗くん、だったかな?」
「はい! そうです」
「それで何か用かな?」
「あっ。あの、状況が状況ですし、一度みんなで話し合えないかな? と思いまして」

 ……まずい。彼らにこんな提案をされるとは。
 ここは俺から動いて話し合いの場を設けるべきだった。
 頼れる大人ポジションを築いておけば、今後多少は動きやすくなった筈だ。
 なのにしょぱなからミスするとは……でもまだ平気だ。この程度ならこれから挽回ばんかいできる。

「ああ、そうだね。確かにその必要があるか……すまない。こういう場合は年長者である俺が提案するべきだっただろう」
「い、いえ! 俺はみんなと話し合うことができましたから。その、鈴木さんを呼ぶのもその話し合いの中で出た話で……」
「気にしなくていいよ。君たちも大変だっただろうし――ところで『みんな』というのは他に呼ばれた子全員かい?」

 俺のことを忘れていたのを心苦しく思っているようなので、話題を変えてあげる。

「あっ、いえ。さっき話し合ったのは俺の他に、女の子二人って言えば分かりますか?」
「斎藤桜さんと滝谷環さん。で合ってるかな?」
「はい。その二人です……それでどうでしょうか? 話し合いに参加してくれますか?」

 ここは参加しておいた方がいいだろう。というか参加しないわけにはいかない。
 ここで断れば、今後彼らの力が必要になった時に困るからな。

「もちろん。場所は君の部屋かな?」
「はい。案内します」

 俺は部屋を出て海斗くんの部屋へと向かう。
 召喚された者――俺たちの部屋は近い場所にまとめられているのですぐに着いた。

「戻ったよ」
「あ、おかえり」
「おかえりなさい……鈴木さん、来てくれたんですね」

 海斗くんの部屋には、本人が言っていたように桜ちゃんと環ちゃんがいた。他に永岡という少年もいる。
 が、専属としてつけられたメイドさんはいない。部屋の前にもいなかったし、どうやら彼らも待機を命じたらしい。

「じゃあそろったから早速始めようか」

 そう言って海斗くんが俺たちを見回すが、このまま進められるのはまずい。
 いや、まずいということはないんだけど、できれば俺の存在をアピールして彼らの内側に入り込みたい。
 なので俺は小細工をするためにスッと手を挙げる。

「話し合いを始める前に少しいいかな?」
「あ、はい。どうぞ」
「ありがとう……まずは君たちに謝罪をしたい。さっき海斗くんにも言ったんだけど、本当なら、年長者である俺がこういった話し合いの場を設けるべきだった。それなのに、そのことに気づかず君たちに気を遣わせてしまった。申し訳ない」
「そんな! さっきも言いましたけど気にしないでください」
「そうです! こんな状況ですからみんなで協力しないと」

 海斗くんと桜ちゃんの二人の言葉に、環ちゃんが頷いている。永岡少年は何の反応も示していないが、まぁいいか。

「そう言ってもらえるとありがたい――俺からは以上だ。話を遮ってしまってすまなかった」
「いえ――それじゃあ話し合いを始めようか。内容は現状の確認と今後の対応について、だ」

 俺が感謝を告げると、海斗くんからの話が始まる。

「まずは現状の確認から」

 海斗くんはこの世界に来てから今に至るまでの流れを、所々環ちゃんの補足を受けながら改めて整理していく。分かりにくいところもなく、しっかり状況がまとめられていた。
 しかしこうしてみると、完全に主人公属性だよな、海斗くんって。俺は勇者の証であるらしい固有スキルもないし、主人公ではないな。

「ここまではみんないいか?」

 海斗くんは語り終えると、俺たちを見回して一度確認を取る。ちゃんと理解できているか確認するのは大事だからな。
 俺は頷いて自分の意思を示す。永岡少年の反応はないが、反論もしないので理解はしているのだろう。
 それを見て、海斗くんは口を開く。

「じゃあ次は今後の対応についてだ。まず彼らに協力するかしないかを確認したい……俺としては、彼らに協力してあげたい。困っている人がいるなら助けたいんだ」

 うんうん、まさに『勇者』って感じの子だなぁ。今回、俺はこの子の召喚に巻き込まれたって感じなのかな?

「桜はどう思ってる?」
「私も助けてあげたいな。わざわざ違う世界から勇者を呼ぶくらいなんだし、とっても大変なんだと思うから」

 二次元オタク疑惑のある桜ちゃんも、この国の奴らに協力したいみたいだ。しかし疑うことはしないのか? それとも本当に漫画やゲームの主人公だと思っている?

「じゃあ次。環はどう思う?」
「桜には悪いけど私は反対ね。『勇者の召喚』なんて言ってるけど、私たちの同意なく勝手に連れてきてる時点で、これって誘拐ゆうかいでしょ? そんな人たちに協力したいとは思えないわね」

 まあそうだろう。これがこの状況における正しい一般人の反応と言える。
 でも二人とも迷うことなく答えてたな。ここまでは三人の中で話が済んでいたのか。

「次は……永岡。頼めるか」
「…………」

 海斗くんが、一人だけ離れた場所に座っていた永岡少年に話しかけたが返事がない。
 永岡少年は腕を組み目をつぶっている。でもこれは寝ているわけじゃないな。寝ているにしては体勢がおかしい。

「おい、永岡! 大事な話なんだから寝るなよ!」
「あ? ……ああ。で、なんだって?」
「お前!」

 その反応に、海斗くんは怒りをあらわにして立ち上がる。が、その途中で横にいた環ちゃんに腕をつかまれ再び席に座らされた。

「落ち着きなさい海斗。今は話し合いの場よ……永岡君も、もう少し真面目に話を聞いてもいいんじゃないのかしら? こんな状況なわけだし、みんなで協力――」

 ――ガタリ
 環ちゃんの話の途中で永岡少年が椅子から立ち上がった。

「うるせぇよ、ここは学校じゃねぇ。それどころか、日本ですらない『異世界』なんだろ。何でお前らにグダグダ言われなきゃならねぇんだ。俺は勝手にやる。もうこんなくそみてぇな話し合いになんか呼ぶんじゃねえぞ」
「あ、待て永岡!」

 海斗くんが引き止めるが、永岡少年は振り返ることすらなく部屋を出て行った。
 バタンッとドアが閉まる音が部屋に響き、みんな無言になる。
 どうしようか。彼との関係は聞かない方が無難か?
 いや、ここで確認しておかないと彼らへの対応を間違えるかもしれないから聞いておこう。
 それに少しでも秘密を知ることで、この子たちとの距離が縮まるかもしれないからな。まあそうだといいなっていう願望でしかないけど。

「……あー、彼と君たちとの関係を聞いてもいいかな」
「……そうですね。話しておかないと、ですよね」

 それから海斗くんが話してくれた内容は少し長かったが、要約するとこんな感じだ。
 永岡少年は学友をいじめていた。海斗くんはそれを止めた。二人は殴り合いにはならなかったものの喧嘩けんかした。以来、ことあるごとに対立している。
 まあよくある……か分からないけど、話としてはよく聞くたぐいのものだ。

「そうか。そういうことなら今後、彼のことは気をつけておくよ。とりあえず今は話を戻そうか」
「そうですね。ごめんなさい話が逸れてしまって」
「なに、気にしなくてもいいよ。俺も最初に時間を取ってもらったし。それで、次は俺の考えを言えばいいのかな」
「あ、はい。お願いします」

 あっさりと流されたことが意外だったのか、海斗くんは驚きつつも頷く。
 こういう話は深く入り込むと面倒だからね。あんまり積極的に首を突っ込みたくない。もちろん相談されれば対応するけど、今はまだ俺たちはそんな間柄じゃない。
 それに俺は今、自分のことで精一杯だ。
 なので、話を戻して今後について語る。

「俺の考えは協力するかしないかじゃなくて、協力と思う」
「するしかない、ですか?」
「そうだ。仮に協力しなかった場合、どうなると思う?」
「元の場所に帰してもらう……ではダメなのですか?」

 環ちゃんが聞いてくるけど、それは無理だろう。
 これまで読んできたラノベでも、帰還方法のない召喚は多かった。
 創作の話だと言われればそれまでだが、しかし今起こっているのも創作みたいな出来事なのだ。そう考えれば、多少は参考になる筈だ。
 俺は首を横に振る。

「それができればいいんだけどね。もしできなかったらどうする?」
「それは……」
「最悪の事態を想定しておいた方がいいと思うんだ」
「そうですね」

 よどむ環ちゃんに代わって海斗くんが頷いた。

「で、さっき協力って言った理由だけど……君たちは、今からこの世界で生きてくださいって放り出されても、生きていけるかい? スキルがあるとはいえ、その有効な使い方も知らず、この世界の知識も常識もない状態で、国王が助けを求めるような危険な存在がいる世界を、無事に生き残ることができるのかい?」

 そう言うと誰からも反論がない。
 海斗くんと環ちゃんだけじゃなくて、どこか楽観視していたような桜ちゃんすらも真剣に考え込んでいた。
 このままいけるか?

「この国に協力するにしても出て行くにしても、俺たちは力と知識をつける必要がある。そのためにも、最低でも二ヶ月程度はここで世話になる必要があって、その間には協力を求められるだろう……それが協力って意味だよ」

 まあ正直、あの魔法使いの爺さんの知識もあるから、そこまで大変ではないと思うけどね。

「……その『最低でも二ヶ月』と言った理由はなんですか?」
「力にしろ知識にしろ、身につくまでにそれくらいかかるからだよ」

 海斗くんの疑問にすかさず答える。
 目の前の子供たちが俺にとって都合よく行動してくれるように、適当にそれっぽいことを言って彼らをだます。
 そのことに罪悪感がないわけじゃないけど、まずは自分の命が最優先だ。悪いね。

「体を鍛え始めて一ヶ月で変化が出てきて、そこから馴染なじませるのに更に一ヶ月かかる。それに最低限の知識を身につけるだけなら短時間で済むけど、いざって時に間違えないような常識レベルになるには大体二ヶ月はかかるからね。本当は半年は欲しいところだけど……俺たちにはあの魔法使いの知識もあるから、二ヶ月で十分だと思うよ」
「なるほど。答えていただきありがとうございました。鈴木さん」
「これくらいどうってことないさ。それにそんなかしこまらなくてもいいよ。まぁそんなわけで、俺の考えとしては、今のところは彼らに協力するしかないと思う……そうは言っても、危険を感じたらすぐに逃げるつもりではいるけどね」

 最後は冗談じょうだんめかして言う。それを聞いて海斗くんと桜ちゃんは納得したようにうんうんと頷いていた。
 環ちゃんは俺の説明について考えているようだ。ここで素直に騙されてくれると楽なんだけど……どうなるかな?

「貴重な意見ありがとうございました。やっぱり大人の人がいると違いますね」
「はは、まあ伊達だてに大人やってきたわけじゃないからね」

 海斗くんが言うが、この子と桜ちゃんは素直すぎると思う。まあこんな状態だし、同じ状況にいる大人を信じたいんだろうけどね。いきなり知らない場所に連れてこられて、俺の言葉が本当か調べる方法もないんだから仕方ないとも思うけど。
 でも、肝心の環ちゃんがまだ考えている様子だ。もうひと押し、何か言った方がいいか?
 俺が悩んでいると環ちゃんは顔を上げて口を開いた。

「ひとまず結論をまとめましょうか」

 異論はないので俺たち三人は頷く。

「これからの二ヶ月はこの国の人たちに協力して、その後の方針はまたその時に……ということでいいかしら?」
「ひとまずはそれでいいんじゃないかな」
「そだね。でもできることなら最後まで協力してあげたいな」

 海斗くんと桜ちゃんの返事に、環ちゃんが頷く。

「それは私もそう思うけど、まずはこの世界における自分たちの安全を確保しないと」

 どうやら彼女も、ひとまずは俺の言葉を信じたようだ。よかった。
 この様子なら彼らからの信頼を得られただろう。いずれは彼らの輪の中に入れるようにならないと。
 そう結論が出たところで、メイドが呼びにきた。

「どうやらもう夕食の時間のようだね」
「そうですね。ギリギリでしたけど話がまとまってよかったです」
「ほんとだよ。王宮でのご飯なんて初めてだけど、どんなのだろ?」

 海斗くんに続いた桜ちゃんの言葉に、環ちゃんが呆れたようにため息を吐く。

「はあ、桜。あなたはもう少し危機感を持ちなさいよ」
「はは。まあでも、こんな時だからこそ危機感を持ちすぎない人が必要なのかもしれないね」
「そうだよ。私はこのままの私でいいの」

 あまり真剣に考えられすぎても困るから桜ちゃんをフォローしておく。
 するとそれに便乗してと胸を張る桜ちゃん。
 ……フォローした俺が言うのもなんだけど、やっぱり君はもう少し緊張感を持った方がいいと思うよ。
 そうして俺たちは談笑しながら食堂へと向かった。


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