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序章

3話 願いと条件

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「一応言っておくけど娘だったのは前世であって今生の君とはまったく関係ないからね」

 衝撃の事実に打ちひしがれる俺に神様の冷静なツッコミが突き刺さった。

「そ、それでも前世で親子関係だったのでしょう? 今の俺と関係なくっても助けられなかったって聞かされたらやっぱりちょっと……」

「ま、気持ちは解るよ。ショックついでに言っちゃうけど彼女の呪いはまだ継続している。次の生でも同じような状況になるだろうね」

 一度死に、悲惨な人生を歩まされ再び死を迎えまだ赦されないというのか。今の俺と関係ないとはいえ罰を受ける原因となった出来事は俺の娘として生きていた時なんだ。何とかしてあげたい。

「神様。彼女の呪いを解いてあげてもらえないでしょうか……」

「悪いけどそれはできないね」

 言うと神様は手のひらの上に黒い炎のような何かを浮かばせた。

「これは彼女の魂だ。清い魂ほど白く澄んだ色をしているものだが、見てみなよ。真っ黒だろう? 彼女の罪は一度や二度死んだ程度では少しも浄化されないんだよ。僕が掛けた呪いは罰を与える事で罪を少しずつ魂を浄化させる役割があるんだ」

「つまり、魂が完全に浄化されるまで呪いを解く気はない。という事ですか」

「そういうことになるね」

「だったら……。だったら俺に何か出来ることはありませんか? 彼女の罪を少しでも軽くするために出来る事は」

「ふむ。ない事もない」

「ほ、本当ですか!」

 彼女を救うために俺にできることがあるなら少しでも何かをしたい。

「僕が管理する世界に『アルグランデ』という世界がある。前世の君や君の娘が生きていた世界に当たるんだが、この世界に住まう人々を救ってもらえたら、その分だけ彼女の罪を赦そう」

「その、アルグランデ? という世界を救うというのは具体的には何をすればいいのでしょう。漫画とかゲームみたいに悪の魔王とかが暴れまわっててそれを倒せばいいとかですか?」

「君が生きていた時代辺りには魔王と呼ばれる者もいたけど、今のアルグランデにはそういう判りやすい悪人っていうのはそうそういないね」

「それならアルグランデを救うっていうのは一体……?」

 世界の危機を救う代わりに、という話でないのなら一体その世界で何をすればいいのだろうか。

「あぁ、勘違いしないで欲しい。世界を救うのではなくて世界に住む人々を救うんだ。君の娘さんがしでかした滅亡の危機は過ぎ去ったとはいえ、街の掲示板に載るような小さな犯罪や日常のトラブルに悩まされる人は多い。そういった人達を救うのさ」

 救う、とか大袈裟に言ってはいるがそれって要は何でも屋みたいな物じゃないだろうか。

「地味だと思うだろうけど、こういった小さな善行も魂を輝かせる素なんだよ」

 思っていた物との違いに拍子抜けこそしたけど、彼女の呪いを解きたいという俺の気持ちは嘘ではない。

「分かりました。俺、アルグランデに住む人々を救います!」

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