親友の人形

夜船 銀

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親友の人形

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その人形はある少女の親友である。

その人形はその少女の10歳の誕生日に贈られたものでした。

それからはいつもいっしょにいました。

怒られたあとには二人でママの悪口を言った。

不安でたまらない夜には抱き合って、慰め合った。

二人は親友だった。

しかしやがて月日は流れ、少女は少しずつ大人になっていきました。

そしてそれに伴うように人形の定位置も少しずつ変わっていきました。

はじめは一緒に寝るためにベットの上に置かれていたのに、テーブルに置かれるようになった。次に戸棚に飾られるようになり、その後はベットの下にねじ込まれ、最後には箱に入れられてしまわれてしまいました。

自分が少女のためにできることはもうないのかもしれないと人形は思った。人形はもうボロボロだったのです。

美しい金髪は汚れてごわごわになっているし、すてきな洋服もあちこち破けている。おまけに左腕はもうもげかけていました。人形は少女の顔を思い浮かべながら心のなかで親友にお礼を言いました。





どれくらい箱にしまわれていたのでしょうか。ある日、箱の蓋が開けられ、人形が人の手に掴みだされました。

どうやら掴みだしたのは親友とは別の少女のようです。しかしなんだかあの子に似ています。優しそうな目つきなんかそっくりです。

「あなた…」その少女が人形に話しかけます。「寂しかったでしょう?ずっと一人ぼっちで」

人形は答えません。

「決めた!」少女が突然大きな声でそう言います。

「私があなたの友達…ううん、親友になってあげる!」

そう言って小さな腕で力いっぱい人形を抱きしめます。

その子の髪はあの子と同じ匂いがしました。



その人形はある少女たちの親友である。
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