1 / 1
親友の人形
しおりを挟む
その人形はある少女の親友である。
その人形はその少女の10歳の誕生日に贈られたものでした。
それからはいつもいっしょにいました。
怒られたあとには二人でママの悪口を言った。
不安でたまらない夜には抱き合って、慰め合った。
二人は親友だった。
しかしやがて月日は流れ、少女は少しずつ大人になっていきました。
そしてそれに伴うように人形の定位置も少しずつ変わっていきました。
はじめは一緒に寝るためにベットの上に置かれていたのに、テーブルに置かれるようになった。次に戸棚に飾られるようになり、その後はベットの下にねじ込まれ、最後には箱に入れられてしまわれてしまいました。
自分が少女のためにできることはもうないのかもしれないと人形は思った。人形はもうボロボロだったのです。
美しい金髪は汚れてごわごわになっているし、すてきな洋服もあちこち破けている。おまけに左腕はもうもげかけていました。人形は少女の顔を思い浮かべながら心のなかで親友にお礼を言いました。
どれくらい箱にしまわれていたのでしょうか。ある日、箱の蓋が開けられ、人形が人の手に掴みだされました。
どうやら掴みだしたのは親友とは別の少女のようです。しかしなんだかあの子に似ています。優しそうな目つきなんかそっくりです。
「あなた…」その少女が人形に話しかけます。「寂しかったでしょう?ずっと一人ぼっちで」
人形は答えません。
「決めた!」少女が突然大きな声でそう言います。
「私があなたの友達…ううん、親友になってあげる!」
そう言って小さな腕で力いっぱい人形を抱きしめます。
その子の髪はあの子と同じ匂いがしました。
その人形はある少女たちの親友である。
その人形はその少女の10歳の誕生日に贈られたものでした。
それからはいつもいっしょにいました。
怒られたあとには二人でママの悪口を言った。
不安でたまらない夜には抱き合って、慰め合った。
二人は親友だった。
しかしやがて月日は流れ、少女は少しずつ大人になっていきました。
そしてそれに伴うように人形の定位置も少しずつ変わっていきました。
はじめは一緒に寝るためにベットの上に置かれていたのに、テーブルに置かれるようになった。次に戸棚に飾られるようになり、その後はベットの下にねじ込まれ、最後には箱に入れられてしまわれてしまいました。
自分が少女のためにできることはもうないのかもしれないと人形は思った。人形はもうボロボロだったのです。
美しい金髪は汚れてごわごわになっているし、すてきな洋服もあちこち破けている。おまけに左腕はもうもげかけていました。人形は少女の顔を思い浮かべながら心のなかで親友にお礼を言いました。
どれくらい箱にしまわれていたのでしょうか。ある日、箱の蓋が開けられ、人形が人の手に掴みだされました。
どうやら掴みだしたのは親友とは別の少女のようです。しかしなんだかあの子に似ています。優しそうな目つきなんかそっくりです。
「あなた…」その少女が人形に話しかけます。「寂しかったでしょう?ずっと一人ぼっちで」
人形は答えません。
「決めた!」少女が突然大きな声でそう言います。
「私があなたの友達…ううん、親友になってあげる!」
そう言って小さな腕で力いっぱい人形を抱きしめます。
その子の髪はあの子と同じ匂いがしました。
その人形はある少女たちの親友である。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
書き換えオーダーメイド
夜船 銀
児童書・童話
「こういう風に進んでほしい。」、「こういう風に終わって欲しかった。」物語に対してそう思ったことはありませんか?そんな願いを叶えてくれる不思議なお店があるという。自分の願った通りに物語を書き換えてくれるそうだ…。中学一年生の古山 栞はひょんなことからその不思議なお店「琥珀堂」と店主だという青年、縁と出会う。そこで栞は物語の書き換えを通して、誰もが知っているお話の誰も知れない別のストーリーに出会っていく…。
【完結】馬のパン屋さん
黄永るり
児童書・童話
おじいちゃんと馬のためのパンを作っている少年・モリス。
ある日、王さまが命じた「王さまが気に入るパン」を一緒に作ろうとおじいちゃんに頼みます。
馬のためのパン屋さんだったモリスとおじいちゃんが、王さまのためのパン作りに挑戦します。
おばあちゃん、お話をして
矢野 零時
児童書・童話
お父さんはいないので、お母さんは夕食の後も働きにでていきました。でも、マイは寂しくありません。おばあちゃんが、側にいてくれるからです。マイは、パジャマに着替えると、おばあちゃんといっしょにベッドにいきます。そこで、マイは、いつもおばあちゃんにおねだりをします。
「おばあちゃん、お話をして」
すると、おばあちゃんは「まだ眠くないのかい。それなら、なんのお話をしてあげようかね」と言って、おはなしをしてくれるのです。その話は……。
月からの招待状
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
児童書・童話
小学生の宙(そら)とルナのほっこりとしたお話。
🔴YouTubeや音声アプリなどに投稿する際には、次の点を守ってください。
●ルナの正体が分かるような画像や説明はNG
●オチが分かってしまうような画像や説明はNG
●リスナーにも上記2点がNGだということを載せてください。
声劇用台本も別にございます。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
放課後モンスタークラブ
まめつぶいちご
児童書・童話
タイトル変更しました!20230704
------
カクヨムの児童向け異世界転移ファンタジー応募企画用に書いた話です。
・12000文字以内
・長編に出来そうな種を持った短編
・わくわくする展開
というコンセプトでした。
こちらにも置いておきます。
評判が良ければ長編として続き書きたいです。
長編時のプロットはカクヨムのあらすじに書いてあります
---------
あらすじ
---------
「えええ?! 私! 兎の獣人になってるぅー!?」
ある日、柚乃は旧図書室へ消えていく先生の後を追って……気が付いたら異世界へ転移していた。
見たこともない光景に圧倒される柚乃。
しかし、よく見ると自分が兎の獣人になっていることに気付く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる