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最期の英雄
絶対に許さない
しおりを挟む痛い、苦しい、私が悪い、私は悪くない、お前らのせいだ、しょせん自己満足だ、熱い、吐きそう、私が、お前が、なにが悪い……
『ぐへっ……』
エリシアに持ち上げられていた体が、大きく揺れる。首を締め上げられる苦しみから解放されたが、代わりに体に打ち付けられるような痛みが走る。
どうやら、エリシアが私の体をぶん投げて、私は地面に衝突したらしい。受け身も取れずに、地面に転がってしまう。この空間に地面なんて概念があるのかもはやわからないが、とりあえず立てるのだし……地面ということで、いいだろう。
エリシアから向けられる敵意のようなもの……いや、それはまさしく敵意だ。エリシアから敵意を、向けられていた。そりゃ、殺した相手にその気持ちを、憎悪の気持ち持つのは、間違っていないだろう。
私だって、復讐すべき相手には憎悪の気持ちを向けていた。だから向けられるのにも慣れている……けど、エリシアが向けてくるのは単なる敵意、憎悪とは違うように感じる。
『けほっ、けほ……エリシア……』
『この際、なにが悪いとか間違ってるとか、そんなのは関係ないよ……アンズはこの世界に自分の世界を壊されて、この世界の人たちはアンズに世界を壊された。私も含めてね。それだけのことだよ。だから私はアンズに同情もするし、もっと苦しんでほしいとも思ってるよ』
エリシアの声が、冷たい。エリシアが抱いている気持ちも、私が抱いていた気持ちも、それに嘘はない。なにが悪いのかどこで間違ったのか……もうこの段階まで来てしまえば、あまり関係のないことだ。
だって私は……
『あっ……ぐぅうう……!』
なにを考えたところで、この苦痛から逃れる術はない。また、苦痛の時間が始まる……胸を締め付ける痛みが、襲ってくる。エリシアに地面に投げられたので、転がったままの体勢だ。
なんでだろう、さっきまで痛みも苦しみも感じなかったのに、エリシアに首を絞められてから……いや、さっき言葉をぶつけられてから、また苦痛を感じるようになってしまった。エリシアがなにか、したのか?
……それともこれは、私の気持ちの問題? 私の中の、罪悪感とかそういったものを刺激して……苦痛を感じるよう、操作した、みたいな……ことか?
『あぐっ、ぶぇ……!』
さっきまで、言ってしまえば気持ちが死んでいた。だけど、今は……エリシアの言葉により、気持ちが生き返ってしまった。エリシアの敵意を受けて、死んでいた気持ちが刺激されてしまったから。
再び、苦痛の時間が始まる。なにがどうなってこうなっているのか、そんなのがどうでもよくなるくらいに、痛みに、苦しみに頭が支配される。
エリシアに掴み上げられ、言葉をぶつけられている間は止まっていた。絶え間なく与え続けられていたものが、少し途絶えた……だから苦痛を新たに感じて、というのもあるのかもしれない。
『私たちが悪かった、アンズが悪い……それはもう、どうでもいいことなんだよ。要は、貴女に殺された人たちは貴女を絶対に許さない……ただ、それだけだよ』
この痛みや苦しみは、ただの罰だけではなく、殺された人たちの許さない気持ち……そう言うエリシアの言葉がやけにすんなりと耳に入ってくる。
もう、どちらが悪など関係ない……その言葉は、不思議とストンと胸に落ちていて……
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