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最期の英雄
私のお姉ちゃん
しおりを挟む「お姉ちゃん!」
目の前で、私の一番大切な人が倒れていく。私の、一番大切な人……それはお姉ちゃんだ。ある日突然行方不明になって、なんの運命かこの世界で再会することが叶った、お姉ちゃん。
私は、元いた世界で死んで、この世界に転生した。死んでしまった理由は、今となってはよく覚えていないけど……とても、大切なことをしていた気がする。
この世界に転生して、第二の人生ってやつをそれなりに楽しんでいた。元の世界の記憶があるから、ふとしたときにつらかった日々のことを思い出すこともあったが、それも新しい世界での新しい風が、忘れさせてくれた。
決して忘れられない記憶、だけどそれがあるからこそ、今の私がある。そうして、この新しい世界で、自分の居場所を見つけていった。そんなときだ……お姉ちゃんと、再会したのは。
「お姉ちゃん……!」
目の前に現れた、もう会えないと思っていた人。あの日、行方不明になったお姉ちゃんとは一度も会えないまま、私は死んでしまった。だから、もう一生、お姉ちゃんと会うことはできないと思っていた。
けれど、運命ってものはわからない。死んだはずの私がこうして別の世界に転生し、しかもその先で行方不明になっていたお姉ちゃんと再会する……これを、奇跡として言わずになんて言おう。
嬉しかった、嬉しかった。泣きたいくらいに。すぐに抱きついて、一生離したくなかった。だけど……
『私はもう、人殺しなの』
再会したお姉ちゃんは、変な魔族や変な人と戦っていて……その人たちを、殺した。私の目の前で、確かに殺して見せた。
実際には、相手が消えた……というべきか。でも、あれは結局死んだと同じことだろう。そしてそれをやったのは、他ならぬお姉ちゃん。本人が言うように、お姉ちゃんが、人殺しを……
信じたくはなかった。でも、目の前でそれを見せられて……ううん、そうじゃない。それ以前から、お姉ちゃんの顔を見たときから、おかしいと思っていた。お姉ちゃんの目は、私の知っているお姉ちゃんの目じゃなかった。
以前とは、顔つきも変わっていた。それ以上に、目が変わっていた。それでも、こうして会うことができて、私は嬉しかったんだ。……お姉ちゃんは、違ったのだろうか。私を突き放すように、自分を人殺しだと言い、私の目の前で殺した。
『向こうの……元の世界に、戻ってほしいの』
……お姉ちゃんは、こう言った。私に、元の世界に戻ってほしいと。だから、自分が嫌われても、邪魔をする人たちを排除するつもりなんだ。
違うよ、お姉ちゃん……私はもう、元の世界では死んでるの。もし戻れたところで、もう昔みたいな生活には戻れないんだよ。いや、それ以前に……私は、お姉ちゃんと一緒がいいの。
そんな簡単なこと……それを、伝えられない。伝える間もなく、お姉ちゃんはあの魔族を、人を、子供を、消し去って。そして……
「お姉ちゃん!」
……倒れていく。その姿に、自然と体は動いていた。
自分を人殺しだと言ったり、なんだか知らないけど全身が黒くなっていたり、触れた相手が実際に消えていったり、なにもわからない。……わからないけど……私にとっては……
「お姉ちゃん! お姉ちゃん!」
ただ一人の、お姉ちゃんなんだから。
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