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英雄vs氷狼vs……
あこvsガニム
しおりを挟むガニムに対し防戦一方だったその時、予想もしていなかった……いや、来てほしくないと願っていた人物が現れた。それは、あこ……私の妹だ。
驚くことに彼女は、ガニムの巨体を吹き飛ばした。しかも、蹴って。あれは、鉄のように固いはずなのに。魔力で体を強化していたにしたって、あれを飛ばすとは……
「ちっ……なんだかわからないなら、邪魔をするな!」
「そうはいかない! この国で、変なことが起きてるなら見過ごせないよ!」
先ほどと同じやり取り……邪魔をするなと訴えるガニムと、それを否定するあこ。二人の言い合いは平行線で、交わることはない。
「ならば……お前にも、消えてもらう!」
平行線ならば、次にガニムが取る行動は決まってくる。邪魔をするなら、その邪魔をする人物を排除する……それが奴のやり方だ。
私と、ユーデリアと。そして邪魔をするあこ。この三人を、消すつもりだ。
「お客さんたちは、ここでじっとしててください」
「えっ」
ここからどうやって戦おうか……それを考えていたところで、あこから予想していない一言が。私に、ここでなにもするなと?
ガニムには、魔法も呪術の炎も通用しない。だから、対策を考えて当たるべきだ。それに、あいつは一人で簡単に倒せるほど甘くはない……それはあこだって、わかっているはず。
なのに……
「お客さんたちは、この国に立ち寄っただけの旅人さん。でも、私はこの国で、生きてきた。ここが……第二の故郷みたいなものなんです。なにもわからなかった私を、受け入れてくれた。だから、この国を守るために私は、この国をめちゃくちゃにするあの人を倒す!」
「っ……」
違う、違うんだよあこ……あいつがこの国で暴れるのは、私がここにいるからだ。
あこは元いた世界で死に、おそらくこの世界に転生し、第二の人生を歩んできた。そんなあこにとって、ここは大切な場所なのだろう。
だから、よそ者である私たちの手は借りず、一人で片をつけようとしている。それとも、私たちのことを守るつもりで、あこは一人で……
「一人でとは、なめられたものだな!」
「!」
私がなにを言い返すよりも、先にガニムが突撃してくる。吹き飛ばされたとはいえたいしたダメージは見受けられず、鉄の塊が再び走ってくる。
それは拳を振りかぶり、その巨大な腕を振り抜いていく。それを受ければ、一撃で死に直結するとわかるほどの拳……それをあこは……
「ふん!」
バシィッ……
両手で……受け止めた。
「なっ……」
「う、受け止めた……?」
攻撃を受け流すとか、そういうテクニックを使ったのではなく……純粋に、受け止めた? あの力を、真っ正面から受け止めた?
しかも、ガニムの突進を受けておいて大きく後ろに押されるわけでもなく、少し後ろに下がっただけ。質量も力も、圧倒的に向こうが上だろうに。
「くそっ、動かん、だと……どうなって……」
当のガニムも、困惑気味だ。だがそんなもの、お構いなしに……
「ぅ、せいや!」
「お、おぉ!?」
受け止めていたままのガニムの巨体を持ち上げ……それを、思い切り上空へとぶん投げた。
巨体は、信じられないほどの高さまで飛んでいく。
「うそぉ!」
魔法で身体強化をしている様子はない。つまり、素の力であの巨体をどうにかしているってこと?
それは……とんでもない、ことだ。あの小さい、私よりも小さい体のどこに、そんな力があるというんだ。
「えい!」
上空へと打ち上がったガニム……それ目掛けて、あこは魔力の塊を攻撃手段として放っていく。あれは、魔獣に対しても通用していた強力な攻撃だ。だけど、今のガニムの硬さは異常だ。
冷気も炎も通用しない。それに通用するか……
「ぐっ……」
「弾けて!」
「!?」
魔力の塊が、直撃。それはガニムの体に衝突したまま、やはり通用しないかと思われた……が、直後に爆発。
ガニムの体に衝突した魔力の塊が、爆発……いや弾けたのだ。それは、超至近距離での爆発を浴びたということ。驚きと、それ以上の痛みがガニムを襲っている。
「ぎ、ぁ……っ!」
証拠に、あのガニムが痛がっている。たった一発の、攻撃を受けただけで。
その体は、支えるものもなく地面へと落ちた。
「こ、の……ガキィ!」
「おとなしく帰ってくれたら、ひどいことはしないよ?」
……このまま帰れば、それ以上の追跡はしないという。魔獣と違い、言葉が通じるから訴えかけるつもりなのだろうか。しかし、それは……
「ふざけるな! 俺は俺の役目を果たす!」
当然、受け入れられるものではない。ガニムの敵意はますます激しくなり、あこを睨み付けている。
一方あこも、引くつもりはない。
「わからず屋は……倒し、ます!」
巨体から次々放たれる拳の連打。しかしそれをあこは、軽々しく受け流していく。今度は受け止めるのではなく、受け流しているのだ。
一旦、手のひらで拳を受け止めたかと思えば、直後に横へとはたく。力の流れを変え、うまく逃げ道を作っている。高等なテクニックだ。
そして、ガニムの猛攻を簡単に弾いていきながら……
「! そこ!」
隙を見つけ、小さな体を接近させていくと……ガニムの胸元に、拳を打ち込んだ。
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