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英雄vs氷狼vs……
邪魔者
しおりを挟む現れた魔族、ガニム・マキトロニア。彼の目的は、私とユーデリアを殺すこと。もちろん、私としては素直に殺されてやるわけにはいかない。
あの人、とやらの目的の邪魔になるため、私と、ユーデリアを殺しに来たと。
『ただ邪魔者を消してくれるならと放っておいたが、さすがに暴れすぎだ』
奴は、こう言っていた。それは、私たちのことを最初は放任し、最近になって放任しきれなくなったということだ。ったく、どっから私たちのことを知ったのか……いや、見てたのか。
氷狼の村、ノット、ガニムと、これらがすべて繋がっていた場合……これまで要所要所で姿を見せてきたのも、ずっと私たちのことを、どこからか見ていたってことになる。
気持ちの悪い話だ。いつからか……見られていたのは、間違いない。だって、現れたタイミング……いや、現れた男たちやノットは、準備が良すぎた。
呪術の炎の力を与えられ、それを自身の力にして襲いかかってきた。呪術により私たちの記憶の中の人物と戦わせ、殺しあわせた。どちらも、たまたまではありえない。あらかじめ、私たちと戦うことを念頭に入れておかなければできない方法だ。
私たちを見ていて、それでいて対策をしてきた。呪術という、私たちにとって未知の力で殺すために。
となると、この男も……
「呪術使いの可能性あり、か……」
そうでなくても、結界を実際に壊してきている。油断はできない。呪術、魔力、その他……いろいろな可能性を考えないと。
見た感じ、魔力を感じることはできないが……
「なにを、ぶつぶつ言っている!」
っと、考えるのはここまで。にらみ合いを続けていたガニムが、ついに動き出す。狙いは私か。
おそらく、あの男の優先度では『英雄』その次に氷狼となっているのだろう。それがまったくありがたくない優先度なわけで、ごめん被りたいわけだけど。
「ぬぉお!」
そうも、いかない。真正面からぶん殴りにかかってくるそいつの拳は、もろに受ければ痛いじゃ済まないだろう。だけどこんな直線的な攻撃、避けるのは簡単だ。
わざわざ受けてやる必要はない。大振りだし、こんなの当たるわけが……
「……!?」
その場から飛び退こうとした……が、動かない。足が、動かないのだ。まるで、なにかで地面と足がくっついているかのように。動けないのだ。
ならば……動けない理由は知らないが、考えるのは後だ。正面に、魔力で盾を作って……
ドォンッ……!
拳がぶつかったとは、思えない威力。そして……
ビキバキッ……
「うそぉっ……」
ただの拳で殴られただけの盾が、ひび割れていく。こいつ……魔力もなしに、ただ純粋な腕力だけで!?
結界は壊れてしまったため、すでに結界の維持に魔力は回していない。だというのに、こいつの力は……!
「っぶ……っ」
その勢いのまま、拳が腹部に直撃する。魔力の盾で、少なからず威力は落ちているはずだが……その一撃は、重い。しかも、それだけではない。
こんな勢いで腹部を殴られては、吹っ飛ばされてもおかしくないはずだ。なのに、動かない。足が、地面から離れない。吹き飛ぶはずの体は無理やりこの場に固定される。つまり……
「がっ……!」
二撃目が、飛んでくる。それも避けることは叶わず、くらってしまう。重い。
足が、どうして、凍りついたように動かない……凍りついた……まさか……!
「……!」
はっと、可能性に気づきユーデリアへと視線を向ける。足が地面とくっつき、氷のように動かない……それに気づいたとき、可能性は一つだと思った。ユーデリアが、私の動きを妨害しているのではないか。
ユーデリアは、私を殺すつもりだ。そこへ、詳細はわからないが私を殺すつもりの者が現れた。ならば、後々ユーデリア自身狙われるとしても、私を動けないようにして不利な状況にする。考えられることだ。最悪、氷狼の足ならばこの男から逃げることも容易いだろう。
「……っ」
そう思って、ユーデリアに視線を向けた。しかし……ユーデリアは、なにもしていない。冷気を発してもいないし、ただ呆然とこっちを見ている。
なら……動け、ないのは……この、ガニムとかいう魔族の力だったりするのか……!?
「ふんっ!」
ドゴッ!
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