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予期せぬ再会
【素晴らしき第二の人生を】
しおりを挟む異世界『ライヴ』に転生されたあこは、生と死の狭間の世界で女神に教えてもらった、ここに行けと指定された場所へと向かった。親切な人の案内もあり、未知の道でも迷うことはなく。
たどり着いたのは、女神が言っていたように役場のようなところだった。どうやらこの国にはあこ以外にも転生者がいるらしく、身分などの手続きはあっさりと進んでいった。
世界が異なるとはいっても、基本は元の世界での生活と対して変わらない。生活のためにお金を稼ぐ……そのために働くか、この世界では冒険者として、依頼をこなしていき稼ぐこともできる。
しかし、魔物のいなくなったこの世界で冒険者というものにあまり需要はなく、稼ぐ面を考えたら普通に働いた方が現実的だ……とは女神の言葉。
なのであこはその言葉の通りにしようが、なにぶん元の世界でも働いたことはない。高校生になったとはいえ、なったばかりから働きに出るほどあこはアクティブではなかった。だから、元の世界での生活と対して変わらないとはいえ……あこにとっては、初めてのことばかりだ。
そもそも実家暮らしであったあこにとって、一人暮らしは初めて。宿に何日か泊まれるお金はあるが、これも増やさなければいずれは底をつく。
「やることいっぱいだ」
まずは、宿探し。それに働くにしろ、ここにはどんなものがあってなにができるのか。せっかく身体能力や魔法を使えるようになったらしいので、それを活かせるものを選ぶべきか……
その点も、役場で相談し情報を得る。そんなに高くなくても泊まれる宿や、あこくらいの年頃の女の子が働ける場所。そして……
「せ、接客、業……」
オススメされたのは、とある料理店の店員。ウェイター……いわゆる接客業務のことで、店の前に立つあこはガチガチだ。当然だ、人見知りのあこにとって、接客業など考えただけで倒れそうになる。
だが、与えられた第二の人生……自分を変える、チャンスかもしれない。ここには母も父も、姉もいない。本当の一人きりだ。だがそれを、マイナスとは考えまい。自分が成長するためのステップとして、考えろ。
一人で生きていくしかない。だから、あの頃の人見知りな自分を、変えるんだ……!
「す、すみませーん!」
……そうして、無事その店で働けることに決まった。人見知りであるため、苦労するかと思われたが……人見知りでうまく放せないのは顔を見られるのが恥ずかしいのでは、と考えお面を着用。
それにより顔を見られているという感じが消え、素顔でいるときよりも人と話しやすくなり、目論みは成功した。
「い、いら、っしゃいませー!」
さらに仕事を続けていくことで、だんだん人と話すことにも慣れるように。相変わらず、お面は外せないが。
異世界での生活に、日に日に慣れていった。生活も安定し、いつの間にかあこはお店の看板娘のような存在になっていった。お面は外さないままではあるが。
そんな、平和な日々を過ごしていたときだ……国に、異常が訪れたのは。
「な、なにあれ……?」
人々の悲鳴と共に現れたのは、四足歩行の獣。しかし、動物というにはその毛並みはどす黒く、瞳は赤い。なにより、禍々しい雰囲気がある。
「ま、魔物! 魔物が出たぞ!」
逃げる誰かが、言った。それが魔物という存在であると……しかし、もう魔物はこの世界にはいないと、女神は言っていた。が……目の前で起こっている出来事を疑うことは、できない。
急いで、逃げなければ……しかし、その思いとは別の気持ちが湧いてきた。これまで、試す機会のなかった身体能力と魔法……それらを、試してみたい。
そう思ったときには、体は動き出していて。
「ていや!」
元の世界にいた頃には考えられないほどの身体能力。そして、意識しなくても体の中から、魔法の使い方がわかる。それに従い、魔力を操り……身体能力と魔法を組み合わせ、魔物を撃退することに成功した。
その後、現れた国の警備隊とやらは唖然としていた。それはそうだ、ただの一市民が魔物を撃退したのだ。しかも、妙なお面をつけている……一見すると不審者だ。
とはいえ、国の危機を救った人物だ。不審者のようではあるが、その後の行動を見ていれば悪人でないのはわかる。一生懸命に働いて、同僚や客とも仲良く人気者。その後も現れる魔物を、警備隊が現れるよりも先に対処して国を守ってくれている……
あことしても、国の警備隊とやらに悪く思われたいわけではない。仲良くできるならそれに越したことはないわけで……日を重ねるうちに、両者の間に信頼関係のようなものができあがっていった。特に、あこと警備隊のリーダーという男は。
そうして、同僚、客、国を守る隊……あこは、二度目の人生を謳歌していた。人見知りだった性格も、お面をしているとはいえ徐々に良くなってきているようにも思える。
国を襲ってくる魔物……いや次第にそれが魔獸と呼ばれる存在とわかったが、それらはどんどん強くなっていっているようだった。が、これまで幾度も国の危機を守ってきた。
時折危険はあり、聞いていた話と少し違う気もしたが……あこは無事、この世界で第二の人生を、歩み続けていた。
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