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予期せぬ再会

時間を操る者

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 "時間巻戻タイムリワインド"……聞き間違いでなければ、彼女はそう言った。それが、言い方の通りの意味を持つのだとしたら……

 たった今死んでいたあの隊長は、生き返ったのではなく……『死ぬ前の時間帯に巻き戻った』ということになる。そんなこと、あり得るのか……この目で見たことであっても、それは信じられないことだ。

 だって、巻き戻し……時間を巻き戻すことなんて、それはもう普通に考えなくてもできることではない。時間を巻き戻す魔法なんて聞いたことがないし、先ほどの様子から呪術や禁術の類いにも思えない。

 とはいえ、時間を巻き戻すなんて……ある意味、人を生き返らせることよりも許されざる行為ではないだろうか。もちろん、人を生き返らせるのも時間を巻き戻すことも、どちらの行為が重いのかは判断しようがないけど……


「あれ、俺は……あ、アコ、さん……?」

「うん。間に合ってよかった……」


 死を巻き戻された張本人は、困惑した様子。対して、行為を行った張本人はほっとした表情だ。あれは、本気で助かったと安心しているものだ。

 そこに、邪な力は介入していない。純粋に、あたたかい力だけだ。なら、あの力の正体は……?


「俺は、確かに……まさか、アレを俺に?」

「えぇ。間に合ってよかった……」


 ……アレ? さっきの"時間巻戻"のことか。どうやら、その存在はひた隠しにしているわけではないらしい。となるとますます、隠さなきゃいけない呪術や禁術の類いとは違うってわけか。

 隊長の問いに、彼女はうなずき……先ほどと同じ言葉で、再び安堵を口にする。……間に合って、か。つまり、時間を巻き戻すには期限がある、ということか?


「俺なんかに、そんな……いや、ありがたくは、あるんですが。俺よりも、部下たちに……」

「大丈夫。部下さんたちは、怪我はひどいけど死んでないから」


 当然だが、時間を巻き戻す行為には制限があるようだ。そして制限がある以上、自分でなく部下に使ってくれと、いう。部下が死んでいた場合のことを想定していたのだろう。

 しかし、私にとっては残念ながら……さっき死んだ隊長以外は、誰も死んでいない。だからこそ、彼女はあの力を隊長に使ったということ。

 だいぶ見えてきたぞ……"時間巻戻"。戻せる時間にはおそらく期限がある。何分とか、そういった数え方だろう。せいぜいがその程度の時間のはず。そうであってほしい。そして使用回数や頻度にも制限がある。でないと、隊長からあの言葉は出てこないだろう。

 隊長が心配する、部下たちの命……それは一つも失われていない。あの魔獣の狂暴性は疑う余地もないが、狂暴で暴れまわるがゆえに、一人一人の命を狙って潰していなかったということ。

 ただ手足をぶん回せば、それだけで災害級の破壊が訪れる。しかし、さっきの隊長のように狙って足を振り下ろしでもしなければ、命は奪えないだろう。もちろん、吹き飛んで当たりどころが悪ければ死ぬだろうが……国を守る警備隊なら、受け身くらいは取れる。


「誰も、死んでないよ。それなら、傷は回復の魔法で治せる。私の力は、治せる傷よりも……治せない、取り返しのつかないことを使った方が、いいと思うから」


 妙なお面をつけた店員は、妙にかっこいいことを言う。あの驚異的な身体能力や魔力に、加えて時間まで巻き戻せるのか……なにかしらの制限があるだろうとはいえ、その制限がわからない以上、厄介であることには変わらない。


「グゥ、ルル……!」


 ようやく、立ち上がる魔獣。それを確認して、彼女も立ち上がる。


「ごめん、油断してた……もうあんな目には、あわせないから」


 あんな目、とは考えるまでもない。死んでしまったことだろう。しかし、死んだのにその時間を巻き戻されるって、本人の意識としてどんな感じになってるんだ?

 気になる……けどさすがに、一度死んでみるから巻き戻してください、とはならない。ただ想像で留めておくとしよう。

 もう死なせない……その気概が伝わる。だけど、相手はさっき、手も足も出なかった魔獣だ。いくら気合いを入れ直したところで、実力差はそうは変わることはない……


「うらぁ!」


 ……その場から飛び、立ち上がったばかりの魔獣へと一直線。先ほど同様、タックルをくらわせるつもりか……しかし、今度は違った。

 飛び上がりながら、拳を振るう。当然、拳が直接触れるほどにまだ接近したわけではない。拳から放たれるのは、魔力の塊だ。先ほどは手のひらから放ったそれを、今度は拳から。

 私も同じことをするから、それがどういうものかはわかる。もっとも、私の場合は魔力じゃなくて衝撃波だけど。

 強大な魔力、そして助走ならぬ助空を加え、勢いを乗せて放ったそれは……


「グォオ!」


 魔獣に衝突し、確かなダメージを与える。皮膚を抉る……どころではない。八本あるうちの、足の一本の付け根に衝突したが、そこが千切れるかのような凄まじい威力。

 皮膚どころか骨ごと抉れ、確かな手応えを見せている。さらに……


「撃てぇ!」


 別の場所から、放たれる複数の魔法。それは魔獣に寸分狂うことなく直撃し、ダメージを蓄積させていく。

 誰か、いる。さっきの警備隊よりも、さらに魔力の高い複数の人たち。なるほど、あれが……


「申し訳ない、遅くなった!」


 チョビヒゲを生やしたおじさんを筆頭に、敬礼らしきものをする集団。きっとあれが、本隊と呼ばれるものだろう。
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