異世界召喚され英雄となった私は、元の世界に戻った後異世界を滅ぼすことを決意した

白い彗星

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英雄vs暗殺者

あっつぅ

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 なんの能力もなしに、ただそのポテンシャルだけであれだけの残像を出現させるなんて……これは、余計に気が抜けない。

 本人とまったく違わないと思えるほどの、残像だ。さっきだって、自身の直感に従わなかったら斬られてた。


「今の反応だけでわかった……あんた、今まで相手してきた中で一番だ。一番の実力者ってやつ……? ま、『英雄』サマなんだから当然なんだろうがね」


 フードの人物は、短剣を手の中でくるくると回しながら、私のことをじっと見つめている。とはいえ、隙がない……ただ突っ立っているだけなのに。

 声が低い。正体は男だろうか。それとも、意図的に低くしているのか。読めない……彼、もしくは彼女は性別すら気づかせないよう、声色を意図的に変えているっぽい。

 それに……しゃべり方が一貫していない、気がする。私とか俺とか、そんな一人称も使わないし……これは、言葉からも人物像を推測されないためにだろうか?

 なんていうか、徹底してるな。その辺り、プロって感じ。なんのだよ……殺しの?

 私を狙ったのは、誰かに頼まれたから。加えて、なにかのプロって感じがする。この二つの情報から考えられるのは……


「……殺し屋か!」

「!?」


 殺し屋なんて、それこそテレビの中でドラマや映画でしか見ないようなものだ。それに、殺し屋なんて普通に生活してて会うことなんて、まずない。

 殺し屋、殺し屋かぁ……こんなか弱い乙女を捕まえるなんてひどい、と思うが、残念ながら、狙われる心当たりがありすぎる。

 このフードの人物が私に恨みがないのなら、誰かに頼まれたというのは疑いようもない事実。となると、問題は誰が、頼んだ……いや、依頼したのか。

 それを聞いても、答えるはずもないだろうが……


「ねぇ殺し屋さん」

「誰が殺し屋だ!」

「私を殺すように依頼したのって誰?」

「誰が話すか!」


 ……やっぱダメか。


「それに、殺し屋なんて安易な奴らと一緒にしないでもらいたいね」


 さらに、異議を唱えるようにフードの人物は言う。どうやら殺し屋呼ばわりが不服であったらしいが……誰かの依頼で私を殺しにきた。殺し屋に間違いがあるだろうか。

 ただ、それを議論しても無駄なことか。話を長引かせて、少しでも回復したいところだが……そんな少々の時間で少々の回復をしたところで、たかが知れている。

 それに、のんきに話をする気は、向こうにはないようだし。


「へっ……」


 短剣を手に、再び迫ってくる。迫ってくるといっても、今度はさっきみたいに一直線にというわけではない。左右上下、体を揺らすように動き、狙いをつけさせない気だ。

 ただ私だって、一年とちょっとをこの世界で過ごし、それなりに目は養ってきた。いかに自由自在に動いて狙いを狂わせようとしても……


「そこ!」

「!」


 ギィン!


 短剣と、左手とが衝突する。この左手は、黒くなっている部分は普通の肌とは違う……剣とも打ち合える鉄のような強度なのは、やはりまだ健在のようだ。

 健在でラッキーなような、このまま呪術の力に呑み込まれてしまったらどうしようという不安があるような。複雑な気持ちだ。


「ちっ、呪術か……! 厄介なもん持ってやがる」


 紫色の霧の中での戦いを見ていたなら、左手これが呪術だということもわかるか。それとも、呪術の力を感じ取れるのか。

 どちらにせよ、呪術の力を厄介なものだと、認識はしているらしい。


「よっ、と」


 今までの相手……グレゴや師匠とは、違ったタイプ。接近しても、そのまま攻撃を続行、追撃をするのではなく、一旦下がる。

 追撃するような奴なんてグレゴや師匠のようなパワーバカタイプが多かったけど、このフードの人物は違ったタイプってことか。


「けど、そんなちょくちょく離れてたら、本当に私を殺すつもりなのか疑問なんだけど」


 追撃してこないのは、正直助かる。今のこの体では、長時間激しく動くのはキツい。あのスピードで、こっちが休まる間もなく追撃してくれば……私にとっていい結果にはならない。

 ただ、それは向こうだってわかっているはずだ。なのにこうもいちいち距離をとるのは……前に出るグレゴや師匠よりも、後方から戦うようなエリシアやサシェみたいなタイプなのだろうか。


「御忠告どうも。けど、これでいいのさ……あんたに近づくのは、リスクが高いんでな」


 ……私を警戒して、か? 今ボロボロとはいえ、近づけばなにをしでかすかわからない。そんな評価らしい。

 それはなんともな評価であるが、残念ながら私自身否定するだけの材料がない。なにをしでかすかわからないのは、自分でもわかっていないのだから……この右腕や、左手がその証拠。

 だから、警戒するに越したことはないのだろう。


「だがまあ、ちまちまやるのは好きじゃない……一気に、取らせてもらう!」


 まるで一気にケリをつけると言わんばかりに、殺意が溢れだす。懐から飛ばされるクナイは、先ほどとまったく同じ軌道で放たれる。

 先ほどと同じく通用しないと、わかっているはずの攻撃を繰り返すとは、思えないけど……


「……って、燃えてる……?」


 よく見てみれば、クナイの先端部分が燃えているではないか。ただ、燃えているからといって……焦る必要もない。

 この、黒くなった左手は痛みを通さない。今まで感じていた痛みも消えているけど……もしかしたら、黒いのがなくなったとき、蓄積された痛みがぶり返してくるのかもしれない。

 それでも、今この左手ならば痛みを感じずに弾き落とすことができる……


「せい! ……あっつぅ!?」


 迫るクナイを、左手で弾き落とす……ことには成功したが、触れた瞬間、ものすごい熱さが手に伝わってきた。

 燃えるような痛み、とはこのことだろうか。実際に燃えているものに触れたんだからそうなんだろうけど……


「な、なんで……?」


 呪術の力で黒く染まったこの左手は、今のところあらゆる痛みを通さない。さっきだって、短剣と打ち合ったり……強度だって、鉄のようになっている。

 なのに、今確かに熱かった。あの炎がなにか、特別なのか……?
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