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世界への反逆者 ~精霊との対峙~

四大精霊

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 呪術を使った者は、身を滅ぼす。これは、以前ユーデリアの村で出会ったあの男たちを見て、感じていたことだ。実際に見たし。

 私の場合、望んで手にいれた力じゃないんだけど……実際にこうして、手が黒くなっている。手から感じるのは呪術の嫌な気配だし、まったくのでたらめというわけではないだろう。

 これは、エリシアの魔力を奪った際、一緒についてきてしまったものだ。だから元々は私の力ではない。けど……それを言うなら、あの男たちだって自分の力ではなく、与えられた力だ。

 だから、その点では私も男たちも、同じなわけで。彼らが呪術の炎に呑まれたのが、呪術の力に呑まれたって意味であれば……私も、同じ運命を、辿る可能性はなくはない。

 もし、その未来が待っているとして……


「なにか、防ぐ手立てはないの……?」

「ない。いぃや、あったとしてわらわが教える必要が、あるか?」


 ……ま、そう答えると思っていたけど。呪術に呑まれてしまいかねないのを、防ぐ方法を素直に私に教えてくれる意味はない。

 私自身、別に自分の体がどうなったって構わないと思っている。ただ、訳のわからない力に破滅させられるというのは、勘弁してほしい。


「……ま、今はどうでもいいや。方法があるにしても、あんたよりもあの男に聞いたほうがいいだろうし」

「……?」


 あの男、というのは、呪術を使っていた男たちに呪術の力を与えたと思われる男だ。会ったことはないし、そもそも男たちの背後にいた男、という情報しかわからない。

 わからないけど……呪術の力を持っている男だ。私の知らない、いろいろなことを知っているだろう。それに、そこにはノットもいるだろう。

 ユーデリアの故郷を滅ぼした、一人。氷狼たちをその炎で燃やし、村を燃やし、呪術の炎を操る女だ。

 そいつらに聞けば、体を蝕んでいく呪術を防ぐ方法も、わかるかもしれない……


「ふっ……なにを考えているかは知らんが、無駄なこと。お主は、近いうちに、相応の報いを持って必ず死ぬ」

「……必ず、ね。面白いこと言ってくれるじゃん。確かに、寿命が尽きたら必ず死ぬかもね」

「……くだらん」


 相応の報い、か……それは皮肉とか、そんなものではないのだろう。因果応報という言葉があるが、破壊行為こんなことを繰り返している私は、楽な死に方はできないだろう。

 それに、必ず死ぬっていうのも……


「世界を壊すお主を、この世界は決して許さない。お主は、この世界に殺される」

「……許さないのは、私の方だよ」


 ぶしゃっ……!


 世界に殺される、なんて比喩表現であるだろうが、それの意味するものは、わかる。

 とはいえ、この世界が許さないとしても、それよりも私が、この世界を許さない。

 その気持ちを抱き、水の精霊の首部分をへし折る形で、力を込める。水が弾ける音が響き、水の精霊は形を失っていく。

 これで、こいつを殺せたのだろうか……いや、そんなはずはない。こんな程度で、水の精霊は消えてはいないだろう。

 逃げたか……まだ、どこかに潜んでいるか。


「あいつは?」


 そこへ、ユーデリアがやって来る。


「……逃げたか、それとも……」


 ここに残っているのは、大量の……水の精霊を型どっていた量の、水。逃げた、というのはなんだか違う気がする。かといって、どこかに身を潜めているのもあいつの性格から違うだろう。

 そもそもあれは、水の精霊本体であって、水の精霊本体じゃない。それをどう説明すればいいかわからないけど……もうあいつは、ここにはいない。


「精霊、か」


 あいつは、自分のことを精霊と、そして我らと言っていた。もしこれが本当なら……まあ嘘つく理由はないけど……他にも、精霊がいるってことになる。

 ……精霊と言えば、私の知っているもので四大精霊というのがある。もっとも、私の知識の中の精霊と、この世界に実在している精霊が、同一のものかはわからないけど。

 四大精霊。それは、火、水、地、風の四大元素の中に住まう、四種の霊のことだ。

 火の精霊、サラマンダー。水の精霊、ウンディーネ。地の精霊、ノーム。風の精霊、シルフ。この内、ウンディーネってのはさっきの奴と、名前が一致している。

 もし他にも、あんなのがいるのなら……揃って、私のことを敵と見なすだろう。まったく……魔物や魔王のような魔族、グレゴやエリシアのような超人……その次は、精霊ときたか。


「ヒィイイン」

「ん、よーしよし」


 コアが、私にすり寄って鼻をすり付けてくる。心配、してくれているのだろうか。動物は、人の感情に敏感だと聞いたことがあるけど。

 賢いなぁ、やっぱり。


「大丈夫だよー。ちょっと、考え事してただけだから」

「ぶるる……」


 もしまた精霊が現れたら……今度は、こんな寄り代なんかじゃなく、正真正銘の本体を壊して、殺してやる。

 私の邪魔をするって言うなら、たとえ相手が精霊であっても……関係ない。どのみち、この世界を壊すために邪魔をするものは、なんであろうと排除するって決めたんだから。

 もし呪術に体を蝕まれているとしても、そんなもの、関係ない。呪術程度、気合いで抑え込んでやる。
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