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勇者パーティーの旅 ~魔王へと至る道~
魔王との対決
しおりを挟む不意をついて、魔王の顔面を殴り、吹き飛ばすことに成功した。なんかカッコつけながらしゃべってたから、隙をついて殴ることができたわけだけど……
殴られた頬を仮面越しに擦りながら、立ち上がる魔王。「いってぇ」とか「なんだこいつ」とかぶつぶつ呟いているけど、そんなことはどうでもいい。
立ち上がるそいつに向け、抜いた剣を向けたグレゴが鋭い視線を向ける。
「貴様が魔王で、違いないな」
「違ってたらとんでもないことだけどね……」
グレゴの鋭い問いかけに、エリシアが苦笑いを浮かべる。みんな、あいつが魔王だということはわかっているだろうが、一応の確認だ。
その問いかけに対し、あいつは……
「っつつ……あぁ、そうとも。名乗ろうとしたらそこのチビがぶん殴ってきたがな」
ちっ……確かに、あの大男は師匠と大差ないくらいの体格だけど、チビと言われる筋合いはない。
自らが魔王であることを認めた、黒い大男。さっきから頬を擦ってはいるけど……私にはわかる。ダメージはたいして……いや、もしかしたらまったくないのかもしれない。
痛がるふりをしても、無駄だ。わかるんだ……それが、演技だと。しかも……
「あの仮面、割れるどころかひびも入ってないね 」
そうだ、私はあの般若仮面越しに、あいつの頬を殴った。もしもあれがただのおしゃれのための仮面なら、今の一撃で粉々に砕け散っていたはずだ。
それが、割れるどころかひびすらも入っていない。あれは、ただの仮面じゃない。
結構、力を込めて殴ったんだけどな……不意をついたから防御もしてなかったはずだし、受け身もとってない。魔法による防御、という線もなしだ。
つまり……こいつ、かなり硬い。人みたいなシルエットしてるけど、その強度は魔獣、いや四天王以上だ。
「私たちは、お前を倒すためにここまで来た。覚悟しろ!」
ここに来るまでに、大きな犠牲を払った。大切な仲間を、二人も失った。
その悲しみを、ここで終わらせるために。二人の思いを無駄にしないために。私たちは、ここでこいつを倒す!
「……そう、か。ならばかかってくるがいい」
吹き飛ばされてもぴんぴんしている魔王は、やはり余裕そうだ。今の一撃が効いてないのは悔しいけど、ここにいるのは私だけじゃない。
グレゴ、エリシア、師匠……相手は、ただ一人だけ。これまでのように、魔物の大群に囲まれているわけでもない。四対一という構図だけど、卑怯だなんて言わせない。
辺りを緊張感が包んでいく。数の上ではこちらが有利だ……けど、油断はできない。この禍々しい力は、決して手を抜いていい相手ではない。
さっき一撃入れたのは不意をつけたから……それでも、油断している相手に効かなかったのだ。もう戦闘態勢に入った相手に、攻撃を当てることもダメージを与えることも難しくなるかもしれない。
それでも、ここまで来たんだ。相手がどれほど強大でももう引くわけにはいかないし……そのつもりも、毛頭ない!
「…………ふっ!」
「…………はっ!」
特に示しあわせたわけでも、合図をしたわけでもない。が、私と師匠が動き出すのは同時だった。二人同時に、魔王の懐へと飛び込み……私は右拳を、師匠は左拳をそれぞれ放つ。
さらに、後ろからはジャンプしたグレゴが、魔王の正面斜め上空から飛ぶ斬撃を放つ。これで、魔王の左右正面をふさいだ。逃げ場は背後しかない。
けれど、逃げようと背後に移動すれば……すでに魔力を溜めているエリシアの、魔法が一斉に襲ってくる。これでもう、逃げ場は……
バシッ……!
「なっ……!?」
逃げ場はない、はずだった。いや、確かに逃げ場はなかった……魔王は逃げすら、しなかったのだから。
左右から打たれる私と師匠の拳を、魔王はそれぞれの手のひらで受け止める。床がへこむほどの衝撃が走るが、魔王にダメージはない。
まさか、私と師匠の拳のダメージを足下に流すことで、衝撃を逃がしたのか?
さらに、正面から飛んでくるグレゴの飛ぶ斬撃を、魔王は頭突きで迎えて打ち破る。直撃すれば人体など簡単に切断してしまうそれを、難なくかわしたのだ。
「ふん……こんなものか? お前たちの力は」
こいつ……全然、今のが堪えてない! やっぱり魔王ってのは、伊達じゃないってことか!
私たちと魔王との対決が、今、始まった。
---------------そして……
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