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勇者パーティーの旅 ~魔王へと至る道~
帰るために
しおりを挟む「……と、いうわけだ」
「はぁ」
その後、私は別の部屋へと案内された。私が召喚された部屋よりもさらに広く、明るい。うわあ、シャンデリアがいっぱい。テレビでしか見たことないよ。
床には赤い絨毯が敷いてあり、その先には数段の階段。そこにはきらきらしたご立派な椅子がある。やはり、テレビでしか見たことのない光景だ。
そこにある立派な椅子に、イケメン王子……ウィルドレッド・サラ・マルゴニアと名乗った男は座っている。
あれが、玉座ってやつかなー。王子って呼ばれてたしなー。
「……あまり、驚かないのだな」
説明を受けても驚きを見せない私に、王子の方が少し困惑している。いきなり召喚された私が、もう少し慌てると思ったんだろう。
実際、慌ててないわけじゃない。けど……
「いや、これでも充分驚いてるっていうか……驚き過ぎて、逆に冷静というか」
「……ふふ、なるほど」
うわぁ、この人イケメンどころか笑うと爽やかだなあ。
この王子……ウィルドレッドさんが言うのは、まあ物語ではよくある聞いたことのある話だ。
世界滅亡を企む魔王が現れて、この世界の人間じゃ太刀打ちできないから別の世界から危機を救ってくれる人間を召喚しようと……
うん、よくある話だ。物語の中ではね。
「あの、ウィルドレッドさん……」
「ん、ウィルでいいさ。それに、さんもいらないしな」
「……はぁ、ならウィル……」
とりあえずこれは現実で、確実に自分の身に起こっていることだと受け入れる。夢じゃないのは、何度も自分の頬を叩いたことで確認済みだ。
受け入れた上で、聞くのだけれど……
「なんで、私を召喚したんですか? 別に私じゃなくても……他にも、それっぽい人なんてたくさん。それに、私向こうでやりたいことだってあるし、いきなり別世界に召喚しましたって言われても……」
「当然の疑問だ。でも悪いね、召喚したのはボクだが、選んだのはこの世界だ。キミに素質があると判断されてのことだから、気を悪くしないでほしい」
ふむふむ……私を召喚をしたのはウィル。けれど、あくまでも私を選んだのは、この世界、らしい。にわかには信じがたいけど、嘘を言っているようには見えない。直感だけど。
ただ、気を悪くするな、と言われても……それで納得なんて出来るはずもない。そこで、なんとか帰ることが出来ないのかと聞いてみるのだけれど……
「すまない。召喚に成功したら、役目を終えるまでは帰ることが出来ないんだ」
と、彼は言う。申し訳なさそうな顔をしているため、彼に悪気がないであろうことはわかった。
「役目……って、言うと……」
「この世界を救うこと。つまり、世界を滅ぼそうとしている魔王を倒してもらうことだ」
つまりそういうことらしい。
はぁ……元の世界に帰るためには、この世界で魔王ってのを倒さないといけないのか。私にそんなことが出来るとは思えない……だけど、実際に素質があると言われたのだ。
なにより、その魔王ってのを倒さないと帰れない。それが本当だと言うのなら……
「……わかりました、私、魔王を倒します!」
「そうか。そう言ってもらえて、嬉しいよ」
「それで、元の世界に帰ります!」
元の世界に帰るためとはいえ、それしか方法がないのなら、答えは一つしかない。
帰るため……という背景はともあれ、魔王を倒すという私の言葉に嘘はない。それを受けて彼は、異性を殺す魔性の笑顔を浮かべる。
うわぁ、すごいイケメンだぁ。私に彼氏がいなかったら、落ちてたかもしれない。
「では早速だが……キミを『勇者』として、魔王討伐に旅立つためのメンバーは事前にこちらで選抜しておいた」
「メンバー……選抜……」
「あぁ。安心してくれ、いずれもその実力を買い、選んだ猛者たちだ。彼らはキミの力となることだろう」
「そう、ですか……」
「とはいえ、いきなり旅に出ろなんて無責任なことは言わない。この世界のことを知ること……戦いの術を学ぶこと……キミにも準備は必要だろう。それは我々も同様だ。だから、こちらの準備が完了するまでの三ヶ月……こちらで用意した宿で暮らすといい。その期間、キミもキミの準備を整えてくれ」
こうして、私はこの世界を救うための『勇者』として、魔王討伐の旅に出ることになった。
旅立つまでの三か月は、荷物の準備や最低限の戦闘技術を学ぶ訓練をしたり、この世界の知識を得たり……なにより、共に戦うという勇者メンバーと親交を深めつつ、この国で過ごしていくことになる。
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