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第5章 貴族と平民のお見合い
貴族と平民の壁
しおりを挟むとりあえず、ミライヤのお見合い話は俺たち3人の秘密にするという形になった。元々ミライヤ本人しか知らなかった話、俺やノアリが話を漏らさなければ、誰にもどこにも漏れることはない。
他に誰にも話さないというのは、ミライヤたってのお願いだ。他のみんなを信頼していないわけではないが、話を共有しておく人数は少ない方がいい。
ということで、俺とノアリを選んでくれたということだ。そんな打ち明け話から、一夜明け、俺は……
「ヤーク、昨夜からなんだか変じゃないか?」
「そ、そんなことはないですよ?」
シュベルト様に、問い詰められていた。
さすがに話の内容が内容だけに、この話を抱え込むには重すぎる。だからミライヤは俺たちに話してくれたのだろうが……その俺が、こんな調子でどうする。
しかも、多分ミライヤはシュベルト様には一番聞かれたくないはずだ。そりゃあ、お見合い諸々の話が公になれば誰の耳にも入るだろうが……事前に聞かせて、まさか王族の人間に自分のことで負担をかけたくない、という気持ちがミライヤの中にあるのだろう。
その気持ちは、元々平民だった俺にはわからんでもない。まして、自分と仲良くしてくれる王族なんて想像もしていなかっただろうし。
「ほら、もう教室に着きますから」
「む……」
シュベルト様とは組が違うのが、幸いした。さすがのシュベルト様も、問い詰めるために教室まで入ってくるようなことはしないようだ。
不服そうではあったが、自分の組に入っていった。うぅ、なんか罪悪感……
「やれやれ……隠し通せるのか俺は」
「おはよーヤーク」
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
教室に入ると、すでにノアリとミライヤは隣同士に座り話していた。この2人、別に同室じゃないのによく一緒にいるな。部屋が近いのだろうか?
俺は鞄をノアリの隣の机に置き、席につく。隠し事をしないでいいという点からどっと解放された気分だ。
「ヤーク、あっち見てみて」
「ん?」
座るや、ノアリから肩を叩かれ、とある一点を顎で指される。その方向を見ると、そこには数人の生徒がいるわけだが……
ノアリが指しているのは、ひとりの男子生徒だ。サラサラのクリーム色の髪、あそこだけひときわ輝いているような気がする。
「あれが、ノラムらしいわ」
「あれって……ん、ノラム?」
人を指しといてあれ扱いはどうかと思うが、ノアリから出された名前にひとまずそちらを考える。
ノラム、ノラム……あぁ、ミライヤにお見合いを申し込んだっていう。
「同じ組だったってことか」
すでに数日が経ったわけだが、まだ顔と名前が一致していない。なので、ミライヤから名前を言われても、同じ組に居るとはわからなかったわけだ。それはノアリもだけど。
ふむ、シュベルト様には及ばないが、なかなかの爽やかイケメンといった感じだ。現に、今男友達と話しているがそれを遠巻きに見ている女子たちは黄色い声を上げている。
ふむ、彼がミライヤにお見合いを、か。ミライヤは確かにかわいいが、それだけの理由で貴族が平民にお見合いを申し込むとはやはり、どうにもピンとこない。
それとも、俺が貴族にいい印象を持ってないからか? ノアリは例外として、平民を見下す連中だもんなぁ。
「ミライヤ、あれからなにか言われたのか?」
「いえ、今日はまだなにも……先ほど目があって、会釈したくらいで。その、お、お見合いの話をいただいたときも、ゆっくり考えて、とだけ」
ゆっくり考えて、か……お見合いを申し込みはしたが、強引にではなくミライヤの気持ちを優先する感じか。
ノアリの言っていたように、紳士、なのだろうか。うーん、話したこともないしあんまりわからないなぁ。
「ま、周囲の目もあるか……」
例えば仮に、本気でノラムがミライヤに惚れて、お見合いを申し込んだとして……それを見る周りの目は、果たして2人を歓迎するだろうか。
もしかしたらノラムの方から積極的に話しかけたら、ミライヤが他の貴族に嫌がらせを受けるかもしれない、と考えてのことかもしれない。
一応モテるみたいだし、女子の嫉妬ってやつは怖いからな。それが平民ともなればなおさらだ。貴族と平民の壁、とでもいうべきものだ。
「ビライス・ノラム」
「ん?」
「彼の名前よ。さっき聞いてきた」
おおう、さすがノアリ行動が早い。まあノアリなら、男女問わずモテるし、話しかけられて嫌な相手はいないだろう。それにノアリの性格だ、会話の中でさらっと名前を聞いたに違いない。
ビライス・ノラムか……顔はいいし、友達も多そう。ノアリ曰く紳士なら、性格も悪くないのだろう。だが、俺はまだ彼がどんな人間か見極められていない。
「ミライヤに相応しいか、ちゃんとチェックしておかないとな」
「お父さんかあんたは」
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