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死に戻り勇者、因縁の地へと戻る
望んでいた再会……
しおりを挟む見逃してくれたゲルドとは別れ、俺たちは城への侵入を試みる。
さすがに、王女が傷つけられる事件が起きたばかり……城の警備は厳重だ。当然、入り口から入れそうにはない。
となると……外から、ということになるか。
「私と、おそらくシャリーディア様も問題なく入れるでしょう」
「だよな」
リリーの侍女であるメラさんはもちろんのこと。大神官であるディアも、疑われることなく城の中に入ることは出来るだろう。
となると……やはり、俺が城に入る方法が、問題になってくるわけだよな。
「リリー様の部屋は、壁側の……」
と、メラさんにリリーの部屋の場所を教えてもらう。外から侵入するなら、部屋の場所を知っておかないとな。
いっそ透明にでもなれれば楽なのに……チマ連れてくればよかったかな。
彼の【透明化】の『スキル』なら、本人はもちろん触れたものも透明にできるみたいだし。
「まあ、巻き込むわけにもいかないか」
無関係の人間を巻き込めない。それに、チマも含めたら三人を運ぶことになる、それはさすがにキツい。
「なんとか、外から侵入してみる。二人は、先に入っててくれ」
「……気を付けてね」
「危なくなったら、逃げてくださいよ」
「おう」
まずは俺は隠れ、ディアとメラさんが城に入っていくのを確認する。
やはり、特別な検査とかはしていないみたいだ。誰かが変装しているとか考えていないのか、それともあの門番がそういった『スキル』持ちなのか。
ともかく、俺は俺でなんとかしないと。
「登れるかな……」
国を囲っていた壁とは違って、登ろうにもでこぼこした足場がない。それに、人目にもつきやすい。
なので……考えた作戦は、こうだ。先にディアとメラさんにリリーの部屋まで行ってもらって、窓を開けてもらう。そこへ、俺が一飛びで窓から部屋の中に侵入する。
うん、完ぺきではなかろうか。
「頼むぞ、二人共……」
それから、数分。一向に窓は開かれない。
頼むぞ……ずっとここに隠れているのも、無茶だ。早いとこ窓を開けてもらわないと……
「……ん? な、なんだきさ……」
「許せ」
見回りをしている兵士に見つかり、騒ぎを起こされる前に、気絶させる。しかし、これって起きた時が怖いな……
見つからないように、木陰に隠して……と。
「……お、窓が開いた」
ふと、リリーの部屋がある場所を見上げる。そこには、窓が開いている光景があった。
多分、今までリリーの部屋に、他にも人がいたんだろうな。そして、人払いがすんだ……と。
「なんか緊張するな……いざ!」
リリーと会うのは、俺がファルマー王国を出てから。しかも、ディアとは違ってリリーは、つい最近まで俺が逃がされ、平穏に暮らしていることを知らなかった。
久々の再会だ。なんと声をかけよう……久しぶり、か? いやいや、今リリーは怪我をしているのだし、そんなフランクには……
まあいい。そのときのことは、そのとき考えるさ!
「とぅ!」
俺は、その場から一気にジャンプ。もちろん、目撃者がいないことを確認してだ。
走るのはともかく、一飛びでこの高さを登れるかは疑問だったが……なんとか、うまくいく。
「っ、とと」
手すりに手をかけ、それを飛び越えるようにしてバルコニーへ。華麗な着地。
さて……部屋の中には、リリー、ディア、メラさんがいるはずだ。もしかしたらディアたちはもう、俺の存在を教えているかもしれないな。
ま、サプライズにするつもりはないのだから、どっちでもいいのだから。
そんな気持ちを抱きつつ、俺は部屋の中へと視線を向けて……
「…………は?」
……言葉を、失った。
なぜなら……部屋の中は、真っ赤な血に染められて、いたのだから。
「っ、ディア!?」
倒れている、三人の人影……そのうちの一人は、間違いなくディアだ。
その近くに、メラさん……そして、大きくなったがリリーの姿も、あった。こんな形で、再会したかったわけじゃない。
三人共、胸から血を流して倒れていて……
ぴちゃ……
「……誰だ、お前」
血濡れた床を踏みしめ……俺を見下ろす、白い仮面をつけた人物が、そこにいた。
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