死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

文字の大きさ
上 下
237 / 263
死に戻り勇者、因縁の地へと戻る

望んでいた再会……

しおりを挟む

 見逃してくれたゲルドとは別れ、俺たちは城への侵入を試みる。

 さすがに、王女が傷つけられる事件が起きたばかり……城の警備は厳重だ。当然、入り口から入れそうにはない。

 となると……外から、ということになるか。


「私と、おそらくシャリーディア様も問題なく入れるでしょう」

「だよな」


 リリーの侍女であるメラさんはもちろんのこと。大神官であるディアも、疑われることなく城の中に入ることは出来るだろう。

 となると……やはり、俺が城に入る方法が、問題になってくるわけだよな。


「リリー様の部屋は、壁側の……」


 と、メラさんにリリーの部屋の場所を教えてもらう。外から侵入するなら、部屋の場所を知っておかないとな。

 いっそ透明にでもなれれば楽なのに……チマ連れてくればよかったかな。

 彼の【透明化】の『スキル』なら、本人はもちろん触れたものも透明にできるみたいだし。


「まあ、巻き込むわけにもいかないか」


 無関係の人間を巻き込めない。それに、チマも含めたら三人を運ぶことになる、それはさすがにキツい。


「なんとか、外から侵入してみる。二人は、先に入っててくれ」

「……気を付けてね」

「危なくなったら、逃げてくださいよ」

「おう」


 まずは俺は隠れ、ディアとメラさんが城に入っていくのを確認する。

 やはり、特別な検査とかはしていないみたいだ。誰かが変装しているとか考えていないのか、それともあの門番がそういった『スキル』持ちなのか。

 ともかく、俺は俺でなんとかしないと。


「登れるかな……」


 国を囲っていた壁とは違って、登ろうにもでこぼこした足場がない。それに、人目にもつきやすい。

 なので……考えた作戦は、こうだ。先にディアとメラさんにリリーの部屋まで行ってもらって、窓を開けてもらう。そこへ、俺が一飛びで窓から部屋の中に侵入する。

 うん、完ぺきではなかろうか。


「頼むぞ、二人共……」


 それから、数分。一向に窓は開かれない。

 頼むぞ……ずっとここに隠れているのも、無茶だ。早いとこ窓を開けてもらわないと……


「……ん? な、なんだきさ……」

「許せ」


 見回りをしている兵士に見つかり、騒ぎを起こされる前に、気絶させる。しかし、これって起きた時が怖いな……

 見つからないように、木陰に隠して……と。


「……お、窓が開いた」


 ふと、リリーの部屋がある場所を見上げる。そこには、窓が開いている光景があった。

 多分、今までリリーの部屋に、他にも人がいたんだろうな。そして、人払いがすんだ……と。


「なんか緊張するな……いざ!」


 リリーと会うのは、俺がファルマー王国を出てから。しかも、ディアとは違ってリリーは、つい最近まで俺が逃がされ、平穏に暮らしていることを知らなかった。

 久々の再会だ。なんと声をかけよう……久しぶり、か? いやいや、今リリーは怪我をしているのだし、そんなフランクには……

 まあいい。そのときのことは、そのとき考えるさ!


「とぅ!」


 俺は、その場から一気にジャンプ。もちろん、目撃者がいないことを確認してだ。

 走るのはともかく、一飛びでこの高さを登れるかは疑問だったが……なんとか、うまくいく。


「っ、とと」


 手すりに手をかけ、それを飛び越えるようにしてバルコニーへ。華麗な着地。

 さて……部屋の中には、リリー、ディア、メラさんがいるはずだ。もしかしたらディアたちはもう、俺の存在を教えているかもしれないな。

 ま、サプライズにするつもりはないのだから、どっちでもいいのだから。

 そんな気持ちを抱きつつ、俺は部屋の中へと視線を向けて……


「…………は?」


 ……言葉を、失った。

 なぜなら……部屋の中は、真っ赤な血に染められて、いたのだから。


「っ、ディア!?」


 倒れている、三人の人影……そのうちの一人は、間違いなくディアだ。

 その近くに、メラさん……そして、大きくなったがリリーの姿も、あった。こんな形で、再会したかったわけじゃない。

 三人共、胸から血を流して倒れていて……


 ぴちゃ……


「……誰だ、お前」


 血濡れた床を踏みしめ……俺を見下ろす、白い仮面をつけた人物が、そこにいた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu
ファンタジー
 迷宮に迷い込んでしまった少年がいた。憎しみが芽生え、復讐者へと豹変した少年は、迷宮を攻略したことで『前世』を手に入れる。それは少年をさらに変えるものだった。迷宮から脱出した少年は、【魔法】が差別と偏見を引き起こす世界で、復讐と大きな『謎』に挑むダークファンタジー。※小説家になろう様・カクヨム様でも投稿を始めました。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...