死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、因縁の地へと戻る

戻ってきた勇者

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 リリーの危機……それを聞きつけ、俺は因縁の地、ファルマー王国へと戻ってきた。

 リリーの侍女であるメラさん曰く、寝室でリリーは何者かに刺されていた。以降彼女に被害は及んでいないが、内部犯である可能性が高い。

 いつまた、リリーに危害が及ぶかはわからない。俺は、メラさん、そしてディアと共に、ファルマー王国へと戻ってきたわけだ。


「さて、ここからどうするか……」


 国への入り口、大門が見える位置で待機し、俺たちはここからどう動くかを改めて確認する。

 国に着いてからの動きはいろいろ確認してはいたが、まずはやはりどうやって、国の中へ入るかだ。


「やっぱり、壁を超えるのが一番だと思うんだけど」

「でも、それじゃあ目立つんじゃない?」


 俺が考えていたのは、国を囲っている壁を飛び越える、というものだ。

 人が飛び越えるのは不可能な高さではあるが、俺ならば問題ない。問題があるとすれば、誰かに見つかる可能性もなくはないということだ。


「壁を超えるやつがいるなんて思わないだろ。大丈夫だって」

「うーん……」

「入るのはそれでよくても、国内での行動はどうしますか? 国を追われたはずのロア様が歩いていては目立つのでは?」


 俺が国を出た後、指名手配のように国中に扱われているらしい。なので、国中の人間が俺の顔を知っていると考えていい。

 人間ってのは、知った相手でも意外に気付かないものだ……とはいえ、さすがに国中の人間を欺ける自信は、ないしなぁ。


「隠れて移動する、しかないよ。あいにく、隠れて移動するのには慣れてるしな」

「……では、それで行きましょう」

「いいの!? それでいけるの!?」


 結局、いろいろと考えてもこれ以上にいい案は出てこなかったのだ。ま、最悪俺とディア、メラさんは無関係だってことにできればいいさ。

 ディアとメラさんは、堂々と正面から帰る。俺は、壁を登って国内に入る……合流地点を決めておいて、あとで合流すれば問題はないだろう。


「じゃ、とりあえずここで別れよう」

「えぇ。危なくなったら、ロアだけでも逃げてよ。私たちならどうとでもなるんだから」

「はいはい」


 大神官であるディア、リリーの侍女であるメラさん……二人の立場なら、妙な疑いを持たれても、その気になれば力押しで通すことができるだろう。

 俺は、指名手配犯という扱いだ。バレて大騒ぎになったらアウト、慎重に行動しなければ。

 まずはディアとメラさんが、正面門の門番に国へ入る手続きをする。そして、門番の注意がそれている間に、俺は国内に入る。


「よ、っと」


 こんな高い壁、ちゃんと超えられるかは自分でも半信半疑だったが……うん、問題はなく、飛び越えられた。

 なんだかんだで、鈍ってはいないな。


「えっと、合流地点は……」


 人が通っていない道を選び、合流地点である教会の裏側へと移動する。

 教会には普段人は通らない。なので、誰かに見つかる可能性も少ないというわけだ。


「ここを通って……こっちか」


 久しぶりのファルマー王国、それも教会なんて、国に住んでいた時でさえ行ったことがない場所だ。

 道に迷いつつも、目的地に近づいていく。教会自体は、わかりやすい……なので、目印を見失うことはないだろう。

 今のところ、人に見つかってはいない。時間帯は朝方なので、まだ寝ている人も多いのかもしれない。


「リリー、待ってろよ……!」


 はやる気持ちを抑え、俺は合流地点へ。このまま城へと走っていってしまいたいが、そこまで無鉄砲に行くことはできない。

 合流地点には、すでにディアとメラさんが待っていた。


「二人とも、早いな」

「ロアこそ。回り道してくるから、もうちょっとかかるかと思ってたのに」

「急いできたからな」


 なんとか誰にもバレずに、国内に侵入できた。あとは、城の中へとどう忍び込むか。

 城を見上げて……考え込んでいた、そのとき。


「……てめえ……ロア、か……?」


 一番聞きたくない声が、聞こえた。
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