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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する
話は聞かせてもらいました
しおりを挟む俺も、ファルマー王国へ……リリーの下へと、戻る。
それを聞いたディアは、案の定驚きを隠せないようだ。
「いや……えぇ? そんな……でも……」
「うん、ディアの言いたいことは、わかるよ」
ディアが心配していること……それは、言われずとも俺がよくわかっている。
またあの国に戻るということは、居場所をくらませていた俺の存在を教えるということだ。それは、また命を狙われることにもなる。
「わかってるなら……」
「でも……リリーを、放っておけない」
今回の件に、ザーラ国王は関わっていないと思うが……仮に、今回の件にもあのおっさんが関わっていた場合。
ザーラは俺の命を狙い、その後リリーにも危害を加えたということになる。そんな危険な場所に、リリーを……置いておけない。
「……確かに、細かい事情を除けば、ロア様に着いてきてもらうことは助かります」
「メラさん……」
「ひとつは、なにをおいても戦力的な問題。なにが起こっているかわからない以上、戦力が多いに越したことはありません。そして、もうひとつはロア様も言ったように、移動スピードの短縮です」
極めて冷静に、メラさんは言う。きっと分身の方はリリーの感情をしているはず……心配で仕方ないはずなのに、ここまで冷静になれるとは。
続いて、メラさんは別の観点からも物事を見る。
「ロア様がファルマー王国に戻ることで、お命の危険が出てくるのは確かです。逆を言えば、ロア様の存在と無実を知らしめれば、ザーラ国王様の罪を問うことも可能でしょう。そうした場合、ロア様がまたファルマー王国に戻ってくることも可能ですが……」
「……」
「それは、望んでいないのでしたね」
そう、俺はもう、あの国に戻って暮らすつもりはない……そう思うには、ここで過ごした時間が長すぎた。
だから、戻るにしても一時的なもの。あくまでもリリーの無事を確認して……原因を排除するまでの、間だ。
「しかし、よろしいのですか? いくらロア様の足とはいえ、やはりここからファルマー王国までは距離があります。その間、この村を留守にするのは……」
「……確かにエフィたちには迷惑を掛けるな」
俺がここを離れる……さらに、ガリーもこの村を去るのだ。エフィたちには、負担を強いてしまうことになる。
それでも……
「じっとして、いられないんだ」
リリーの危険を知って、なにもなかったかのようにここで過ごしていくなんて……俺にはできない。メラさんが帰ってしまえば、もう向こうの様子を知る手立てもなくなってしまうのだし。
このモヤモヤを抱えたままでは……
「まずはエフィたちに、事情を話して……」
バァン!
「話は聞かせてもらいました!」
「うぉあ!?」
いきなり玄関の扉が開き、エフィが家の中に入ってくる。その後ろにはガリーもいる。
いや、いきなりでびっくりした……びっくりした!
「エフィ!? なんで……いつから!?」
「ふふ、いいじゃないですかそんなことは」
いや、よくはないだろ……
「行ってあげてください、アーロさん」
「……いいのか?」
「もちろんです。アーロさんにとって大切な人なんでしょう?」
そう言ってくれるエフィの気遣いに、言葉もない。話を聞いていた上で、俺の背中を後押ししてくれているのだ。
その気持ちを……無駄には、できないな。
「用件が解決したら、すぐに戻ってくるから」
「はい、待ってますね」
待ってる……か。
俺は小さくうなずいて返し、ディアとメラさんに向き直る。二人も、今のやり取りを見て異論はないようだ。
「じゃあ、俺が二人を抱えて移動するってことで、いいな?」
「はい、お願いします」
人二人を抱えて全力疾走した経験はないが、まあそれでも普通二モンスターに乗っていくよりは、速いはずだ。
時間は、ない……なので、俺はすぐに出発の準備を始める。
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