上 下
229 / 263
死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する

やりたいこと

しおりを挟む


 なぜか自信満々にうなずくリーズレッテ。彼女の意志に聞いてみようと思ったのは俺だが、さすがに即答すぎて怖い。

 なので、俺はもう一度聞く。


「いや、リーズレッテ……もう一度よく考えてみてくれ」

「はい?」

「ガリーは、魔王の娘だ」

「はい」

「ガリーは、【消滅】の『スキル』を持っている」

「はい」

「なのに、本当に大丈夫か?」

「大丈夫です」


 ……なにを持って、大丈夫なのだろう。俺には不安しかない。

 ディアも同様に、複雑そうな表情を浮かべている。俺としても、ガリーが自らやりたいと言い出したことを、尊重したい気持ちはあるが……

 そんな中で、リーズレッテはガリーの目の前に立つ。ガリーに目線を合わせるため、若干屈む。


「ねえガリーちゃん、キミは私の躍りで、感動してくれたの?」

「うん、した!」

「そっか」


 一つだけの、問答。その答えを聞き、納得したようにリーズレッテは俺たちに向き直り……


「私の踊りを好きと言ってくれた人に悪い人はいません! だから、大丈夫です!」


 仁王立ちで、すごい言い切った。


「それに、ガリーちゃんは過去はどうあれ、この村に来てから悪いことはしていないんでしょう?」

「それは、そうだが……」


 ガリーの正体について話した……つまり、ガリーがこれまでやってきたことも、当然話した。

 ガリーをこの村に連れてくるまで続いていた、モンスターの活性化。そして、実際に人間をその『スキル』により消したことも。

 それを聞いても、リーズレッテは変わらない。


「私はね……旅の途中で、いろんな人に会ってきたんですよ。それこそ、数え切れないくらい……いい人もいれば、悪い人もいて。だから、わかるんです」

「……」

「目を見れば、その人が本当は、どういう人かっていうのは」


 俺たちが、魔王を討つために各地を旅していたのと、同じように……いや、魔族と関わってばかりだった俺たちよりも、明らかに人間を多く相手にしてきたリーズレッテ。

 俺よりも、人を見る目は確かなのだろう。それに、俺が思う以上に、危険な目にもあってきたのだろう。

 いつだって明るい、彼女だが……それは、見ているところだけだ。俺の知らないところで、たくさんの苦労があったはずだ。


「けれど……本当に? 大丈夫?」

「もう、心配性ですねシャリーディア様は!」


 心配ないと、リーズレッテは笑う。本人がここまで言うんだ……きっと、大丈夫なのだろう。

 なにか、大丈夫だと計算のようなものがあるわけでは、ない。大丈夫だと、気持ちで、そう思っているのだ。


「リーズレッテがいいなら、俺から言うことはなにもないさ。ガリーがやりたいってんなら、俺が止める権利もないしな」

「じゃあ……!」

「リーズレッテ、ガリーをよろしく頼むよ」

「頼まれました!」


 こうして、ガリーはリーズレッテの旅に同行することに。旅の中で、ここでは得られなかったものを得られればいいが。

 村の中よりも、世界を回っていった方が、得るものは多いはずだもんな。これまでは俺が面倒を見ている形だったが……自発的な心が育つのは、いいもんだ。


「……やっぱりあと一泊していこうかしら」


 多分、俺に聞こえないつもりでそう呟いたディア。だがしっかり聞こえている。

 もう一泊……あぁ、そういうことか。リーズレッテは明日には村を出る、それにガリーも着いていくということは……明日の夜には、正真正銘俺の家には俺しかいなくなるということだ。

 そこに、ディアが泊まれば……二人きりに、なるよなぁ。


「こほん。とりあえず、そうとなればエフィたちに挨拶してこないと」

「わかった」


 ディアの言葉はとりあえず聞かなかったことにして、ガリーに告げる。これまでお世話になったのだ、一言言っておかなくてはならないだろう。

 いきなりのことではあるが、あの二人なら受け入れてくれる。

 駆けていくガリーの背中を、見つめていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...