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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する

人を引き付ける踊り

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 俺たちは『緑屋』へと戻った。エフィが言うには、少し前にここにリーズレッテが来たらしい。入れ違いになってしまったようだ。

 村長であるヤタラさんに会いに訪れ、踊りの許可を貰って行ったらしい。すでに、準備を始めているとのこと。

 村のみんなにも順次告知されていることだろう。今日いきなりのことではあるが、リーズレッテならば人は集まるだろうな。


「リーズ……?」

「リーズレッテ。踊り子様のことだよー」


 そういやガリーは、リーズレッテに会ったことはないんだったな。魔王の子供として壮絶な過去を送ってきたガリー、そんな彼女にとって、リーズレッテの踊りはいったいどのように見えるのか。

 あれには、人の心を動かす力が、あると思う。


「今日は、早めに店じまいをしてしまいましょう」


 エフィも楽しみにしている。それに、リーズレッテが踊るのにお店を訪れる人なんていない……きっとほとんどのお店が、もう店じまいを始めている頃だろう。

 俺たちは店内の片付けに入る。ディアとメラさんも手伝ってくれて、特にメラさんは普段からそういったことを仕事にしているためか、スムーズに作業が進んでいく。

 今日も、メラさんがいたおかげでむしろいつもよりも売上はよかったらしい。ちょっとジェラシー。


「さ、行きましょうか」


 片付けも終わり、踊りが披露される広場へと向かう。すでに広場には数多くの村人が集まっていた。

 これだけで、リーズレッテがどれだけ人々に期待されているのか、わかるってもんだ。


「わあ、すごい人の数!」

「ほとんどの村の人たちが集まっていますからねー。それだけ、踊り子様の踊りは人を引き付ける魅力があります!」

「わかる!」


 すでにディアとエフィは、盛り上がっているな。その傍ら、ガリーが不思議そうに眺めていた。


「どうかしたか?」

「ん……みんな、楽しそうだなって、思って」


 多分、ガリーはこういったイベントには慣れていないのだろう。だからこそ、楽しんでほしいものだ。

 そうしているうちに、人々から大きな歓声が上がる。用意されたステージに現れたリーズレッテは、露出の多い踊り子の衣装に身を包み、みんなに手を振っている。

 すげえな、彼女が手を振るだけで、この盛り上がりようだ。


「……すごい」


 そう呟くガリーは……いや、ガリー以外の誰もが。リーズレッテに夢中だった。

 一見品があるようで、時に荒々しく。最低限の音楽を背景に、情熱的な踊りを披露していく。

 それは、数分のことだったかもしれないし、あるいは一時間は経っていたかもしれない。時間を忘れてしまうような、そんな踊りだった。


「……ありがとうございました!」


 そんな、幸福な時間にも終わりは来る。額に流れる汗を拭い、リーズレッテは人々に声をかけた。人々もまた、そんな彼女に応えるように、声を張り上げる。

 村の外からもたらされた、娯楽……それは、人々を夢中にさせた。


「すごい……すごい……!」


 その中で、ガリーは自分の胸を押さえていた。まるで、高鳴る鼓動を必死に抑えようとするかのように。

 ディアも、エフィも、みんなが夢中になっている。それは、俺たち『勇者』とはまた違った形で、人々の心を引き付ける存在。

 ステージから降りたリーズレッテは、あっという間に村人たちに囲まれて……一人一人に、丁寧に対応していく。

 その後、長い時間をかけて、俺たちのところまでやって来た。


「皆さん、どうでした?」

「すっごかった!」


 感情を露にするのは、ディアだ。

 ディアは、リーズレッテとは旅の途中で会ったが……以降、彼女とは会っていない。久しぶりの出来事だ。だから、感動も大きいのだろう。

 素直な感想に、リーズレッテも嬉しそうで。


「キミは、どうだった?」

「わ、わたし?」


 ここで初めて会う、ガリーに言葉をかける。

 ガリーは少し戸惑ったように、視線をッさ迷わせながらも……リーズレッテの目を見つめながら、はっきりと言う。

 その瞳は、今まで見たことがないような光を宿しているのを、俺は見逃さなかった。
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