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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する
懐かしい話
しおりを挟む食事の時間が終わり、残すは眠るだけとなった。もちろん、寝るまでの間に他愛ない話で盛り上がったが。
ディアは俺の話を聞いてくるし、俺だってディアの話を聞いた。互いに、互いの知らなかった時間を埋めていく……そんな形で、話し合っていうのだ。
俺がファルマー王国を出てからのこと……このラーダ村で、いろんな人たちと触れ合い、今やここで骨を埋める決意も固めていること。みんないい人たちで、気さくに話しかけてくれる人ばかりなこと。
ディアは、俺が国を出てから……大神官として、ほとんど教会にいるらしい。あまり自由はないが、それなりに充実した日々ではあるとのこと。
「安心したわ。私、ずっと不安だったんだから……一人で、生きることを強いてしまったって」
「今、俺は楽しいよ。あのままだったら殺されてたわけだし、ディアには感謝しかないよ」
「……死なせたく、なかったから」
ディアは俺を逃がしたことで、ゲルドやザーラ国王からなにかしらの追求を受けた……と、思っていたのだが。意外にも、なにもなかったらしい。
その場にいたはずのゲルドから、なにを言われるわけでもなく。ディアが俺を逃がしたかもしれない、とザーラ国王に報告したのかさえも、わからない。
ただわかるのは、ディアは今もこうして、無事だ……ということだ。
「ま、なにもなかったならよかったよ。俺だって、ディアのことが気がかりだったんだからさ」
「ふふ。私が大神官だから、下手なことはできなかったのかもね。そうだ、カルボ村もちゃんと、無事だからね」
「そっか」
カルボ村……俺の故郷も、無事とのことだ。俺が逃げたことで、俺の故郷に被害が行く可能性を考慮したディアが、カルボ村に手を出させないために、ファルマー王国に残った。
己の立場を利用して、俺の故郷にまで被害が行かないよう、手を回してくれたのだ。
あの国王なら、俺が故郷で匿われているだけでなく、俺に逃げられた腹いせだけで、故郷に手を出しそうだしな。
「でも、いいの? おじさんやおばさんは……」
「あぁ……そこは心残りだけど、仕方ないさ」
俺が、ファルマー王国で指名手配されていること……それは、カルボ村にまで情報が届いている可能性は高い。
その場合、両親や村で家族同然に育ったみんなに、多大な心配をさせることになる。だが、俺の無事を知らせれば、心配以上に迷惑をかけることに、なりかねない。
こればかりは……どうしようも、できない。そう、たとえばザーラ国王の口を塞ぐでもしない限り……
「ロア、なんかすごい変な顔してたわよ?」
「へぇ? いや、なんでもないよ!」
いかんいかん、どうもあの国王のことを考えると、物騒な考えをしてしまいそうになってしまう。
もうあの男と会うことはないんだ、今ファルマー王国は大変らしいが……悪いが、俺にはもう関係のないことだし。
「ん……ふぁ、あ」
「そろそろ寝るか?」
かなり話し込んでしまったが、睡魔が襲ってきたのだろう。ディアが大きなあくびをする。
ちなみにガリーは、すでに自分の部屋で就寝中だ。俺とディアに気を利かせてくれた……わけでは、ない。眠かったから寝ただけだ。
「じゃ、ディアはどこで寝てもらうか……」
ガリーと同じ部屋でとも考えたが、もうガリー寝ちゃってるしな。かといって、広間にというわけにもいかないだろう。
空き部屋、といっても、ディアがいきなり来ることになって掃除とかする余裕もなかったし。となると……
俺の部屋で寝てもらうか。で、俺がどっか別の場所で……
「あの、そのことなんだけど……」
「うん?」
ディアがなにやら、手を組みもじもじと、体を左右に揺らして……顔を上げて、言った。
「私はその……ロアと、同じ布団で……布団が、いいかなぁ……なんて」
「……なんだと……?」
またもとんでもないことを、言い放った。
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