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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する
二人きりではないけれど
しおりを挟む「へー、ここがロアが住んでる家なのね!」
「……」
ディアが、俺の家にやってきた。結局あのあと、俺を監視するガリーを監視すると言って、聞かなかった。
その、子供のような駄々にみんな折れたわけだ。ちなみにメラさんはエフィとヤタラさんのところで厄介になるらしい。
どうしてディアが、そんなにも俺の家で泊まりたいと譲らなかったのか……まあ、理由はわからんでもない。ディアの俺に対する気持ちは知ってるし、長い間離れ離れだったんだ。
俺だってディアともっと話したい……が、さすがにひとつ屋根の下で一夜を明かすことになるとは。
「ロアの家でロアと二人きり……の、つもりだったんだけどね」
「……?」
浮かれていたディアの視線が鋭くなり、ガリーへと向けられる。当のガリーは、なんでそんな視線を向けられているのか、わかっていないようであるが。
「ぐぬぬ……とんでもない邪魔だわあの女……!」
「? どうかした? 私の顔になにかついてる?」
「目と鼻と口がついてるわよ!」
ガリーはあまり、表情に出すタイプではない。それゆえに、なにを考えているのかわからなかったりっする。
それが、ディアにはもやもやするのだろう。
「はぁ……ロアもお人好しっていうか……よくこんな危険な子を住まわせようと思ったわね」
ガリーに聞こえないように、ディアがこっそりと話しかけてくる。
「放置しておく方が、危険だしね……」
実際に、ガリーの『スキル』のせいで周辺のモンスターたちは活性化した。彼女が直接的に被害を出していなくても、間接的には……
そう考えた時、こうして見張っていた方がまだ安全だと思ったわけで。
「はぁ……ま、ロアが決めたことなんだし、今更私があれこれ言っても仕方ないわ。でも、気を付けてよ」
「あぁ、もちろん」
ディアが俺を心配してくれているというのはわかる。ま、今日までなにも起こらなかったんだ……ガリーにも、敵意がないのはもうわかっている。
それでも、一人きりにはまだできないが。
「んーっ……はぁ。なんか疲れちゃった」
「さっき散々休んでいた気がするけど?」
「それはそれ、これはこれよ」
俺が働いている最中ほとんど座って休んでいたと思うのだが……ま、いいか。
その後ディアにお風呂を勧める。てっきりディア一人で入るのかと思っていたが、なぜかガリーを誘った。二人きりの空間で、なにか話をしたのか……それとも、ただ俺とガリーを二人にしたくないからかはわからなかったが。
そういや、ディアの着替えをどうするか……まさか、同じものを着せるわけにもいかない。とはいえ女物の予備なんて、ないしなぁ。
ガリーの服については、エフィ含め村人からあまりものを貰っている。その中から、ちょうどディアのサイズに合うものがあれば……
「……サイズ、かぁ」
服を整理して入れてある棚を開きつつ、俺は呟く。あまりものを貰うとは、つまりガリーのサイズに合ったものをだ。
しかし、ガリーとディアとではその……サイズが、合わない。子供のような体型のガリーと、それはもう立派に成長したディアとでは。
そもそもの年齢の違いもあるが……一部分の……
「しゃあないか」
今からエフィに、あまった服がないかと尋ねるのも悪い。ここは、幼馴染のよしみとして、俺の服で我慢してもらおう。
男と女ではあるが、まあサイズ感は多分問題ない。少なくともガリーのものよりは。
「二人共、服ここに置いとくから、ゆっくりしてけなー」
「はーい、ありがとう」
さて、着替えもこれでよし。晩御飯は……どこかに食べに行ってもいいと言ったのだが、ディアは俺が料理で斬ることを知ると、俺の手作り料理を食べたいと言って聞かなかった。
ま、それならそれで……腕によりをかけて、作るとするか。
「ふぁー、さっぱりしたー。ロア、ありがとうね」
「いや、気にするな。今飯作ってるから適当に……」
振り向くと、そこには……俺のシャツを着たディアが、立っていた。あともこもこしたパジャマに身を包んだガリー。
「えっと……これ、ロアの、よね」
「あぁ……いや、だったか?」
「ううん……これが、いい」
なんというか……大きさ的には問題ないはずなのだが。袖の部分がちょっとダボッとなっているのとか。シャツの裾が少し長くて下が履いてないように見えるのとか。
いろいろと、ヤバいな。破壊力。
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