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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する
再会パート4
しおりを挟む「ロアー!」
「ディ……ぶへら!?」
突然現れた黒い不審者……その正体は、驚くことにディアだった。あまりに急なことに驚いたが、間違いない。俺がディアの顔を見間違えるはずがないし。
感動の再会……と思われたが、そうもならない。なんせ、黒い鎧に身を包んだ人一人が、飛びかかってきたのだ。
その重量を支えることができず、押し倒されてしまう。あと鎧に顔ぶつけた。
「いっ……ディ、ディア、なんでここにぃいててててて!」
「ロア、ロア、ロアー!」
なぜ、ディアがここにいるのか……その理由を聞きたかったが、その瞬間に体を抱きしめられてしまう。
女性に抱きしめられる、と言えば聞こえはいいが、今のディアは鎧に身を包んでいるのだ。ゴツゴツした感触、所々固いところもあり、抱きしめられると体に突き刺さる。
痛い痛い痛い! なにこれ拷問!?
「シャリーディア様、そのへんで。ロア様が死んでしまいます」
「へ? ……キャー、ごめんなさい!」
メラのおかげで、なんとか解放される。あのままじゃ本当に危なかった。命を助けられたディアに殺されそうになるとかどんな急展開だ。
その後何度か咳き込み、落ち着く。
「ふぅ……ひ、久しぶり、ディア」
「うん、久しぶりロア!」
「ちょっ、鼻水鼻水!」
懐かしい笑顔、クリーム色のサラサラの髪……外見も、一致する。
本当に、久しぶりだ。ファルマー王国を出て以来の再会となる。その間、ディアのことを忘れた日はなかったが。
涙と鼻水に顔を濡らしているのが、ディアらしいっちゃディアらしいが。シャリーディアの頃の見る影もない。
「あ、あのー……?」
そこへ、別の角度から声が。見ると、そこには唖然とした様子でエフィが立っていた。目を丸くしている。
それはそうだろう。いきなり全身黒鎧の不審者が現れたと思ったら、急に俺に抱きつき、泣いて再会を喜んでいるのだから。
「あー……なんて説明したらいいか。いや、俺も説明が欲しいんだけど」
俺とディアの関係性。それは、エフィに少し説明すればいいだろう。俺が国を追われたことは話してある。その際助けてくれた人だと言えばいいのだ。
だが、そのディアが、どうしてここにいるのか。それも、リリーの給仕係だというメラさんと一緒に。
「……そちらは?」
「えっと、お世話になってるエフィ。俺はこの店で働いてるんだ。そっちが、最近働き始めたガリー」
「ふぅん……」
「ど、どうも……」
「ふふ、どうもー」
なんだろう、一瞬ディアの気配が変わったような気がする。
とりあえず、ディアには離れてもらい……店も、昼休憩に入る時間帯であるため、休憩中の札を出す。
で、奥の部屋へ向かって、それぞれ席に座る。丸テーブルを囲うように。
「この度は突然の訪問、申し訳ありません」
「あ、いえそんな」
開口一番に、ディアが謝罪の言葉を告げる。礼を受け、エフィは困ったように苦笑いを浮かべるのみ。
そして、顔を上げたディアは……
「自己紹介がまだでしたね。私は、ファルマー王国で神官を務めさせて頂いてます。シャリーディア・ラー・フランツェルと申します」
先ほどの、涙と鼻水にまみれた顔はどうしたというほどに凛々しい顔で、堂々自己紹介したのだった。
「ど、どうも。……あれ、でもさっき、ディアって……」
「それは、あだ名のようなものです。……こちらは、メラさん。今回、私の護衛という形で共に来てもらいました」
「メラと申します」
「これは、どうも」
続いて、先ほど俺が簡易的に紹介したが、エフィ、ガリーがそれぞれ名乗っていく。ガリーの場合、ただ名前を告げるだけだったが。
彼女の正体に関しては、追々話していけばいいだろう。
「わしは、このラーダ村の村長をしておる、ヤタラと言います。神官殿」
「村長さんでしたか。そんな堅苦しくなくても大丈夫ですよ」
一通りの自己紹介が終わる。
さて、次はディアたちがここに来た理由を、聞くとしよう。先ほどの行動を思い出すに、たまたま俺がこの村にいるとわかったってより、初めから俺がこの村にいるとわかっていたって感じだったが。
その空気を感じたのか、ディアは小さくうなずく。
「私がこの村に来た理由は、もちろんロアに会うため。私は、メラさんからあなたが、この村にいることを聞いたの」
「メラさんから? でも……」
「はい、ロア様は場所の名前は伏せておりました。ですが、兵士チュナールからの報告から場所を割り出し、リリー様に。そしてシャリーディア様にお伝えしたのです」
その、報告を受けたディアが、メラさんを伴ってここへ来た……と。すごい行動力だな。
そしてディアは、口を開く。ここに来るまでの経緯を、語るために。
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