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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する
王女として
しおりを挟むロアが生きている……その事実を聞き、リリーはここ数日で一番くらいに舞い上がっていた。その場でぴょんぴょんと飛び跳ねたいどころか、窓の外へ羽ばたいてしまいたいくらい。
もちろん、リリーには翼なんて生えていないので、羽ばたくことなどできないのであるが。
「ロアお兄ちゃんが生きてるって、ドーマスおじちゃんやミランシェお姉ちゃんにも教えたほうがいいかな。でも、あんまり多くの人に教えるのは……じゃあせめて、ディアお姉ちゃんには……」
ロアの希望で、ロアが今暮らしている場所はこちらには知らされていない。だが、予想はできる。
以前の報告で、チュナールたちはセント町という町で調査を終え、ラーダ村という場所に向かうと行っていた。そして、このタイミングでのロア発見の報告だ。
ロアは、セント町からラーダ村、その周辺を範囲とした場所に、いる可能性が高い。
「ふふふ、ロアお兄ちゃんも案外甘いね……って、どうしたのメラ?」
居場所は内緒だと伝えてもらえなかったが、そもそも兵士たちが今どこにいるのか、逐一報告をもらっているのだ。
そのため、前回報告を貰った地域と、その周辺とを含めて考えてみれば、その中にロアがいる可能性は高い。これはとんだ落とし穴だねお兄ちゃん、と、リリーは怪しげに笑っていた。
だが、そこでさっきから押し黙ったままのメラの姿を見つけ、首を傾げる。彼女も、リリーほどではないがロアの生存には気になるところを見せていたのに。
「いえ、その……なんというか……」
「もしかして、さっきの悪い話ってやつ?」
「……」
小さく、メラはうなずく。
普段、あまり表情を表に出すことのないメラ。リリーは、長年の付き合いからかすかな表情の変化から、彼女の気持ちを汲み取ることができるが。
そうしたリリーの見立てでは……
「そんなに、悪い話なの?」
少なくとも、簡単に受け流せるような話題ではないように感じられた。メラの表情は硬く、思わずリリーにも緊張が移ってしまう。
いい話が、ロアの生存確認。それと対象となるほどに悪い話題……ではないと信じたいが。
「いいよ、話して」
メラは、リリーに話そうか迷っている。それほどに、リリーに聞かせていいかわからないほどの内容なのだ。
だが、一国の王女として、ただいい話だけを聞いておくわけにもいかない。それがどんなに悪い話題であろうと、しっかりと受け止めなければ。
「……わかったわ」
そのリリーの覚悟に折れ、メラは口調を崩しつつうなずいた。
そして、小さく深呼吸をして……
「ゲルド様に同行した兵士。バングーマ、ゾラ、タンリー、へヴァ、チュナール……以上五名のうち、チュナールを除く四名が、亡くなったみたい」
「……ん? なくなっ……」
「死んだ、ということよ」
どれだけ悪い話題かはわからないが、覚悟はしていた。していたはずだったが……その内容は、リリーの予想の遥か上を行くものだった。
人が、死んだ……それも、四人も。
「えっ、な……なん、で……?」
「わからないわ。チュナールからは、帰ったら話す、と」
リリーは、力なく椅子に深く座り込んだ。別にリリーは、今挙げられた兵士たちと仲が良かったわけではない。兵士長のバングーマはともかく、その部下は顔をあわせたのも一度くらいのものだ。
それでも……人が死ぬと、そういった話は、リリーの心を大きく揺らす。
「リリー……」
「だい、じょうぶ……うん、大丈夫……」
先ほどまでロアの話を聞いて舞い上がっていたのに、今では胃の中のものを嘔吐しないよう口を押さえるので精一杯だ。
これは、ロアの話を先に聞いておいてよかった。もしこの後に聞いていたら、いったいどんな反応をすればいいか、わからなかったから。
「……」
ゲルドの護衛として、それなりに屈強な兵士たちだと聞いていた。それが……四人も、死んでしまった。
リリーは、己の心を整理するのに……少しばかりの、時間を要した。
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