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死に戻り勇者、魔王の娘と対峙する
隠し事はなんですか
しおりを挟む「あ、すみませんつい」
「ぷはっ……」
我を忘れていたらしいエフィだが、ガリーが窒息しそうになっていることに気づくと、ガリーの頭を抱きしめる力を緩める。
そのおかげで、ガリーはなんとか解放されたようだ。正直うらやましいが、本人はそれどころではないようで。
「し、死ぬかと……思った……」
半べそになりながら、大きく呼吸を整えている。あぁ、あれ、マジで危なかったんだろうな。
エフィはエフィで、「大丈夫大丈夫」と告げながらガリーの背中を叩き、落ち着かせている。誰のせいだよ誰の。
「こほん。……エフィ今、この子……ガリーのこと、かわいいって言った?」
「はい! もちろん!」
「!」
やはり、先ほどガリーをかわいいと言っていたのは嘘ではないらしい。力強く答え、声が大きかったのに驚いたのかガリーが少し震えている。
全然そんなつもりはないが殺されそうになったことで、エフィに対してガリーはちょっと怖く感じているようだ。
「えっと……半分魔族、だよ?」
「さっき聞きました!」
念押しするようにガリーの正体を告げるが、それをわかった上でのあの反応か……予想外に、エフィは強いというか、すごいというか。
さっき、エフィに対して驚いたようにため息を漏らしていたのは、もしやかわいいものを前にして興奮を抑えようとしていたのだろうか。
そして、抑えきれなくなった結果があれだと。
「魔族と人間の子供? 確かにそれを聞いて驚きましたけど……それを含めて、かわいいです! なんですかこの角、これもとてもかわいいです!」
「あぅ」
「エフィは小さいものが好きじゃからのー」
「そういう問題!?」
とりあえず、エフィはガリーを受け入れてくれた……のだろうか。ヤタラさんからも、別にガリーに対して敵意のようなものは見られない。
まあ受け入れてくれたとはいえ、それはガリーという少女についてだ。この村に住まわせてほしいというのとは、また別問題で……
「待ってください」
しかし、そこに待ったをかける人物がいた。……チュナールさんだ。
彼は警戒心を隠すこともせず、じっとガリーを見つめている。腰の剣に手を添えて。
じっと構えたままの状態で動かないのは、曲がりなりにも俺のお願いを聞いてくれているからだろう。いきなり斬りかからないでくれという、突拍子もないお願いだ。
俺がそのお願いをした理由が、今ならばチュナールさんにもわかるだろう。
「……その子は、魔族……なんですよね」
「半分な」
「半分は……ですよね」
やはり、王国の兵士ともなれば、そう簡単に割り切れはしないか。
目の前に、魔族がいる。それが純粋な魔族ではないとはいえ、逆に純粋な人間ではないことにも変わりはない。
ただ……
「チュナールさんは直接、魔族を見たことは?」
「……ないです」
「この子は、危険な魔族では…………ないですよ」
「そのタメは?」
魔族と直接会ったことがなく、見たこともない。ならば、彼が感じている魔族への脅威は知識のみのものだ。
……ただ、ガリーが危険じゃないと断ずることは、できない。なんせ、【消滅】の力で四人もの兵士を消しているのだから。
その事実を隠したままでいるのは、この場で血なまぐさい光景になるのは勘弁願いたいからだ。それに、ガリーの過去を聞いてはこの子を完全悪としてしまうのも気が引ける。
だからって、この子の罪がなくなるわけではないのだが。
「アーロさん、なにか隠してません?」
「い、いやぁ?」
ガリーが魔族と人間の子供であることは明かしても、【消滅】の力を持っていることは話していない。隠し事があることを、悟られてしまったようだ。
「そういえば、アーロさん。先ほど確認しに行った光の正体は、わかったんですか?」
「!」
さらに隠し事を突いてくるように、エフィが俺に問うてきた。
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