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死に戻り勇者、因縁と対峙す
どうしたらいいのだろう
しおりを挟む「なんと! あなたがアーロさんでしたか!」
「えぇ……」
俺がアーロだと、バレてしまった。しかし、まだロアだとはバレてはいない。
ゲルドに見つかるのはなんとしても、防がなくては。
「これはなんという幸運! 訪れたお店に捜し人がいるとは! おい、早くゲルド様に……」
「あーっ、待った!」
よほど嬉しかったのか、それを隠すこともなくバングーマさんは、別の男にゲルドへの言伝を頼もうとする。
だが、それはまずい。ここでゲルドを呼ばれるわけにはいかない。
俺は、ストップをかけた。
「は、なにか……?」
きょとんとした様子で、バングーマさんたちは首を傾げる。
あぁくそ、もう考える時間ももったいない!
「今日は、もう遅い。一晩この村に泊まってはいかがです?」
「え、しかし……」
「そこまで急ぎの用だというのなら別ですが、こんな暗い中で事を成すのは難しいですよ」
なんとか、この場でゲルドに伝えられるのだけは避けなければ。俺は考え得る限り、不自然でない方法を探す。一歩引いた言い方も、忘れない。
そこで、バングーマさんたちはなにやらひそひそ話を始める。
「失礼。……彼の言うことも、一理あるな」
「一理どころか何理もありますよ。だいたい、ゲルド様がアーロさんを捜してたのって、アーロさんと手合わせしたいからでしょう?」
「こんな遅い時間では満足にそんなことできませんし、失礼ですよ」
「それに、今伝えて明日の朝まで待って言って、素直に聞く人じゃないですよ」
「ここは、明日の朝一に伝えるのが得策ですよ」
「ううむ、そうかもな」
ひそひそ話ではあるが、会話の内容はぼんやり聞こえている。ゲルドの周りからの評価ヤバいな。
そこで、結論が出たのかバングーマさんは振り向き、咳ばらいを一つ。
「失礼しました。……アーロさんの言う通り、今日は遅い。用件は、明日果たしに来るとします」
「あっはは、それがいいですね」
「そこで、今日泊まれる宿は、ありますかな」
それから、バングーマさんたちは一夜をこの村で明かすことにし、宿を紹介した。
ゲルドにはひとまず、今日は遅いので宿の手配だけした。捜し人の件は明日にする……と伝えておくようだ。
「はぁ……」
彼らが店から出ていき、俺はどっとため息をついた。なんか、すげー疲れた。
これで、とりあえず明日の朝まで、ゲルドたちが押し掛けてくることはないはずだ。
とはいえ……
「どうすっかなぁ」
「どうしたんですか?」
バングーマさんたちと一緒にゲルドがいなかったのが不幸中の幸いだ。もしいたらと思うと……ゾッとしないな。
時間稼ぎはできたとはいえ、今夜中から明日の朝一に時間が伸びただけだ。根本的な解決にはなっていない。
一つの手として、逃げるか……いや、しかしせっかく手に入れた安寧の生活。なにより、エフィたちに世話になっておきながら、正体がバレそうなのでさようならはふざけた話だ。
「なら、仮病ってことにするか……いやでもなぁ」
「あのー、アーロさん?」
ゲルドたちが尋ねてきても、仮病ということで身を隠せばいいのでは。そう思ったが、あのゲルドのことだ。アーロがここにいるとわかった時点で、会えるまで粘るに違いない。
そう考えると、たとえ逃げてもしつこく追ってくるだろうし。あいつ、普段は周りのことどうでもいいとか思ってるのに、興味のひかれたものに執着するからな。
「アーロさん!」
「わっ! ……え、エフィ?」
「さっきから話しかけてるのに、ボーッとしてどうしたんですか?」
耳元でエフィに声を上げられ、俺は肩を震わせる。どうやらさっきからエフィが話しかけていたようだ……考え事をしていたせいで、全然気づかなかった。
悪いことをしてしまったな。
「ごめん、ちょっと考え事をしてて」
「……さっきの人たちの、ことですか?」
鋭いな。……いや、さっきの俺の様子を見れば誰でもわかるか。
……そうだ。とりあえず……エフィに、相談しよう。エフィは俺の事情を知っている。なにか、いい案が出てくるかもしれない。
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