死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、因縁と対峙す

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 アーロ……このセント町に現れたハイプテラの大群を、町の冒険者と協力し撃退した、隣村に住む男の名前。

 冒険者ではないという。そもそも隣のラーダ村には冒険者ギルドはなく、冒険者という存在はいない。

 バングーマは、思い返す。セント町に来るにあたり、この付近の地図をもらった。そして、それを見返すが……いくら探しても、ラーダ村という地名はない。


「つまりそれほど、小さな村ということか?」


 ぼそっと、バングーマがつぶやく。小さな村ゆえに地図に地名が載っていないのか。しかし、集落ならともかく町や村なら、いかに小さくとも名前くらい載っていると思うのだが。


「んん? それ、結構昔の地図ですね」

「! そうなのか?」


 いつの間にか地図を覗き込んでいた女性。プラと言ったか……が、指摘する。これは、古めの地図であると。

 なるほど地図が古ければ、最近できた地名は載っていないだろう。つまり、ラーダ村とは最近できた村なのであろうか。


「そんなところに、ハイプテラをも撃退する実力者か」


 モンスター活性化の理由とは、おそらく関係ないだろう。しかし、バングーマはその男のことが気になっていた。それほどに強い人物、ぜひとも一度会ってみたい。

 とはいえ、私情でそのようなことを言い出すわけにもいかない……が……


「へぇ、おもしれぇな」


 先ほどまで興味なさげにしていたゲルドであったが、イキイキと地図を覗き込んでいた。その顔は、若干凶悪に歪んでいる。


「おい、そのラーダ村ってのはどこなんだ?」

「え? そうだな……この地図で言うなら、ここかな」


 ライバーは、悩みながらも地図のある一箇所を指差す。そこは、モンスターが出現するポイントとも、重なっていた。

 それを確認すれば……私情ではなく、モンスターの生態調査を理由にラーダ村へ向かうことも可能だろう。


「なるほどね。なら、この町での調べ物が終わったら、そこに行ってみようぜ」

「えぇ、そうですね」


 どうやらゲルドも、ラーダ村……アーロという人物に、興味をひかれたらしい。

 冒険者でもなく、ハイプテラを撃退するほどの実力を持った人物。さらに、ライバーの話し方を見ていると、危険な人物ではなく話しやすそうな人物というのがわかる。

 それだけに、モンスター活性化の直接の原因ではないだろうが……なんらかの関わりが、ある可能性もある。調べてみる必要が、ある。


「いい話を聞いたぜ、えー……ライナー」

「ライバーだ。えっと、キミは……」

「ゲルドだ」


 一応、情報をもらった礼ということだろう。ゲルドは口端を上げつつ、手を差し出す。ライバーはそれに応じ、二人は固い握手を交わす。

 セント町での調査が終われば、次はラーダ村へと向かう。モンスターの生態調査という大義名分があるため、ゲルドの本心はまだなにもわかってくれるな……というものであった。


「情報、感謝する」

「え? あ、あぁ」


 バングーマは改めて礼を告げるが、ライバーはその意味がわかっていないようだ。わざわざ説明する必要もないだろう。

 ハイプテラを撃退したどころか、ライバーの口振りだとAランク冒険者に匹敵するほどの実力者であるらしい。そのような人物、これからでも会うのが楽しみだ。

 その後、バングーマは部下たちに、この後調査の延長としてラーダ村に向かうことを伝える。


「ラーダ村のアーロさん、ですか」

「あぁ。ゲルド様が興味を持ったようでな」


 実際はバングーマ自身も興味を持っているのだが、わざわざそこまで話す必要はないと、言葉は続けない。

 兵士たちの間でも、それはどんな人物だだのそんなに強いのかだのと話をしていた。そんな中で……


「……」


 四人の兵士のうちで、一人だけ、ゲルドの姿をじっと見つめている、兵士がいた。
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