死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、因縁と対峙す

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「……ふぅ、これでひとまずは騒ぎは収まりましたかね」

「あぁ、そのようだ」


 残る一匹のハイリザードを斬り伏せ、へヴァは深くため息を漏らす。その言葉に、うなずくのはバングーマだ。

 ハイリザードの大群……それを、ボス含め倒しきった六人の兵士は、額から流れる汗を拭う。


「お疲れさん、やるじゃねーか」

「ど、どうも」


 そんな五人を称賛するのは、パチ……パチ……と渇いた拍手を鳴らすゲルドだ。彼は、兵士五人の活躍を黙って見ていた。

 元々、ゲルドの手をわずらわせる必要はないと言ったのはバングーマだ。なので、別に手伝ってくれとは思っていなかったが……


「ゲルド様、その血は……」

「こっちに一匹飛びかかってきたのがいたんで、殺した」


 ゲルドの服には、血……返り血が付着していた。その理由を、ゲルドは話した。

 いかに暴れているとはいえ、極力モンスターは殺さないようにと言いたいところだが……


「お前らがもうちっと早ぇ仕事をすれば、俺の服が台無しになることもなかったのになぁ」

「……申し訳ありません」


 嫌味ったらしく、そんなことを言われてしまえば……これ以上、こちらからなにか指摘しようものなら彼の機嫌を損ねてしまうだろう。


「……ところで、ゲルド様。今回の騒動も、やはり……」

「あ? ……あぁ、そうみたいだな。ハイリザードん中に、黒いモヤが見えたよ」


 どうやら、ゲルドの【鑑定眼】はハイリザードの中に、他の活性化したモンスターと同じ現象が見えていたようだ。

 大群で町を襲った辺り、やはりなにかあるとは思っていたが……


「うわぁ、皆さんすごいですね!」


 そんな中で、歓喜に声を荒げる者がいた。ラニーだ。

 いや、彼女だけではない。今や町中の人々の注目が、バングーマたちに集められていた。


「これは……できるだけ、注目は集めたくなかったのですが」

「いやあ、今回はオレの出番はなしか。あんたら、かなりやるじゃないか」


 やってしまったと顔を押さえるバングーマの前に、一人の青年が現れる。

 その装いから、冒険者だろうか。


「俺はライバーってもんだ。あんたら、ずいぶん名のある冒険者と見たが……」

「いや、我々は旅の者だ……」


 ずいぶんとなれなれしいが、まあいいだろう。それより、ライバーと名乗った彼こそかなりのやり手のようだ。


「そうなのか。まあオレは? 高ランクのAランク冒険者だからな! わからないことはなんでも聞いてくれ」

「へぇー、そりゃすげえ」


 自慢げ……決して嫌味ではないのだが……を受け、ライバーは興味なさげに応えた。幸運なのは、ゲルドの投げやりな様子にライバーが気がついていないことだろう。

 しかし、チラッとライバーを見たゲルドの目の色が……変わった。


「そっちの二人も、冒険者なのか?」

「え? あぁ……俺の中まで、プラとマイだ」

「へぇ……じゃあどうよ、そこの二人、この後俺の部屋にでも……」

「ごほん!」


 またもゲルドの悪い癖が出る……その前に、大きな咳ばらいを持ってバングーマは止める。ゲルドは小さく舌打ち。

 しかし、高ランクの冒険者というのは嘘ではないようだ。彼らに任せていても、被害は広がらなかったかもしれない。


「あんたは戦ってなかったようだが、多分あんたが一番強いな」

「どうも」


 ライバーの褒め言葉にも、ゲルドは無関心だ。バングーマは、内心で嘆息した。


「しかし、町の外から来た奴に町を救ってもらったのは、これで二度目だな」

「二度目?」

「あぁ。隣村に住んでる奴で、あんたらのように冒険者じゃないって言ってたがな」

「……それはもしや、ハイプテラの大群を撃退したという?」

「そうそう、よく知ってるな」


 他の兵士は、町の人々の相手で手一杯のようだ。

 興味なさげなゲルドであったが、今のライバーの言葉には、少し興味がわいたようだ。目線を、静かに向ける。


「まさかそれほどに実力のある者が、いるとはな」

「俺も驚いたよ。確か……アーロって言ったな。面白い奴だよ」
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