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死に戻り勇者、因縁と対峙す
新たな仲間
しおりを挟む「というわけで、この子をこの村に住まわせてあげたいんですが」
エフィの答えは、ワモニグラを住まわせてあげようというものだった。彼女ならば嫌とは言わないだろうと、どこか確信があった。
そして、ワモニグラを連れて村へと戻ってきた。当然、ワモニグラほどの巨体は注目され、こちらから働きかけるまでもなく人が集まったというわけだ。
「ふむ……危険は、ないのじゃな?」
「確証はできません。けれど、面倒はしっかりと見ますので」
「プゥ!」
ワモニグラの脅威を実際に見ていない村の人たちは、どこか緊張感はない。「まあいいんじゃないか」とか「かわいいしいいんじゃない」とか。
どうやら、ほとんどがワモニグラを住まわせることに反対意見は、ないらしい。
「それで畑が豊かになるなら、願ったりだ!」
「けど、そいつが通ってきた道、すでに荒れてるけど大丈夫なのか?」
「えぇ。ワモニグラが通った道は、健康な土になって元に戻るんです」
「なにそれちょっと怖い」
村の人たちの賛同も得て、ワモニグラをラーダ村に住まわせることを決定する。総出で反対されたらさすがにどうしようかと思ったが、そんなことはないようでよかった。
住むところは、俺の家の近く。なにかあれば、すぐに対処できるようにだ。
「こいつはなにを食うんだ?」
「ワモニグラは体の大きさのわりに少食ですよ。餌も、基本的に自分で地中に潜って取ってきますし」
「へぇ、そりゃいいな」
ワモニグラは珍しいモンスターではあるが、前世に加え今回の魔王を討つための冒険でも、遭遇している。その際、ディアからワモニグラの生態について聞かされたため、知識はそれなりに蓄えている。
珍しいゆえにラーダ村周辺で目撃されたことはなく。その愛くるしい見た目から、おばあちゃんたちからすぐなか人気になった。
「一応牙とか爪とか鋭いんだがな……大丈夫か?」
「あはは……」
ディア曰く、ワモニグラはこちらが好意を持って接すれば危険はないとのこと。代わりに、暴れれば相当に厄介だとも。
勇者パーティーで遭遇したときは、ゲルドが悪ふざけで体を蹴り上げて、戦闘になったんだよな……
「あのときは怖かったな……」
「? どうしたんですか?」
「いや、なんでも」
当時のことを思い出すと……なんとも言えない気持ちになるな。いろいろあったさ、うん。いろいろ。
そんな俺の隣には、エフィ。
「アーロさん、優しいんですね」
「! どうしたの、藪から棒に」
優しい、とは……突拍子もなく、そんなことを言われてしまった。
優しい、優しいか……たまに、いろんな人からそんなことを言われることはある。ディア然り、ドーマスさん然り、リリー然り。
だが、スパッと物事を言う二人……ゲルドとミランシェからは、こう言われた。
「優しいってのはしっくりこないけど、お人好しってのは言われたことがあるよ」
「お人好し、ですか……ふふっ」
お人好し……その言葉を噛みしめるようにうなずいていたエフィが、突然笑い出す。
なにかおかしなことを言っただろうか?
「あ、すみません。確かに、そうだなって思って」
「そうかな」
「そうですよ。だって、自分を殺そうとした相手を許して、村に住まわせようなんて、普通できませんよ」
……なるほど、そういう意味では確かにお人好しと言えなくもない、のか?
自分を殺そうとした相手を許す……か。許したかはともかくとして、似たような経験なら以前もある。
ゲルドのことだ。あいつは、前世で俺を一度殺した。そんな相手を、警戒こそしていたが特に対処もせずに、共に冒険をしていた。それは、もしかしたらお人好しと見られても仕方ないのかもしれない。
「でもそういうところ、私は好きですよ?」
「え?」
「な、なんでもないです!」
顔を真っ赤にし、うつむくエフィ。なにを言ったのだろう。
ともあれ、こうして新しい仲間が、増えたのだ。
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