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死に戻り勇者、第二の人生を歩む
モンスターの生態調査
しおりを挟む「調査依頼、だぁ?」
部屋の中に、男の声が響く。明らかに不満そうなその言葉は、態度にも表れ手に持っていた資料を、投げつけるように机に置いた。
深くソファーに腰掛け、頭の後ろで手を組み、、苛立ちげに舌打ちを打つ。
「なんだって、この俺様が、モンスターの生態調査なんざそんなことをしなくちゃならねぇんだ」
資料に書かれていたのは、最近のモンスターの活性化という異変を調査する依頼。その役目を押し付けられたゲルドは、やはり不満げに言葉を吐いた。
ここは、ファルマー王国王城。その一室であり、彼は来客用のソファーに座っていた。
そんな彼と対面に座るのが……
「頼めるのは、お前くらいしかいないのだ」
「けっ」
ゲルドの機嫌を取ろうと話しかける、国王ザーラ・マ・ファルマー。彼が、ゲルドにモンスターの生態調査を依頼した。
もちろん、彼以外にも依頼を考えはしたが……
「兵士では、万一のときに対処しきれない。お前なら、モンスターに襲われても問題はないだろう」
「だったら、ドーマスのおっさんやミランシェもいるだろうが。なんで俺なんだ」
「ドーマスは今家族と旅行に出かけている。ミランシェも、冒険者として遠出しているようでな」
「ちっ」
かつて魔王を倒すために旅をし、修羅場をくぐり抜けたゲルドならば、これくらいのことは容易いだろう。
それに、彼に頼んだ一番の理由は……
「お前の【鑑定眼】。それが、謎を紐解く一番の鍵になりそうなのでな」
ゲルドの『スキル』こそ、モンスターの異変を調査するのにもってこいの能力だからだ。
「……モンスターが意味もなく人里を襲う。その理由を調べろ……か。気は進まねぇな」
「そう言うな、報酬は弾むぞ」
「ふん」
気乗りはしないが、報酬も出ると言うし、他にでかい仕事もない。そのタイミングも狙っていたのだろう。
投げ出した資料を、再び手に取る。そこには、モンスターによる被害の出た人里の名前が書かれていた。
「ほとんどは、そこに滞在していた兵士や冒険者が対処したらしいのだが……さすがに、モンスターの大群に攻められては、そう何度も持ちこたえられん」
「……で、ここを一つ一つ回っていけってか? 冗談じゃねぇぞ」
「そこまではしなくてもいい。ただ、いくつか気になるところがあってな」
ザーラは身を乗り出し、資料の中身を指差す。
「ここと、ここと……それに、ここもだな」
「ほぉ、他よりも明らかに珍しいモンスターが攻めてきてんのか」
「そうだ。本来、その地域に生息していないモンスターたち……それらが、ある一方角から来ていることが、わかっている」
ザーラは指を動かし、モンスターが現れた方向へとなぞっていく。それを、ゲルドは目で追う。
どうやら、それらのモンスターは決まって、とある方角から来たようで。
「そして、先日報告が上がったのが、この町だ」
「……セント町、ねぇ」
「ハイプテラが、大群となって襲ってきたらしい。すでに他の国々にも報告は上がっているが、どこも様子見を決め込むばかりでな」
「つまり、ここいらで率先して問題解決に動くことで、方方からの信頼を得ようって腹かハッ、こんな遠い場所の報告まで手に入れるとはお熱なこって」
モンスターが現れた方角、そこにあるセント町という場所、そしてハイプテラ……奴らは凶暴だが、意味もなく人里を襲いはしない。
非常に面倒だが、この案件を任せる気満々のようだ、この国王様は。
「へいへいわかったよ、行きゃあいいんだろ」
「おぉ、助かるよ」
「しっかし……よくハイプテラの大群を退治できたもんだな。ここ、少しでかいがそれだけの町だろう」
資料に描いてある簡易的な地図を見る限り、セント町は他の町よりも大きいが、それだけだ。
名のある冒険者でも、いたのだろうか。
「多数の冒険者がいたようだな。なにより、Aランク冒険者がいたのが大きい」
「ほぅ」
「あと……Aランク冒険者と同等以上の力を持った謎の男も、協力してくれたと報告に上がっていたな」
「なんだそりゃ」
ともあれ、調べるにはまずその場所へと、足を向ける必要がありそうだ。
その、セント町へと。
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