死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

文字の大きさ
上 下
115 / 263
死に戻り勇者、第二の人生を歩む

高ランク冒険者

しおりを挟む


 思わぬ形で、コアプテラ討伐の報酬をいただくことになった。


「では、報酬を……」

「おい、ちょっと待て!」

「ん?」


 コアプテラは討伐が難しい。コア系のモンスターであるし、空を飛んでいるからなかなかこちらの攻撃が当たらないのだ。

 そんなモンスターを討伐したとなれば、それなりに報酬が貰える。さっそく報酬のやり取りを、といったところで、背後から声がかかった。


「んん?」


 振り向くと、そこには三人の男女がいた。


「……誰?」

「え、知らないんですか?」

「えぇ」


 三人の姿を見た受付の人は、ひどく驚いている。いや、受付の人だけじゃない。周囲の人たちもだ。

 どうやら、相当な有名人らしいな。でも、俺は知らない。


「おいおい、俺たちを知らないのか? さては、よほどの世間知らずだな?」

「まあ、この町の人間ではないけど……」

「ふん、よそ者でも名前くらいは、知っているだろう。この冒険者名を聞けばわかるかな?」


 なんだこいつ、やたら身振り手振りの大きな奴だな。ふむ、冒険者なのか。この三人は三人でチームを組んでいるってところか。

 多分だが、今喋っている男がチームのリーダー。両隣に並ぶ女性二人が、彼のサポート役って感じかな。


「冒険者名ね」

「そう、その名も『銀の牙』だ! どうだ驚いたろう!」


 堂々と、なんなら少しドヤ顔も含めて己の冒険者名を言う男。

 しかし……残念ながら、そんな名前聞いたことがない。


「いや、知らない」

「! なっ……ほ、本当に世間知らずなんだなキミは!」


 男は、俺が銀の牙の名前を知らなかったことにショック半分、怒り半分といった感じだ。

 周囲の反応からして、かなりの知名度なのはわかるが……知らないものは、知らない。


「冒険者ってことは、受付さん、彼らのこと知ってるんですか?」

「! し、知ってるなんてものじゃないですよ!」


 俺が急に話を振って、受付の人は驚いたようだが、すぐに首をぶんぶんと振る。

 その度に二つのお山が揺れて、実によろしくない。


「彼ら、『銀の牙』は、この町でもトップに位置する冒険者です! わずか三人の人数ながら、高ランクAクラスの冒険者なんですよ!」

「ふーん……」


 興奮気味な受付の人の言葉を受けて、それなりに納得する。そっか、高ランク冒険者なのか。しかもAクラス。

 冒険者には、それに応じたランクがある。上からS、A、B、C、Dだ。一番上がなんでSなのかは知らない。

 ランクごとに受けられる依頼が決まっていて、より上の依頼を受けるにはランクを上げるしかない。DランクはCランク以上の依頼を受けられないが、逆は大丈夫だ。

 自分で冒険者チームを作りランクを上げていく者、基本ソロでチームクエストなどの時など他の冒険者チームに一時的に加入する者……がある。ちなみに、ミランシェは後者で、Aランク冒険者チームに入っても通用する実力者だ。


「そのAランク冒険者様が、俺になんの用?」

「ふ、ふーんって……それに、その言い方は……」


 穏やかな空気ではない。だが、俺は、初対面の相手に喧嘩を売られる生き方はしていないつもりだ。

 それなのに、いったいどういう要件なのか。


「そのコアプテラ、キミが討伐したというのは、本当か?」

「あー、まあ、そうだけど」

「そうか……実は、オレたちもそのコアプテラを狙っていてね。まさか先を越されてしまうとは」


 コアプテラを狙っていた、か……確かに、Aランクの彼らなら、その資格がある。

 だが、その狙いを俺が横からぶん取ってしまったと。


「まさか、狙っていた獲物を取られた腹いせでもするつもりか?」

「あ、アーロさん」


 もしイチャモンをつけられたなら、非常に不本意だが……俺は、引くつもりはない。手柄をよこせと言われても、それを受けることはない。

 若干の警戒を持ち、軽く腰を落とす。


「いや、待ってくれそうじゃないんだ。キミ、俺たちのパーティーに入らないか?」

「……はい?」


 それは、イチャモンではなく……まさかの、勧誘だった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。 魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。 洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。 身動きもとれず、記憶も無い。 ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。 亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。 そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。 ※この作品は「小説家になろう」からの転載です。

みうちゃんは今日も元気に配信中!〜ダンジョンで配信者ごっこをしてたら伝説になってた〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
過保護すぎる最強お兄ちゃんが、余命いくばくかの妹の夢を全力で応援! 妹に配信が『やらせ』だとバレないようにお兄ちゃんの暗躍が始まる! 【大丈夫、ただの幼女だよ!(APP20)】

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...