死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星

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死に戻り勇者、第二の人生を歩む

気になるお話

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「ヤッホー、遊びに来たよん」

「買い物にしてくださいよせめて」


 店の扉をくぐり、一人の女性が来店する。ケエラさんだ。

 ケラケラと、なにがおかしいのか真っ昼間から笑顔を携えて、やって来た。この人毎日楽しそうだな……


「よっ、アーロくん。調子はどうよ」

「すこぶるいいですよー」

「すっかり村の一員って感じじゃん」


 ケエラさんはわりと距離感が近く、ことあるごとに肩を組んでくる。大雑把な性格に見えて、意外と女の子らしいいいにおいがするんだよな……ちょっとドキドキする。

 それに、距離が近いからいろいろと当たっている。


「はいはい。それで、今日はどういったご用で?」


 エフィが、俺とケエラさんを引き離す。


「えー、行ったじゃん。遊びに来たよんって」

「だとしたら商売の邪魔なので帰ってください」

「手厳しー。他にお客さんいないんだからいいじゃん。……って、そんな目しないでよー。わかったよ本題に入るから」


 遊びに来た、というのは本気ではないのだろうが、まるっきり冗談というわけでもないらしい。

 しかし、ちゃんと本題はあるようだ。エフィが頬を膨らませたのを見て、肩をすくめてケエラさんはポケットからなにかを取り出す。

 それは、折りたたまれた紙……つまりは、手紙だ。


「? お手紙?」

「そ。ウチのじっちゃんから、ヤタラさんに渡してくれってさ。中身は私も知らないけど」

「そうですか、ケロエラさんから……」


 手紙を受け取ったエフィは、それをしっかりと握りしめ、うなずく。ちゃんと、届けると言わんばかりに。

 ケエラさんのおじいさんも、まだ存命なのか。……俺は、生まれたときにはもう祖父母は亡くなっていた。この村では、お年寄りはわりと長生きなようだ。

 空気も美味しいし、そのためだろうか。


「あと、これはおすそわけだよ。肉じゃが~」

「! わぁ、ありがとうございます」


 続いて、ケエラさんはカバンからタッパーに入れた肉じゃがを取り出し、エフィに渡す。

 こうやって、同じ村の中でも、ちょくちょく交流をしているのだな。


「そうだ、聞いたよー、ダガさん家行ってたんだって?」

「はい。今回はアーロさんも一緒に」

「ふぅん。どうだった?」

「いい体験でしたよ」


 どうやら、ケエラさんも隣町には行ったことがあるらしい。ダガさんの家、だいぶ人気なんだな。

 ケエラさんは、それはよかったと小さく笑みながらうなずいてくれたが……どこか、浮かない顔をしている。


「どうか、しました?」

「ん。……実はね。あんまり怖がらせたくはないんだけど、ここ最近、モンスターの動きが活発になってるみたいなんだ」


 眉を寄せ、話すケエラさんの言葉は……どこか、聞き覚えのあるものだった。

 どこだ、どこで聞いたんだったか……そうだ、チマから同じ話を聞いたんだ。最近、モンスターの動きが活発になっている、と。


「モンスターがですか?」

「そう。この辺のモンスターは、比較的おとなしいのは知ってると思うけど……どうにも、最近ちょいちょい暴れてるモンスターが多いみたいなんだよね」

「それって、どうして?」

「さあ。二人ともその反応ってことは、特におかしなモンスターには会わなかったみたいだね」

「はい」


 チマと、ケエラさんにも言われた……モンスターの活発化、か。これは、頭の隅に置いておく、という問題では済まないのかも、しれない。

 モンスターが人里を襲うことはある。この村では、これまでにそんな経験はなかったみたいだが……

 活発化したモンスターというのは、どんな動きを見せるかわからない。万が一のことを考えて、少し備えておいたほうが、いいのかもしれないな。


「ま、いざというときは私もモンスター退治に加わるさ! ヨッちゃん坊やばかりに任せてはいられないからね」

「む、無理はしないように……」


 得意げに、力こぶを作ってみせるケエラさん。その様子に、頼もしいような不安なような、複雑な気持ちを覚えるのだった。
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