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死に戻り勇者、第二の人生を歩む

新たな生活

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 ……死に戻りし、二度目の人生を歩むことになった俺は、一度目の人生で殺された分岐点を乗り越えた。【勇者】の『スキル』を持つがゆえに命を狙われることになった俺は、国を出ることにした。

 ファルマー王国を出た俺は、とにかく遠くへと足を向けた。何日も、何日も……そして、たどり着いたのがこの村だ。

 近くには一里もなく、小さな村。とはいえ、俺の故郷よりは大きな村かもしれない。

 新たな生活の拠点として、ここがいいと、俺は思い……村の入口へと、向かった。


「……ん? 誰かいるな」


 入口へと近づいていくと、そこに一人の女性がいるのが見えた。道端に生えた、花に水をやっている。

 間違いなく、この村の住人だ。なので、俺は声をかけることにした。


「あの、すみません」

「! はい」


 俺の声に反応し、女性の手が止まる。そして、その視線は俺へと向く。

 きれいな白髪の髪が、風に揺れる。肩まで伸ばした髪は、きれいに切りそろえられている。初めて見る髪の色だ、少し見入ってしまった。


「えぇと……この辺りでは、見かけませんね。旅の方、ですか?」

「あ、はい。そうなんです」


 年の頃は、俺と同じ……いや、少し下かな。なのに、どうしてか大人びた印象を受ける。

 俺は早速、彼女に申し出る。この村で、生活することはできないかと。


「この村で、ですか。それは構わないと思いますが……ここは、たいして大きくもないですし、なにか有名なものがあるわけでもありません。なのに、どうして?」

「あぁあ、それはですね……」


 女性の、至極当然な質問に、俺は一瞬固まってしまう。まさか、元々滞在していた国で命を狙われたので飛び出してきたんです、とは言えないだろう。

 とはいえ、あまり嘘くさい理由付けも、怪しまれるだけだ。


「今まで、騒がしい場所で暮らしていたもので。静かな場所で、残りの人生を過ごしたいと思いまして」


 嘘ではない。うん、嘘ではない。


「残りの人生、ですか……ふふっ。し、失礼」


 なにか、俺の言葉が面白かったのか。女性は、クスクスと笑っていた。別に面白いことを言ったつもりはないんだが。

 やがて女性は、笑いを収め笑顔を見せた。


「詳しいことは、村長たちに聞いてみないとですが……多分、大丈夫だと思います。このラーダ村は、外から移り住んでくる人も多いんですよ」

「へぇ、そうなんだ」


 なるほど、移住民も多いのか。これなら、俺だけがよそ者だからって白い目で見られることもなさそうだ。

 ますます、ここに住みたい。


「旅の人なら、たくさん話を聞かせてもらいたいです。私たちは、馬に乗って離れた場所と交流することはありますが、見ての通り周囲にはなにもないので」

「なにもないなんてことはないでしょ。こんなに、空気がおいしい」

「ふふ、お上手ですね。……あ、私エフィと言います。あなたは?」


 話しやすいというか、雰囲気の柔らかい子だ。エフィと、そう名乗った少女は次に、俺の名前を聞いてきた。

 うーん……ここは普通に、ロアって名乗っていいものか。一応、追われてる身だったんだし身分は隠しておいた方が、いいのかな。

 いざってときに、俺の名前は明かさないほうがいいかもしれない。この村の人たちのためにも。


「俺は……アーロだ」

「アーロさん」


 そう名乗って、すぐに後悔する。なんだよ、アーロって……ロアだからアーロって、なんの捻りもなさすぎだろう。

 ……まあ、いいや。


「では、アーロさん。村長のところに、案内しますね」

「! えっと……俺が言うのもなんだけど、いいの? 素性も知れない男を、村に入れたりなんかして」

「私は、それなりに人を見る目はあるつもりですよ? アーロさんはいい人って感じがします」

「……ありがとう」


 どうにも、エフィは人を疑うってことを知らないような……まあ、俺としては好都合だが。

 この村は、みんなエフィみたいな人なんだろうか? だとしたらさぞ平和な村なんだろう。心配でもあるが。

 ラーダ村で、一番最初に出会った女性、エフィ。彼女の案内で俺は村へと足を踏み入れ、村長のところへと、案内される。
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